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第27話 忘れられない思い出と想い その6(27)

退職し、タイ料理店で一から出直すことを、条件付で青木の了承を得た健一は、その条件を満たすべく翌日から動き出す。やがて全ての条件が整い、健一は新たな旅立ちをするのだった。


青木は、表情一つ変えず話を続ける。

「但し条件があります。代わりの人を探してください。君の紹介してくれた同じ大学の後輩の大串君も、非常に立派に働いてくれています。

ですから健一君らが関わっている“タイ料理の研究会 ”のメンバーで良い人がいれば、2、3人お願いしたいのです。


当然この件で1人経験者が抜けるのですから、それは絶対お願いしたいと思います。

お店は6月からですね。それまでに出来るだけスムーズに引継ぎも行ってください。

そのあたりは君と大串君に任せます」「わかりました。早速探してみます」健一は即座に答える。


「それともう一つ、これは私個人の考えなのですが、今度は絶対にあきらめないでください。1人前のタイ料理シェフになるまで約束ですよ」

青木の約束に健一は強い口調で「心得てます」と答えると、青木の表情が和らぎ「よし、わかりました。そろそろ料理が来たようですね。ここからは健一君の新しい人生のスタートを祝して頂きましょうか」

こうして青木からも無事OKをもらうのだった。


次の日、青木からの条件を満たすために早速行動を開始。

タイ料理研究会(TFRA)の野崎の協力で、各大学で就職が決まっていない者を何人か当たってもらい、10日間で正社員希望3名(男性2名と女性1名)とアルバイト女性1名を見つけることが出来た。


青木に報告し、引継ぎと研修は大串と2人で丁寧に行い、健一が退職する5月末までにどうにか間に合った。


健一の青木貿易での最終日の仕事が終わると、新入社員の歓迎会と健一の送別会を兼ねて行われた。

「東京事務所が出来てまだ、1年も経っていないのに、私は退職することになりました。

大串をはじめ皆さんにご迷惑をおかけしますが、どうぞ私の想いを叶えさせてください」

健一が立ち上がって、別れの挨拶をする。


「大畑先輩。今度こそ頑張ってください。

東京事務所は、私が先輩に代わって取り仕切りたいと思います。ぜひ一流のシェフとなられて、当社の食材をたくさん扱ってください」

大串が代表して、健一に送別の言葉を述べた。

「乾杯」の後は、普通の飲み会となり、ここで健一は夢の事やこれからの熱い想いを一人語り続けるのであった。


ちょうどその頃、青木はバンコクの “居酒屋 源次”で一人飲んでいた。

「健一君・・・。惜しい人材だが、やむをえないなあ」

「青木さん、健一君はやっぱりタイ料理を作りたかったんだよ。

奥さん急に無くしちゃったから、一時迷いがあったんだろうよ」

城山源次郎が、青木の愚痴を聞く。

「源さん、確かにそうだな。彼は俺の下で働くような男では無い。将来一流のシェフとして立派な人生を送るだろうなあ。

まあ、これで縁が切れたわけでも無いしね」

そういいながら、グラスに入ったメコンウイスキーのロックを一気に飲みほす青木。


「でも、健一君が一緒に連れてきた大串君。

彼も優秀で、将来が楽しみなんだ。健一君の代わりに彼を徹底的に育て上げよう」

「そうだよ、青木さん。ただ立ち去るだけでなく。代わりの人を用意してくれたんだよ。

やっぱり、いいなあ健一君は」

源次郎も、ビール片手に健一への想いを語るのだった。


健一の去った翌日に、大串は東京事務所主任に昇進。本来なら4月から健一がなる予定だったらしいと、ずいぶん後から聞かされるのだった。


健一は、明日からの本当の意味での再出発に心をときめかせながら、「千恵子、ありがとう。もう一回頑張って今度こそ、一流のシェフになるからな。見守っておいてくれ」と一人で呟くのであった。



青春編 完(修行編に続く)


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