七瀬雛(ななせ ひな)
7限目を終えるチャイムが鳴りホームルームを終え、部活動に励む生徒やそのまま帰宅する生徒たち、そんな中、学園のアイドル(笑)こと七瀬雛はクラスメイト達に囲まれ、最近のファッションだとか流行りの話に花を咲かせていた。
器用なもんだなぁと、そう俺は思う。部室ではあれだけ本性をさらけだし好き放題やっている彼女が取り巻き達の間では愛想よく振る舞い、チャラいクラスメイトに今日も可愛いね、などと言われ、そんなことないよぉ〜、などと返している。
取り巻き達に彼女の本性を教えてやりたいといつも思っている、しかし意外なことに俺、岬青葉は彼女、七瀬雛と小学校から一緒だったりする。普段から目立たない俺のことなんて彼女は知りもしなかっただろうけど。話をするぐらいの間がらになったのは高校に入ってからだった。彼女はその端麗な容姿により昔から控えめにいってもすごくもてた。おまけに勉強もすごくできたもんだから周囲は彼女を更に持ち上げた。そんな彼女は俺なんかには関係のない高嶺の花だと思っていた。まぁそのころは彼女の性格の悪さを知らなかったわけで…
そんな俺は一度だけ彼女に接点を持ったことがある。あれは小学校のころ鬼ごっこをしている最中にでも転んだのか、怪我をして泣いている七瀬雛を見かけた、血が止まらなくて泣いていたらしく保健室までおんぶして連れて行ってやった。名前も聞かれなかったし、ましてや小学校のころのことで彼女は覚えていないだろうけど、
そんな彼女を横目で見つつ俺は教室を出て部室に向かった。
「はぁ〜、疲れた」
各々、部活や帰宅するクラスメイト達を見送ったあと私、七瀬雛はため息をついていた。
「最近のファッションって言うけど学校では制服しか着ないし、学校でファッションの話をする意味がわからない…」
「それより私変じゃなかったかなぁ、青葉が教室を出て行くときに私を見てた!…よね?」
そう言いつつ鏡を、見ながら髪の毛をくるくるする。
実は私、七瀬雛は岬青葉のことが好きだったりする。私はこう見えて勉強が出来たし、ここよりもっと偏差値の高い学校だって選べた。それでもこの学校にしたのはひとえに青葉くんがここを受験するって知ったから。和泉学園は県内ではトップクラスの学校だったから親にも特に反対はされなかった。
「私って駄目だなぁ、もっと気安く話しかけられる間柄になれたら嬉しいのに」
でも私が青葉を好きなのはちゃんとした理由があって、彼は覚えていないだろうけど小学5年生のとき彼に助けてもらったことがある。単純な女だって思われるかもしれないけど、一目惚れだったから。助けてもらったときは名前を聞けなかったけれど後から彼が岬青葉っていう名前だって知った。それから5年も彼に片想いをしている。彼を見ている内にその気持ちは大きくなっていった。だってすごく優しいんだもん誰にでも。
「ひなー‼︎」
どんっと教室の扉を開けて入ってくる女の子。私の唯一無二の親友、佐倉唯
「ごめんっ!遅くなっちゃって掃除が長引いちゃってさぁ」
「大丈夫だよ、それじゃ行こっか」
「それよか、ひな、例の話大丈夫?2年の柏木先輩って結構お高くとまってるイメージあるけど入部許してくれるかなぁ」
「心配しなくても大丈夫だよ唯、私のときも入部させてください!って言ったら『ちょうど、もう1人部員を探していたとこよ』って言われたし」
実は青葉くんが校外部に誘われていたのを聞いて、私は速攻で入部しに行ったのでした……、
「まぁねー、ひなは岬くんがいればどこでもよかったんだろしね〜」
「ちょっとやめてよ唯ったら」
「そんな顔赤くされても反応に困るっていうかなんというか…」
「まじ引きしないでよ…泣きそう」
「岬くんが好きすぎてぇ?」
「もう、柏木先輩を紹介してあげないからっ」
「嘘嘘ごめんってひなー。ひながちょーっと可愛いすぎたからからかっただけだよ」
「あ、そうそう前に岬くんが、ひなの事可愛いっていってたよー?」
「え?嘘いつ?どこで?地球が何周回ったとき⁇」
こんなに嬉しそうなひなに、今更嘘って言えない…