#1 Ⅳ
作戦開始21分前。
戦場となる建物は昔からあるなんとも殺風景な印象を、兵士に、反乱軍に与えている。
しかし兵士たちはそんな思いに目をくれずただ黙々と、任務を達成するために作業を続けている。
シャルルもまた、狙撃のためライフルを用意し、設置している。ちゃんと、サイレンサー付だ。シャルルともう一人の狙撃者も、黙々と用意している。アレックス、隊長たち3人は牽制後の情報収集のため、小型の銃を手入れしている。隊長は淡々と準備しているが、アレックスはなんとも怪訝そうな顔をしている。おそらく、さっきの話だろう。
作戦開始12分前。各小隊はそれぞれの持ち場について、戦闘の準備を終え、待機している。その表情は、まさに、戦人の顔だった。
シャルルたちも、また同じ表情をしていた。
建物の手前では何人かの兵士が突撃の用意をしていた。彼らの目は特に鋭く、戦いに行く者の目をしていた。
シャルルはライフルの近くで座り、スコープを覗いた。建物手前の兵士の顔がよく見える。うっすらと、死相が見える気がする。シャルル十八番の勘だった。
作戦開始5分前。その戦場を例えるのであればまさに静寂。一切の音、風が砂粒を動かす音ですら、汗が顔をはい、土の上に落ちる音ですら聞こえない、静寂だった。彼らに聞こえているのは、己の心臓が鼓動する音、肺が伸縮している音、そして自分の声だった。音のない声。一切の無言。戦は、既に彼らの中で始まっていた。
作戦開始10秒前。耳元にある小型のトランシーバーからカウントダウンが聞こえる。
1秒ごとに、0.1秒ごとに自分の体が重くなり、死を覚悟していることを感じる。
5秒、狙撃部隊が構えた。その目は、鷹の目をしている。
4秒、後方支援部隊が構えた。その表情は、虎の構えをしている。
3秒、突撃部隊が構えた。その姿は、鬼の気を発している。
2秒、刹那的な、完全な静寂。その場は、無の空間をしている。
1秒、絶対の覚悟を持った兵士がそこにいる。その様は、肉食動物の狩りをしている。
0、正面突破のための爆弾が、扉を吹っ飛ばした。