#1 Ⅲ
体が、車体がよく揺れる。全くひどい道だと思う。さっきから揺れるから体が浮いて尻が痛い。そんなことを考えながらシャルルは目的地へ向かっていた。別に真剣じゃない訳ではない。
隣ではアレックスが、なにやら深刻そうな顔をして座っていた。明らかに思い悩む表情だ。
「どうした?」 シャルルは問うた。アレックスはひとつかふたつ間を開けて、話始めた。それはいたってシンプルな内容だった。
「今俺たちは戦場に向かっているだろ? それって、これから人を殺すかもしれないってことだよな。」
「まあ、殺しを許可するってだけだから絶対にってことはねえと思うけど。」
「でも、きっと誰か死ぬだろ? どうしても、気持ち悪くてしょうがないんだ。」
心優しいということは、臆病であるということだ。しかし彼には過去がある。一体時間とは、人を臆病にするのだろうか。
「気持ち悪いねぇ。俺も、なんかやな予感がするんだ。」 シャルルが自分が感じた勘を口にした。
「おっ、シャルル、また予言か?」 隊長が口を開いた。隊長がこの事に反応したのは他でもない。シャルルの勘は、よく当たるからだ。事実、この小隊はシャルルの勘に助けられている。
「あ、はい。何かすごく嫌な予感がします。」
「なるほどね、気を付けておくか。」
車の揺れが止まった。とうとう着いたのだ。目的地の戦場に、彼らの運命が変わる瞬間に。
もちろん彼らは、そんなことは知らない。