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剣の道  作者: 底虎
邂逅編
62/138

影響による変化

 卯佐美から、激励の言葉をもらい剣太郎は何か吹っ切れたようだった。

 それから、試合に向けて部活中は模倣した辻の技を自分の物にすべく試行錯誤を繰返し、家では風の能力を練習する。

 影で、風の能力を使いこなせるようになり友人達を驚かせようという彼の考えだ。

 剣太郎は決して人前では能力の練習をしなかった。


 先日の黒田との戦いは、各々に影響を与えたようで1年生達の部活風景は大きく変化していた。

 しかし、それが一概にいい影響だったかは分からない。

 幸は、黒田との試合以来殆ど部活に顔を出さなくなっていた。

 よほどショックだったのか、それとも何かあるのか。

 卯佐美と昌は何かを知っているようだったが、語ろうとはしない。

 剣太郎達も直接本人に聞いてみたのだが、「……まだ言えない」の一点張りで何も聞かされていなかった。


 そして、サルは剣太郎と模擬戦をすることが多くなった。

 ほぼ毎日二人は戦っている。

 勿論、サルは能力をフルに使い戦う。

 最初はサルが圧勝することが多かった。

 けれども、回数を踏んでいくとすぐに戦いは五分に近づいていった。

 ただ、五分以上になる事は無かった。

 剣太郎が強くなればなるほど、呼応するかのようにサルも強くなっていく。


 また、サルとの戦いを経て剣太郎は魔剣が持つ特殊能力を引き出し始める。

 彼の剣は――魔剣は、対能力者に特化していると言っても過言ではなかった。

 サルが産み出した鉄をムラマサで切れば、ムラマサは鉄を簡単に抉っていく。

 抉ると言う表現よりも喰っていると言う方が正しいのかもしれない。

 最初は、鉄の触れたところに傷を着ける程度だったが、戦いに慣れていくにつれ喰らう量が増えていった。



 ある日の部活帰り、疲れはてていた剣太郎を卯佐美が呼び止める。


「剣太郎君、能力の練習は順調かい?」


 いつになく仰々しく言う卯佐美。

 そんな彼女の質問に、彼は軽く頷く。


「ふっふっふ~、この前言ってた事覚えてるぴょん?」


 彼は考えるのが面倒だったのか、すぐに首を横に降る。

 そんな彼に苦笑いする卯佐美。

 彼女は練習には出ていないため、剣太郎の何倍も余力が残っているようだった。

 そして、不思議なポーズを取りながら彼に告げる。


「風の能力の先輩を紹介するぴょん!」


 彼女の言葉から少し遅れて、剣太郎の携帯から通知音が鳴る。

 特に気にしない剣太郎に、通知を見るように促す卯佐美。

 そこで、剣太郎は通知を確認したのだがそのメッセージの相手を見て眉をひそめる。


 KK>>御剣君見えてる?


 KKと名乗る人物からのメッセージ。

 そして、剣太郎にはKKという人物に心当たりがない。

 彼はとりあえず、無言で受信拒否を意味するブロックボタンを押す。


「って、何でブロックしちゃうぴょん!?」


「いや、迷惑メッセージですよ? 多分」


「違うぴょん! その人が、剣太郎君に風の能力のイロハを教えてくれる師匠だぴょん!」


「マジですか……?」


「大マジだぴょん」


 彼女の言葉を信じ、ブロックを外す。


 剣太郎>>あなたが、風邪の能力を教えてくれるんですか?


 KK>>そうそう、インフルエンザとかを上手く使ってー……って風違いだからっ!


 どうやら、ノリがイイ人のようだ。

 彼の誤爆にも気さくに対応する。


「仲良くしてあげて欲しいぴょん。じゃ、また明日~」


「あ、これ誰なんですか?」


 しかし、彼の言葉を待たずに卯佐美はどこかへと消えてしまう。

 本当に神出鬼没な人物だと剣太郎は思った。

 それと同時に、彼は彼女に信頼を寄せていた。

 下級生の相談に乗ってくれて、さらに知り合いの紹介までしてくれる。

 他のどの上級生達よりもふざけているのに、彼女が一番年長者らしい振る舞いをしていた。


 KKとの出逢いは剣太郎の能力の成長を加速させる。

 本人は、自分に才能が無いと嘆いていたが彼には才能がある。

 彼は教わることの天才なのかも知れない。

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