#Ⅹ
拳が飛ぶ。
拳が飛ぶ。
二人の拳は弾丸を連想させるほど速く、鋭く、空を翔んだ。
さすが、精鋭部隊だな、と考えながらシャルルは周りの兵士を片付けていた。アレックスはハンドガンを隊長に拳を翔ばしている兵士、エドワードの旧友にして国軍総統直属の兵士、フェリックス・安道・ライゼンターに向けていた。
しかし、
拳が翔ぶ。
拳が翔ぶ。
フェリックスはまるで、アレックスの弾丸をかわせる余裕があるかのように、拳を翔ばしていた。
二人の拳は二人に届くことなく、空を切った。
切られた空は既に存在していないかのようだった。それほど、お互いに戦闘のプロであることをシャルルたちに感じさせる刹那であった。
「エドワードぉ!! なぜ我々を裏切ったぁ! お前はあの時信じていただろう、この国と正義を!!」 フェリックスは問うた。昔のエドワードの姿を思い出しながら、今の彼の姿を重ねて。
「知っては行けないことを知ってしまったからだよフェリックス。俺が信じてるのは国じゃない。正義だけだ! この国が正義だと思っていたけど、それが間違っていたんだ!」
「んじゃ、敵でいいんだよな!」
アレックスは発砲した。
しかし避けられた。
「逃げんじゃねぇぞ!!」
「「「俺たちのこと忘れんなぁぁあ!!!」」」
別の発砲音。忘れていたもう一団体が牙を剥き出した。
「あっ、忘れてた。」その頃シャルルはボーッとしていた。