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#1 Ⅰ
「なあ。」
傭兵団体駐屯地食堂。二人の男はそこにいた。一人は相方に話しかけ、もう一人は昼飯の肉を頬張っている。
「人を殺すって、楽しいものか?」
二人の間に沈黙が走る。肉を頬張っている男は口を開き、答えた。
「さあな。」
その答えは端的にして簡潔。しかし、分かりやすかった。
「・・・そうか。」
食堂の中は、喋り声こそしないものの全員が真剣な、鋭い眼差しを持ちながら騒がしく歩いている。ピリピリとするのも無理はない。これから、ミッションがあるからだ。軍事的な、弾の飛び交う戦場へと出向かなければならない。誰も死にたくないからだ。ある者を除いて。この事はその本人から後々聞くことになるだろう。
やがて、食べ終えた男、アレックス・永鯨・レイメンズは、先に集合場所に行くことを告げ、食堂を出た。問いかけた男、シャルル・月渉・レイジンジャーも、手に持っていたコーヒーを飲み干し、集合場所へ向かった。