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剣の道  作者: 底虎
邂逅編
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もはや強制

前回のあらすじ

試合の翌日、剣太郎は家で店番をしていた。

そんな彼の元に、昨日戦った奴らが訪れて……。

「まあ、正直俺の話なんてどうでもいいんだ」


「どうでもいいのかよっ」


「未遂だから、風紀委員には通報しないってさ」


「……風紀委員?」


 影野の口からでた言葉に剣太郎は思わず首をかしげる。

 それもそのはずだ。

 その言葉を剣太郎は知っているものの、彼が知っている風紀委員は学校でも何の為に存在しているか分からない様な委員会だ。


「あー、お前本当に何も知らないのか」


「あいにく自分の家がソードロード関連の店って知ったのもつい最近だからな」


「まさかとは思いますが、あなたには千葉の高校に行っている姉が居たりしますか?」


 確かに、剣太郎には姉がいるしその姉は何故か都内の学校ではなく千葉までわざわざ通っていたりする。

 何故、辻がその事を知っているのだろうか、と剣太郎は少し訝しげな視線を送る。


「あなたのお姉さんの名前を教えていただけませんか?」


「……ストーカー?」


「違いますよっ」


「まあ、いいけど。姉ちゃんの名前は"さや"って言うんだ。御剣さや。確か、(あわ)高校だったっけかな?」


 剣太郎のその言葉を聞いた二人は固まってしまう。

 それは、驚いているかのような。

 はたまた、呆れているかのような。


「「あなた(お前)は本当に何も知らないんですね(だな)」」


 二人がいきなり大声をあげたからか、剣太郎はビクッと後退りしてしまう。


「まさか、姉ちゃんもソードロードやってたり?」


「そのまさかです。しかも、有名な二つ名をお持ちですよ」


「別の高校で、しかもお前は新人って言うんだから関係ないかと思ったが、こんなことってあるもんなんだな」


 ただ、剣太郎にはイマイチそのスゴさが伝わっていなかった。

 そもそも、二つ名が知れ渡る事を引き合いに出されても、それがどれ程の意味を持つのか剣太郎には理解できなかった。


「二つ名が知れ渡るって、そんなにスゴいのか?」


 その言葉に、二人は口をあんぐりと開ける。

 二人とも、なんでこんなに知らないんだよ、と言わんばかりの表情をしている。

 二人は、何から説明していいのか困っているかのようだったが、二つ名について説明を始める。


 二つ名とは、その人物の戦い方や人となりを言葉にして表したものである。

 また、この名前は自分でつけるのではなく、ソードロードを管理している、恐らくは宇宙人やそれに近い者達が実力のあるものに与える称号のようなものであり、一種のステータスでもある。

 そして、強い者ほどその二つ名が有名だったりする。


「なるほどな」


 つまり、彼の姉はそれなりの実力者であった。

 しかし、剣太郎としては普段接する姉がそんなスゴい人間だとは思えない。

 ただ、家では彼が姉に逆らうことなど出来なかったりするのだが。


「ちなみにお前らにはあるのか?」


 そう聞くと、辻はそっぽを向いてしまう。


「辻にはねえな。けど、俺にはあるぜ。"(シャドー)潜操(ウォー)"ってのが」


「へえ、もしかして有名だったりする?」


「……いや、俺は強さとかひけらかすつもりはねえし……」


 どうやら、有名ではないようだった。

 気にしてはいない風を装ってはいるものの二人とも凹んでいた。

 どんな時、店のドアが開かれ客が訪れる。


「「「いらっしゃいませー」」」


「(なんで、お前らまで言うんだよ)」


「(独り占めは良くないですよ?)」


「(何のだよっ)」


 剣太郎はもうこの事実に疑いを持っていなかった。

 柿実の二人は愛すべきバカであることに 。


「あ、あの。ソードロードの専門店って聞いたんですけど……」


 おどおどとしながら、栗色の髪の少年が話しかけてくる。

 その言葉から察するに、彼もソードロードを嗜んでいるのだろう。

 そして、幸か不幸かその少年は真っ赤な布でぐるぐる巻きにされた棒状の何かを持っていた。

 それは恐らく彼の武器に違いない。

 その来訪客に柿実ペアはニヤリと笑う。

 そんな二人を見て剣太郎はとても嫌な予感しかしなかった。


「さっき、御剣は2:2だったら戦ってもいいっていったよなあ?」


「ええ、言っていましたね。そして、こんな所に野生の仲間(カモ)が一人。人数的には丁度いいですね」


「おい、カモってなんだよ。ってか、僕はあの人の事知らないぞ!?」


「まあ、安心してください」


 そう言って影野が彼に近づいていく。

 殺気を纏った影野に迫られ、おどおどとする少年。

 剣太郎は少年が可愛そうに思える。


「俺の名前は影野って言うんだが、お前はソードロード経験者だよなあ?」


「はっ、はいー」


 少年は完全に怯えきっていた。

 対する影野はそれを聞いて更にニヤリと笑う。


「今から、軽く手合わせするんだけどお前暇だよなあ?」


「え、えっと………」


「なあっ?」


「ひっ、暇です」


 完全に恐喝だった。

 完全に少年は萎縮していて、これではまともな会話になっていない。


「別に、断ってもいいんだぞ?」


「い、いえ。大丈夫です。それに師匠からも戦えるときは戦えって言われているんで……」


 剣太郎は彼がまともに戦えるのか心配だった。

 ただ、彼がそう言うならば大丈夫なのだろう。


「というか、そんなんだから影野は仲間が出来なかったんじゃないのか?」


「う、うっせー。今はもう仲間居るからいいんだよ」


「なあ?」と言って影野は辻の目を見る。

 ただ、辻は影野から目をそらしていた。

 その行動に、突っ込む影野。

 漫才のようなやり取りを見て、先程の少年は少し笑っていた。

 すると、辻がこそっと話しかけてくる。


「(だから安心してくださいと言ったでしょう?)」


「(まさか、計算して……)」


「(僕の洞察に死角などないのですよ)」


「(嘘つけっ)」


 オーバーテクノロジーの次くらいに洞察という言葉は便利そうだと剣太郎は思った。

 

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