岬柚葉
「ただいまって誰もいないか」
今日も部活を終え真っ直ぐに帰宅した。両親は共働きで家にいるのは週末だけだ。部屋の電気をつけると、
リビングの机によだれを垂らして寝る妹の姿があった。
「ん、まぶしいぃ目がぁ目がぁ」
などと可愛いらしい声を出すのは一個下の妹で一応受験生である、岬柚葉
「おーい、ゆずおきろーご飯食べにいくぞ」
「んー、お兄ちゃんの手作りがいい」
「そんな家庭的なスキルに期待されても困る」
机の上にはゆず、青葉へと書かれた紙と5000円札が置かれていた。いつもなら柚葉がご飯を作ってくれるのだが7月に入り本格的に受験勉強を始め家事との両立が厳しくなったため最近は両親がお金を置いていくことが多くなっている。ちなみに俺は料理ができない、得意料理はスクランブルエッグだ。
「ファミレスでも行くか?」
「ん、いく」
近くのファミレスとはいえ、この暑さのなかで歩いていくのは、はばかられるので自然と自転車に乗る。
するとなぜか当然のようにゆずはが荷台に座る。
「我が妹よ、なぜに後ろに座る?」
「ん?ゆずはねー、さっきまで勉強してたんだ。」
「そっかそっかお兄ちゃん感心だぞって違うだろ妹よ
お兄ちゃん最近体力がきつくてさ、一年の教室の4階まで上がるだけで息切れしちゃうんだよ」
「…………じー」
我が妹ながら可愛い、特に効果音を自分で出しちゃってるところとか、
「今日だけだかんな」
呆れるほど妹に甘い兄だった。。。
「それで勉強の方はどうなんだ?」
「ん、まぁぼちぼちかなぁ」
妹の志望校はまさに俺が通っている私立和泉学園高等学校、まぁ県内屈指の名門校だからそう簡単に入れるものでもない。
「遊びにばっかりかまけてると合格できないぞ」
「お兄ちゃんは友達がいなかったからともかく、ゆずには〈友達付き合い〉っていうのがあってね?」
「友達付き合いを知らない単語教えるかのように強調するんじゃねー」
いや友達ってなんだよいつも一緒に、いるのが友達か?いつもいたら普通飽きるだろわけわかんねー。というのが俺の持論である。
「確かにお兄ちゃんは誰とでも話せるけど誰とも親しくないよね。なんか壁を作ってるっていうか、人を踏み込ませない領域があるっていうか。……….お兄ちゃんの将来…現在が心配。お兄ちゃんと仲良くできるのは、ゆずだけだね。」
「俺はそんな心に闇なんて抱えてねぇよ」
心配と言いつつもどこか嬉しそうな我が妹だった。
「そりゃ肉親は裏切ったりしないからなぁ」
「………….」
「ゆず?」
なぜか急に不機嫌になってしまった妹のご機嫌とりに必死な兄だった。
「お兄ちゃんは私がいないと駄目なんだから……」
「ゆず?なんか言った?」
「なんでもないよ馬鹿にぃ」
受験のストレスもあるだろうし仕方ないか。そう自分の中で結論付けて妹のご機嫌斜めを納得するのであった。