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火事場の超・馬鹿力~絶対に負けない超逆転劇~  作者: ハクセイ
ピンチとチャンスは紙一重
6/17

これは夢ですか?それとも現実ですか?

「うう……。頭が痛い……。僕は一体……何を?」


「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーー!!」


「……えっ?」

 

 見渡す限りの全身鎧に身を包んだ大勢の人。……が、こちらを見てしきりに大声で叫んでいる。


 ……はて、ここはどこだったか?

 いつの間に……こんな訳の分からない夢のなかに入りこんだのだろうか?


 さて、うるさいしそろそろ目が覚めてもいいと思うんだけど……。


 懐かしい?いや、デジャヴ?なんだこの感覚は……。

 何か大切なことを忘れている……?


 ……アレ?本当に何してたの?僕。

 

「ユーリ!」

 

 ん?なんだか、見覚えのある姿がこっちに向かって――…

 

「良かった!生きててくれて!夢じゃないのよね!?」

 

 いきなり抱きつかれました。

 なんだろうな、役得っぽいのに、身の危険を感じるのは。


 とりあえず引き剥がそう。

 グギギギ。……あれ?

 ……どうしよう全く引き剥がせる自信がない。


「あの、とりあえず離してくれない?」


「嫌よ。諦めなさい」


 この馬鹿力に理不尽な感じ……。なんだか久しぶりだなあ。


 とはいえ、確認は必要だよね。

 これが夢なのかどうか。


「これは夢ですか?」


「いいえ。現実よ!」


「僕は、ユーリですか?」


「ええ。ユーリよ!」


 そうか、現実か~。


 なら、僕の知りたいことはただ一つだけ。


「……どうなってんの?」


「ユーリ、あなたは何も考えなくてもいいの……。でも、奇跡が……奇跡が起きたのよ。太陽が、シャバウォックを倒してくれたもの。お腹のなかにいたユーリまでも助かるなんて。あぁ……神様はいたのね」


「え……?」


 僕、龍に食べられてたの?

 そうか、それはうん。

 絶対に思い出さないほうがいい。


 世の中には知らないほうが幸せなこともある……。


 緑っぽい液体が全身にかかってて気持ち悪いとは思ってたけど、まさか龍の血だとは思わなかったよ。



 それにしても、本当によく助かったな。


「おいエリノラ!どうしたんだ?急に飛び出したりして…………その青年は?」


 そう言って、綺麗な青色をした髪を揺らしながら一人の女性がこちらに駆け寄ってきた。


「ダスティネス将軍!弟が!弟が戻ってきました!」


「私のことはティーナと……まぁ、今はいいか……そうか。貴様がエリノラの弟か。確か……」


「ユーリです!私の弟です!」


 あ、僕が答える前に話しちゃうんだね。


「そうか、ユーリ。よく無事だったな」


 すぐに経緯を聞いてこないあたり、気が利いてるなあ。

 うちのエリノラ姉さんに見習ってほしいぐらいだ。

 ここは、エリノラ姉さんに姉の何たるかをこのお姉さんに教えてもらいましょう。


「ありがとうございます。()()()()()()()


「………………………………………。」


 あ、固まってる……。

 さすがに失礼過ぎたかな……?


「あの、さっきのは冗談――「ブベエ」」


 ブベエ!?

 これまた聞いたことのない声出したな。


「あ、あ…あの、鼻血出てますけど……大丈夫ですか?」


「いい……いい……最高だ。私は今死んでもいいぐらいだ……」


「あの、エリノラ姉さん……これは……」


「何も聞かないでユーリ。…………でも、これだけは言っておくわ、……もう()()()は出来ないわよ」


 何も言わなくても分かる。

 ……今、僕ら姉弟の心は繋がっている。


「「…………………………………………………。」」


 姉弟で空を眺めるのは生まれて初めてだよ。


 ああ、空って、こんなに青かったんだな。


 雲に大きな穴が開いている変な空だけど。



 ♦



 その後、事情聴取をして、僕は解放された。


 僕はどうやら魔物に攫われていたらしい。

 それで色々あって龍に食べられ、おなかの中にいるところ。奇跡的にも助かったということだった。


 僕の記憶がないのは、魔物に攫われたことによる精神的ストレスによることから引き起こされた記憶障害らしい。らしいというのも、僕は覚えてないし、実感が全くないのだ。

 だから、どこか他人事のように聞こえてしまう。


 頭にタンコブができているのも、そのせいかな?


