第一回 徳川慶喜~ラストショーグンは維新最大の功労者~
明治維新最大の功労者は誰か?
そう訊かれたら、真っ先に名を挙げる人物がいます。
徳川慶喜。
徳川幕府最後の将軍、その人です。
彼を嫌いな人が、どうも多いようです。僕には共感できませんが、その気持ちは理解は出来ます。
ただ、思うのです。
幕府を終わらす。武家政権を終わらす。
長く長くそして重い歴史に幕を引く決断は、並々ならぬ苦労や苦痛があったという事は想像に容易い。それを、誰が非難できようか。
彼が決断してくれたから、今の日本があるのではないでしょうか。
大政奉還をしなかったら?
王政復古に対し、京都を立ち退かず帝を人質にしていたら?
大坂城で立て籠もっていたら?
謹慎せずに、奥羽・函館で決起していたら?
もし、彼より好戦的な将軍であったら、朝廷を敬わない将軍であったら、海外の情勢に詳しくない将軍であったら、歴史は確実に変わっていたでしょう。
慶喜こそ、幕引きに相応しい「武士」だったのです。
それは本人も自覚していたのかもしれません。彼はこうも言っております。
「家康公は、日本を統治する為に幕府を開かれた。私はその幕府を葬り去る為に将軍になったのだ」
この力強い言葉に、彼の志を感じますね。
彼こそ維新の功労者であり、近代日本の恩人だと僕は断言します。
その陰で、命を落とし苦労をした人もいる事でしょう。つまり最大多数の最大幸福から漏れた人たちです。
彼らの縁者や知人が慶喜を恨み、嫌う気持ちは理解できます。それは仕方のない人間の情ですから。故に、そうした犠牲の上にある事は忘れてはいけません。
兎も角、幕末という時代に、徳川慶喜が征夷大将軍として君臨したのは、命数を使い果たした江戸幕府の〔最後の努力〕だと、僕は思います。
徳川慶喜
天保8年9月29日(1837年10月28日)~大正2年(1913年)11月22日
江戸幕府第15代征夷大将軍。歴史上征夷大将軍に任じられた最後の人物である。