第4話 桜子の引っ越し
桜子は守護精霊のコバたんと一緒に大和領の別邸に引っ越した。この別邸から学園に通うのだ。
隣の屋敷はヒロが暮らす春狩家の別邸だ。
「ふふっ。ヒロはまだ引っ越してきていないようね」
別邸に到着してから5分おきに春狩邸の様子を確認する桜子。ヒロのことばかり気にする桜子の様子が気に食わないコバたんがクチバシで桜子を突つく。
「コバたん? どうしたの?」
「クポー!」
「怒っているの?」
「クポッ!」
コバたんは武蔵領に生息する鳥で国の天然記念物に指定されている“シラコバト”の精霊だ。
コバたんは全長30cmほどで、白くて丸くてフカフカの羽毛が柔らかく、抱き心地最高な桜子の守護精霊だ。
精霊に愛される人間は人口の約2%ほどだ。精霊に愛されると死ぬまで寄り添ってもらえる。可愛い以外には特にメリットはないが名誉なこととされており、精霊は大切にされる。
「ごめんなさいね、コバたんのことを忘れていた訳じゃないの」
「クルッポー!」
桜子がコバたんを抱き上げるとコバたんが嬉しそうに鳴いた。
コバたんは子供の頃からヒロをライバル認定し張り合ってきたし、ヒロと桜子が両思いなのが気に入らず邪魔ばかりしてきた。桜子とヒロがギクシャクしてしまった原因の何割かはコバたんだ。
桜子の父親がヒロに同情的な理由はコバたんのあからさまな行動の数々だ。
初恋を拗らせたヒロが墓穴を掘り、桜子との溝が広がるたびに『ざまあ ww』と思っている腹黒い守護精霊である。