腹ァ括れナナキ
「ナナキ、やるじゃねぇか。」
「バルダーさん…その腕…」
バルダーの右腕がだらんと下がり身体中血まみれだ
「ああ。折れてんだ。血まみれ?血は返り血だ。ああ、全く商売上がったりだよ。」
そのわりには口調が軽いが、俺にはどうしても犠牲になった狩人たちの屍が目に入る
「そんな顔するなナナキ。お前はこの街を守ったんだ。誇れ」
「バルダーさんは…狩人たちの死はどう思っているんですか?」
バルダーは少し顔を歪めた
「身近な物だ。いいやつほど早く死ぬ。その質問をしたならナナキは…このギルド向いてないな。早々に足を洗え」
「……」
俺は黙ってしまった。覚悟が足りないのか、俺は…
「ナナキにはナナキの事情があるだろう。今回は運が良かったな。不幸中の幸いってやつだ。だが…もしお前が居なかったらこの街は全滅していた。ありがとよ。俺たちの街を、あと次いでに俺の嫁とかその他を守ってくれてありがとう」
「あ、いや…え、嫁!?バルダーさん結婚してるんすか!?」
「わ、悪いか!?」
バルダーが明らかに動揺している
「いやぁ…バルダーさんイケメン(おだて)だしきっとお嫁さんも綺麗だろうなぁと思いまして」
「いや。結構個性的な面してるぞ」
バルダーがデレッとしている。
「アンタァ…誰が個性的な面だってェ?」
「いやいや違うぞ?分かりやすくていい顔面グボハァ!?」
なんかスタイルのいい美女がパンチで筋骨隆々の男をぶっとばしてる訳がわからない
「こ、こんにちは?」
挨拶は重要らしいからまずは挨拶だ
「お前が今日の英雄かァ?アタシはケリー·W·ヴェルシー。不本意ながらそこで伸びてるバルダーの妻だァ。よろしくナァ!後で遊ぼうぜェ!」
「あ、有賀七騎です。」
「ヨシ、ナナキな!家で飯食ってけェ!」
ケリーはバルダーを俵のように担ぐと動揺する俺の腕を掴んで連行した。
あれは連行で合っている。拒否権などなかった。
「おぉっとォ。天にまします神よ、魔を退けしバカ旦那の腕を治しやがれ、ウンジャラホイ!」
プラプラしていたバルダーの腕が治った。…魔法、なのか?
「家ちょっとデケェけどビビるなよォ!」