 とにかく僕は、シャバウォックのおなかの中を生き抜いた男として、今回攫われた人たちと共に王都まで行き、生活保護をうけることになった。


 とどのつまり、働かなくてもいいということだ!控えめに言って、最高だ。


 とは言え、グダグダ出来ないが現実だ……。

家に帰ろうとしたが、エリノラ姉さんに捕まり、半ば強制的に王都に住むことになった。


 そのため、僕は家事のできないエリノラ姉様の代わりに毎日家事をしなくてはならない。


 まあ、仕事をしなくていい分、楽か。と思ってたけど、ここ最近のエリノラさんの食事量と、洗濯物の多さ、服修理のお願いが急増したおかげで、実家にいる時よりもやることが増えた。


 一体、何の罰ゲームが発生してるんだ……。

 七不思議が個人ごとに設定されているのなら、今すぐ第一の不思議として登録したいところだ。


 そうして、ダラダラしたくとも働かなくてはいけない、昼間と夕方の分、唯一何の予定のない朝を僕は、死守してあげなくてはいけない。

 僕がこの子()を守らずして誰が守る!!

 

 僕は命を懸けても、このベッドから動かない。

 そう決めた。


「ユーリ、出かけるわよ!」


 さあ、来たぞ。

 ここで出会ったが十五年目。

 今こそ決着をつけてやる。


「断る!だいだい、僕はついこないだまで龍に食べられたんだよ?心の傷を負って記憶も無くしている。そんな身も心もボロボロの弟を街に連れまわすなんて…エリノラ姉さんはなんとも思わないの?少なくとも僕には休養が必要なんだ。だから僕は寝る……。

さあ、分かったなら、諦めてくれ……僕は二度寝するから……」


 ここ最近、効果抜群だった精神攻撃だ!

 さぁ、大人しく帰るがいい!!


「……そう。分かったわ…」


 よし!!さすがだ、精神攻撃さん!!

 今日も切れ味抜群だね!

 おかけで、今日もゆっくり寝れそうだ――…


「じゃあ、行くわよ!」


「な、なぜだ!?」


 精神攻撃さんが効かないだと!?


「『なぜだ!?』じゃないわよ。あんたそう言い始めてからもう一週間よ。それに昨日「まぁ、体は元気だけどね!」なんて言ってたの聞いたんだからもう言い訳できないわよ!」


な、なんてことだ。僕は僕のせいで、僕の休日を失ったのか。


「あ、そうそう。こないだ友達からおすすめのお店聞いたから今日はそこに行きたいわ。ユーリ、早く着替えなさい。出発するわよ」


「どうしてこうなった?」


 ……僕はただ、安全で、だれにも迷惑をかけずにダラダラとした生活したいだけなのに。


「人生とはままならないものだな……」



家に帰りたいユーリ。


「今からお家に帰るよ。元気でね!エリノラ姉さん!」


「何言ってんの、ユーリ。あんたの家はここよ」


「……え?」


「父さん母さんしばらく旅行に出かけるって言ってたわ。ユーリのことよろしくって言われてるし、ほらこの手紙に書いてあるわよ」


「……ほんとだ」


「まぁ、そうなるように仕向けたんだけどね」


「……ごめん。今なんて言った?」


こうして半ば強制的に王都に住むことになったユーリであった。



第一章はここで終わりです。

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