偶然or必然
この世の中には不思議なことがあふれている。
毎日何の気なしに話している言葉にしたって不思議そのものだろう。
もし本当に魔法のような力が、おとぎ話のような戦いが存在すると言ったらあなたは信じることが出来るだろうか?
この話は、そんな不思議な世界に迷い込んだ少年の物語。
果たして、少年が迷い込んだのは偶然なのか、それとも必然だったのか……。
少年は階段を駆け上がった。
まるで、中世の城の様な場所に少年はいた。
そして、彼は階段を上りきった先にある扉を乱暴に開ける。
その部屋は広く、部屋の奥に一つ椅子があるだけで何もない殺風景な部屋だ。
殺風景ながらも、なぜだかその部屋には気品が満ち溢れていた。
部屋には装飾など何もない。
壁はどういう訳か外の風景をそのまま映しているようで、その部屋が地上よりもはるか上に位置することが窺い知れる。
部屋にたった一つだけある椅子にその部屋の主は座していた。
ただ、座しているだけだというのに王のようなたたずまい。
何もないはずの部屋から感じられる気品はその王の様な佇まいから放たれているに違いない。
部屋の主は少年の来訪に驚きもしていなかった。
寧ろ、喜んでいるようにも見えた。
「やはり、君だったか。聞いても無駄だとは思うけど、一応聞いてあげるよ。君の願いはなんだい?」
「そんなこと、聞かなくてもわかるんだろ? 僕は、全部終わらせに来たんだ」
そう言って、少年は竹刀を構える。
その竹刀は彼と苦楽を共にしてきた相棒ともいえる存在だ。
彼の態度は予想通りだったのか、部屋の主もそれに無言で応じる。
椅子から立ち上がり、どこからか竹刀を取り出す。
「ハンデとして、君と同じ武器で戦ってあげるよ。せいぜい楽しませておくれ、人の子よ」
「僕たち人間がいつまでも後れを取り続けるだけだと思うなよ?」
そして、二人は剣を交える。
彼がここに辿り着いたのは偶然ではないだろう。
少年――御剣剣太郎がソードロードを始めるのは、必然だったのかもしれない。
不思議な世界に迷い込んだ少年の物語の始まりは、これより時間を遡ったところから始まる。