全員集合
帰りのホームルームで入部届を黒田先生に提出した僕たち3人は、晴れてソードロード部の一員となった。
そして、僕たちは今日もまた地下の練習場へと向かうのだった。
「そういえば、サルってどんな超能力を使えるようになったんだ?」
「なんか、鉄の塊みたいなのが地面から出てきたんだよ!」
「猿田少年が、超能力を使えるようになったとは本当かい?」
ちょうど、この話が聞こえたのだろう偶然居合わせた宮本先輩が驚き顔で訪ねてくる。
そこで、練習場へ向かう道すがら今朝の事を彼女に説明する。
「なるほど。剣皇の刺客か…。御剣少年が戦ったのは本当にB隊と言っていたのか?」
「ええ。それは私も聞いていたので確かなのです」
「先輩、Bっていったい何のことなんですか?」
「剣皇学園はソードロード全国クラスの強豪校の1つで最大の特徴は部員数の多さだという。彼らは1軍のレギュラー陣の下にA~E部隊という格付けで、B隊はAに次いで2番目に強い控え陣だ」
小森って人はそんなに強かったのか。
でも、確かにあの時、狙撃のアシストがなければ僕は確実に負けていた。
「だが、誘拐をすることで戦力を測りにくるとは、卑怯だな」
「まあ、それだけ俺たちを警戒してるってことじゃないっすか?」
「確か、あの人は漢女と天兎が危険だって言ってたし、それが原因かな?でもこれって誰の事なんですか?」
そう聞くと、宮本先輩は少し苦そうな、悔しそうな顔をする。
「ちょっと聞きたいんだが。弍焔という者は危険と言っていなかったか?」
「弍焔…?初めて聞きます」
そういうと、宮本先輩は目に見えてがっかりした表情になる。
「漢女とか天兎というのはソードロード競技者に命名される二つ名だ。漢女はタケちゃんで、天兎は―」
「私の事だぴょんー!」
宮本先輩が言っている途中で、ウサ耳を付けた雪のような髪の赤目の少女が割って入る。
「久方ぶりだぴょん、新入生君達」
「「?」」
しかし、僕にはこんな奇抜な知り合いなどいない。
どうやらサルも同じなのか、ウサ耳少女を不思議そうに見ていた。
「あ、さっきの…」
どうやら、美子だけは面識があるらしい。
「あれ、美子ちゃん、私の事二人に伝えてないの~?」
「ええ。…だって、何もされていきませんでしたし…」
「ひどいぴょん!私、高3の大切な1時間目の授業を犠牲にしてまで後輩を助けに行ったんだよ?」
「ええっ、本当なのですか?」
「美子君、部長の事は気にしなくていいぞ。彼女は去年もこんな感じだった。」
この人が、部長なのかよ…。
確かに真田先輩が言っていた通りの変わり者だと思う。
「去年?」
「ふっふっふ。よく聞いてくれたね。実は私は2回目の高校3年生なのだー」
うわあ…。
その大胆告白に僕たち3人はなんて言えばいいのか分からなくなる。
当の本人は、自慢げに言っているしきっとこれはネタとして扱ってもいいのだろう。
「部長、新入生3人が入部したおかげでなんとか廃部は免れそうです」
「別に人数少なくても、公式戦出られないだけだから別によかったぴょんよ?でも、姫奈ちゃん、よく頑張ったよ」
人数不足で困っていたのは本当らしい。
剣皇は、A~Eチームまであるというのに、えらい差だ。
この学校も生徒数なら負けていないのに、いったいどこで差がついたのだろう。
そんなことを考えるているうちに、練習場へとたどり着く。
「お、今日は部長もいるんだな。」
先に来てすでに汗を流していた真田先輩が汗を拭きつつこちらへやってくる。
「そう言えば、幸を今日も連れてきてくれてないのか?」
「クラスをどこか教えろ。まずはそれからだ」
「その、教えてもらってないんだよな…」
真田先輩は、とても悲しそうな顔をする。
あまりに悲しそうなので、同じクラスだと言ってしまおうか…。
そう考えていると、部長が口に指で小さくばってんを作って、言ってはダメだ。と僕に訴えかける。
「あらぁ~、部長。今日はいらしてたのねぇ。」
そう言って、タケねえが遅れて入ってくる。
「よーしっ。これで今いる部員は全員だぴょん。みんなっ1年間頑張ろうねー」
それに、続いてバラバラだが、「オー」っと掛け声が上がる。
遂に、僕の部活ライフが幕を開けるのであった。




