最終話 ジョンの帰国
世界大会の後、ジョンは高雄と一緒に2泊3日で常陸領に遊びに行った。
ピーナッツバターとジャムを挟んだPBJを一緒に作ったり、釣りに行ったり、ゲームをしたり、“学校の友達の家に泊まりに行く”という今までジョンが出来なかったことを体験した。
真太郎の弟たちもジョンによく懐いて、見送りで泣き出すほどだった。
常陸領から春狩領に戻ったらすぐに帰国の準備だ。短期滞在だったジョンは1時間ほどで荷物をまとめ終わった。
「荷物はそれだけか?」
「終業式の前にほとんどアメリカに送ったから残りはスーツケース1つ分くらいだよ」
「そうか…」
ヒロもテックンも梅子も元気がない。
「明日は桜子が空港まで見送りに来ると言ってる」
「それは嬉しいな!もう一度コバたんをモフりたいと思っているんだがチャンスが無かったんだ!」
「ジョン、お前突かれるぞ…」
ヒロもテックンもドン引きだ。
テックンと梅子をモフりながらヒロとジョンは別れを惜しみ、夜遅くまで話し込んで一緒の時間を過ごした。夜が明けたら帰国だ。
「ジョン!ヒロ」
「桜子、見送りに来てくれてありがとう」
「そんなの当然じゃない」
桜子の案内でVIP専用ラウンジに移動した。
「日本は楽しかったよ!いろんな場所に行けたし同じ年齢のみんなと一緒の学校に通えたし。それに学園祭は最高だったな」
「ジョンはクラスの中心だったもの。淋しくなるわ…」
桜子がうつむく。
「なあ、日本の学校って2学期が1番楽しくないか?」
「ジョンにとっては、そうかもしれないわね」
「でも、やり残したことも多いだろう?」
「ああ。だから来年の2学期も来たいと思っている」
桜子とヒロの顔がぱあッと明るくなる。
「同じ年齢の学生と一緒の学生生活を送ることが目的で俺の担当教授が手配してくれたんだけど、今までは3日と持たなかったのに今回は上手くいったから教授も喜んでくれているんだ。来年も来たいって伝えたら交渉してくれるって」
「じゃあ来年もうちに滞在だよな!」
「真太郎や高雄さんも黙っていないと思うわよ」
ジョンの取り合いになりそうだ。
「来年も格闘遊戯の世界大会優勝を目指すのか?」
「それもあるけど、夏休みから日本入りして聖地でキャンプしたい。あとケンの領地で調査もしたい」
「ケン?」
「伊賀領の堅のことか?」
「そうだ。…俺は忍んでいるシノビにあってみたい。もちろん秘密は守る」
忍者はいると信じて疑わないジョンだった。
「やり残したことは、まだまだある。釣りらしい釣りに行けなかったのが残念なんだ。沖縄の海にも行っていないし。高雄の地元にも行ってみたい」
「ねえ、ジョンの話を聞きながらお食事はどう?このラウンジは美味しいと評判なのよ」
一般客の入れないラウンジは広くて空いていて特別感がある。桜子が美味しいと勧めるなら期待できる。
「トリュフソースのハンバーグステーキと特製カレーが特に人気なのよ。私は両方いただくわ。コバたんにはレアチーズケーキね。テックンにはオイルフォンデュでいいかしら?」
「俺も桜子のお勧めをいただきたいな」
「俺はハーフポーションで両方」
「また来年も来られるように研究室で真面目に頑張るよ。研究をサボって教授に推薦を取り消されたら困るからな」
「俺も負けていられないな。こっちの大学は冬休みだけど何度か研究室に顔を出すことにするよ。ジョンの存在が励みになる」
「俺もヒロに刺激を受けて頑張れたんだ。飛び級で大学に通い始めた頃は俺も周りもお互いに違和感を感じて馴染めなかったけどヒロと知り合ってから、ヒロがするように真似して振る舞うようにしたら上手くいったんだ」
「そっか」
「ああ」
邪魔してはいけない会話だと感じた桜子はビーフバーガーとスペシャルパンケーキのマンゴーソース添えを追加して完食した。
「ハンバーグもカレーも最高に美味しかったよ」
「喜んでいただけて良かったわ」
レアチーズケーキを食べた後、バニラアイスを追加して完食したコバたんをジョンが捕獲した。
「クポー!!」
「 HAHAHA!お腹がぽっこりで可愛いな!」
嘴で突こうとしても巧みにかわされ、ジョンの気が済むまでモフられコバたんがボロボロだ。
「コバたん!」
桜子に抱き寄せられ丸くなるコバたん。
「クポ!クポッポー!!」
涙目のコバたんが片翼でジョンを指し、ジョンの非道を訴える。
「…そうね、でも今日が最後だから」
「来年も来るぞ!」
もう来るなと願う涙目のコバたんだった。
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