表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

強制連行と双子姉妹の制裁

「おいおいおいおい、花園、引っ張るなって!」


 あたしはわけもわからぬまま、されるがままに連行されていた。

 このままじゃ、主導権はずっとみやびのものだ。滝の流れのように凄まじい勢いで流されていっている気がする。

 あたしは必死だった。必死に抵抗した。


「このやろ!! 離せ! 離せったら!!」


 しかし、あたしの必死の抵抗は、みやびの拘束から逃れるに能わず。

 みやびが「はぁ……」とため息をつく。


「胡桃さん、いい加減に観念してくださいまし。今さら抵抗されても、メイドとも合流できましたので、既に手遅れですわ。――さあ、お車にお乗りになって。わたくしの家に向かいましょう」


「勝手なことを……」


 そこで何者かの気配を感じとる。正面にメイド服を着た少女が二人が現れた。顔立ちや雰囲気がそっくりだ、双子だろうか?

 見た目的に中学生かそこらくらいだろう。ちなみに金髪碧眼だ。

 ――もしかしなくても、外国人? それともハーフか?

 二人のメイドは髪型も似かよっていた。サイドテールが左に向かっているのと右に向かっているというのが、分かりやすい違いで――、あと、胸が左サイドテールの少女が平坦、右サイドテールの少女がちょっとボインだ。それは、今、左右から組みつかれて実感した。

 あたしは、それを振りほどこうとしたのだが、両腕をがっしり抑えられ、もはや抵抗はできない。


「二人は姉妹でメイドとして、わたくしをサポートしてくれている心強い味方ですの。いい娘たちですので、安心してくださいな」


 やはりメイドは姉妹だったらしい。

 『心強い味方』で『いい娘』とは言うけれど、みやびの味方であってもあたしの味方とは限らないじゃないか。あたしにはみやびの援軍である二人は、『最悪の敵』で『悪魔』にさえ思えた。それは車の運転手のおじさんも枠内だ。

 みやびの華奢な腕だったら、力一杯にやれば、振りほどけたかもしれないが、メイド姉妹の腕力はなかなかのものだった。しなやかな腕のどこからこんな力が出ているのか、極めて不可解である。

 ていうか、力強くね! メイドなのに鍛えているのか!?

 こいつらで、護衛は事足りるだろ!! ってくらいに完璧に押さえ込まれてしまった。解くことはできなくもないだろうが、関節を熟知したこの固めかたに対しては、相応の力で抵抗せねばならない、敵意のない相手にそれをするのは気が引ける。

 そのまま、みやびの先導で見るからに、高級そうなリムジンの前まで連れていかれる。

 警察官にパトカーへと連行される罪人になった気分だ。

 みやびは先に中へと入り、


「さっき連絡した通り、この方が胡桃さんです。暴れるかと思いますので、アンジェラとミシェルはしっかり抑えてくださいね。ついでに、反骨心を砕いてくれると助かります」


 と言った。


『かしこまりました。みやび様』


 みやびの要望にハモって答える双子姉妹。

 反骨心を砕くとはいったいどういうことだろう?――あたしはお嬢様が笑顔でそんなえぐいことを言うのが、恐ろしく思えた。

 そんなことを考えている内に、リムジン内に放り込まれる。

 運転手のお姉さんに、みやびが「あれをお願い」と要望すると、音楽が流れた。優雅な音楽が流れる。なんて曲かは音楽に疎いあたしは知らないが。

 そんなみやびを見ながらあたしは、評した。

 ――絶対、腹黒だろこいつ。

 もはや、あたしにはみやびが、天然の皮を被った、悪魔にしか見えなくなってしまったのである。

 ――ん?

