第23話 忘れられない思い出と想い その2(23)
英国で、タイ国旗を見つけた健一は、千恵子を説き伏せて無理やり店の中に入った。
やがてタイに戻った健一は、タイ料理研究会の仲間と合流。自慢げにお店を紹介したり、居酒屋源次にも立ち寄るのだった。
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「さっきパブで、フィッシュアンドチップスを食べたばかりじゃない!」と嫌がる千恵子を無理やり説き伏せて、健一は店の中に入った。店の内装だけを見ると“タイ”という雰囲気が全くなく、まるで小じゃれたカフェのようであった。
店内の空いている席を見つけて座ってみると、メニューが置いてあった。
ドリンクだけでも可能なようだったので、健一は紅茶を2つ頼んでメニューをじっくりと見るのであった。
メニューには、タイ料理についての説明書きが記されてあった。
内容は、タイ料理の歴史や味についての記述から、料理に良く使われる食材やハーブ類の説明も丁寧に記してあった。健一は、ペンとメモ帳を取り出してその説明を写し取っていた。
千恵子はその前で、半ば呆れた顔で「次どこに行こうか」とガイドブックを読んでいるのであった。
こうして楽しかったような、やや疲れたような良くわからないうちに、英国を出国。
飛行機は一路タイのバンコクに向かった。
バンコクのドンムアン空港に無事到着したかと思うと、それまで疲れ切ったのか、ぐったりしていた健一が急に元気を取り戻した。
「これでタイに来るのは4回目。最初は不思議な感動、2・3回目は故郷に帰ってきたかのような懐かしさを感じたが、4回目になるとごく普通になってしまったなあ」
「ふーん、普通といいながら急に元気になっているじゃない。それにしても見慣れない文字ばかりで、確かに不思議な感じがするね」
タイに始めて来た千恵子も英国の時とは一味違った感動を味わっていた。
1時間ほどして、野崎・大串らツアーのメンバー5人と合流。健一は、この新婚旅行のタイミングを利用して、タイ料理研究会(TFRA)から希望者を募り、バンコク市内をガイドする事を考えていたのだった。
すべてのメンバーが揃ったところで、バンコク市内に入った。
いつもと同じ宿でチェックイン。
源次郎たちと会うのは翌日の予定だったので、この日はタイ料理店に向かった。
この店は高級店で、健一が始めてトムヤムクンの味に感動した店。
健一はここぞとばかりに得意気になって料理の説明をするのであった。
翌日は、昼前に屋台街を目指した。
ここは健一が2回目のタイで鶏肉のせごはん“カオマンガイ”を食べたところ。
この頃にはタイ語もずいぶん理解できるようになっていた健一は、昨夜同様、他のメンバーにあれこれ説明をするのであった。
午後からは王宮などの主要な観光地を回り(これらも健一がガイド役)、夜になっていよいよ源次郎のお店に向かった。
「源さん、ただいまタイに戻ってきました」「おー久しぶりだね健一君。結婚したんだなあ」「そうなんです。こちらが千恵子です」「始めまして源さんのことは健一さんからいろいろ伺いました。どうぞよろしくお願いします」「ああ、どうも。そんなかたっくるしい挨拶は照れるからよそうよ。
さあ、今日はテーブル席を取ってるから座っといてよ。後から青木さんも来るから」
そういって源次郎は健一たちを席に案内した。しばらくしてから青木も駆けつけ、遅い時間には源次郎も席に参加した。
健一は、野崎・大串らツアーのメンバーを源次郎や青木に紹介。
アジア食文化協会(AFCA)の和本のことや、タイ料理研究会の活動などの動きや、健一自身の結婚や就職の話などを青木と源次郎に説明した。
青木はうなずきながら「いやあ、いよいよ日本でもタイ料理の店が増える予感がしてきました。
私も皆さんの活動をできるだけ応援しますよ。それから言い忘れましたが、健一君結婚おめでとう」
こうして再会したバンコク在住者と千恵子や新しく紹介したツアーのメンバーを交えた楽しい宴は夜遅くまで続くのだった。