 双子姉妹の片方――おそらく姉の方。があたしを小突くので顔を向けた。


「胡桃。私はアンジェラ・グレース・リーよ。姉妹の姉にあたるわ。よろしくね?」


 暗黒微笑を浮かべるアンジェラ。

 すると、もう片方――おそらく妹の方。からも小突かれるので顔を向けた。


「胡桃さん。私はミシェル・グレース・リーです。妹の方です。よろしくお願いしますね」


 天使の笑みを浮かべるミシェル。

 双子姉妹はアンジェラとミシェルというらしい。天使を彷彿(ほうふつ)とさせる名前だが、今は悪魔に思えた。ミシェルの笑みは天使だったが、それには騙されない。だって、双子姉妹にかなり乱暴にリムジン内に放り込まれた後、全く動けないくらいに、押さえ付けられているからだ。人当たりは対照的でも、内に秘めるものは同じと思える。

 だから、あたしは愛想の欠片もまかずに、


「――ふん、花園の犬が」


 と、ふて腐れきった態度をとった。

 するとどうだろう。あたしのそんな態度が気に入らなかったのか、二人が表情を歪め。


「みやび様に危害を加えるようならば――」


「――ここで死んでいただきますね」


 アンジェラとミシェルが恐ろしいことを言う。

 ちなみに、ミシェルは相変わらず天使の笑みだったが、ヤンデレみを感じた。

 ――ほらやっぱり。どっちも悪魔じゃないか。

 しかも、関節極まってきた。


「いててててて!! やめろ! お前らあああああ!!」


 あたしは痛みに苦しみ正面を睨む。

 視線で「なんとかしろ」と、みやびに訴えかけたのだ。

 しかし、対面のみやびはこちらに取り合う様子はない。お行儀よく座り澄まし顔で、優雅に紅茶を啜っていやがったのだ。


「おい、優雅に紅茶飲んでんじゃねーよ。てめーのメイドの(しつけ)どうなってやがる!」


 あたしが、がなるものの、みやびは紅茶を置きすらしない、素知らぬ顔だ。

 代わりに、アンジェラとミシェルが――


「みやびさまにその口の聞き方は――」


「――万死に値します」


 ――暴行する。

 関節がより極まってきた。いてええええええ。


「ちくしょう! 二人がかりで卑怯だぞ!!」


 あたしは、理不尽な仕打ちに訴えるものの、二人は微塵も悪びれない。


「胡桃はもう私たちに逆らうことはできないわ。諦めなさい」


「諦めて私たち姉妹の下婢(かひ)に付くといいです」


「下婢ってなんだ?」


「有り体に言えば、下僕の女版ですね」


「なるほど……。――っじゃっ、ねぇよっ!! なんであたしがお前らなんかの手下にならねばならないんだ!」


「胡桃がスーパーメイドであるあたしたちよりも弱いからよ」


「お姉様の仰られた通りです。というわけなので、犬のように這いつくばってください」


「あたしより強いからって、調子に乗りやがって……力に溺れてんじゃねーよ」


「減らず口を聞くわね。まだ自分の立場が理解できていないのかしら?」


「そのようですね。お姉様、やっちゃいましょうか」


「そうね。やっちゃいましょう」


 あたしは鉄拳制裁された。そうして、車内の優雅な音楽はあたしの絶叫で上書きされることとなる。


「あだだだだだだだだあああああ」


 電気椅子にかけられるってこんな感じなのだろうか。そんなことを思いながら、あたしはとても苦しむのだった。

 ――双子姉妹ツエエエエエ。




 そんなやり取りが繰り返され、数分後。


「……暴れねーからもうやめてくれ」


 そんなお嬢様らしからぬ、(主に双子姉妹の犯行だが、主導者はみやびだ)えげつないやり口にあたしは観念した。飼い主に付き従う忠犬のような心持ちだ。己とみやびを繋ぐ存在しないはずのリールが見えた。

 つまるところ。もはや、逆らう気力が尽きたのだ。

 と、そこで、詰んでいることにも気付いた。

 超絶強い双子姉妹のアンジェラとミシェルはもとより、弱いものイジメはさっきの不良少女たちと同列、つまりとても惨めなので、みやびに手向かうこともできない。

 …………にしても、鉄拳制裁たぁ、やるじゃねえか……。

 あたしはみやびの恐ろしさを知った。

 おっとりお嬢様――から、澄ました顔をして、恐ろしいことをする平然と女だ――、と評価を改める。そして、双子姉妹はあたしを脅かす脅威であった。

 みやびが双子姉妹に指図したように、反骨心は完全に砕かれてしまっていたのだ。

 ――なんとも、主人の命令に忠実に従うメイドだこと……。

 あたしはふかーいため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