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第七十七章 晃と精霊王 道徳

 ターナの街の、精霊樹の広場に戻る。ここは中央の広場という位置だけど、繁華街への道筋からは離れているため、普段から人の通りは少ない。


 時間的には昼の一時から二時ぐらい。


 四本の精霊樹が抜けたけど、空間的にはまだまだ寿司詰めって感じだ。


 まず、ターナの街の周りの四カ所に直径五十メートルぐらいの池を作らなくちゃね。真ん中の島は、石垣で周りを組み上げ、簡単に崩れて無くなるような物にはしないつもりだ。四本の樹が数百年の年月に耐え得るように、がっちり、しっかり作るつもりだよ。


 しかも、今日一日で。


 既に午後って事で、実質一カ所一時間ぐらいかな。チートって狡いよねぇ。


 サクサクやっちゃおうとは思うんだけど、その前に新しい町長さんには話しておかないとねぇ。俺の感覚では、精霊樹の結界の中に後から来た人間の都合なんか、精霊樹の都合よりも優先されるわけがない、って感じなんで、事後承諾でも良いと思ってるんだけどね。


 精霊樹の移動についても、木こり衆の協力を得られるのであれば、後の面倒事も少ないかな、って事で、そっちを先にする事にした。


 そんなわけでジェイたちも居るはずの木こり衆の作業場へ。


 以前も来た事のある場所なんだけど、以前は広場に椅子代わりの丸太が置いてあっただけの場所に、ちょっと大きめのログハウスが出来ていた。


 こ、これが木こり衆の実力か!


 ログハウスの周りには簡単な掘っ立て小屋が四つ作られており、物置や木こり衆の臨時の詰め所になっているようだった。


 そして、中央のログハウスへと向かい、入り口に座っていた男にアキラが来たと伝えてくれと言った。


 「あぁ? アキラ? なんだお前?」


 やれやれ、どうやら、ちゃんとした受付けでは無いようだ。思わずため息が出た。


 「いいから、中に行って、一番目に偉いのか、二番目、三番目でもいいから、アキラが来たと伝えろって」


 「てめぇ、舐めてんじゃねえぞ。ここはてめぇが来る所じゃねえんだよ」


 なんだこのチンピラ。まさか、ボードやガードの仲間に、こんなチンピラが居るとは思わなかった。いや、街の勢力として、木こり衆が実権を握ったようだから、その傘下に入って美味しい思いをしようっていう腰の軽いチンピラって事かな。


 なら、こういうのが入り込まないようにするっていう問題提起のために、騒ぎを起こした方がいいかなぁ?


 「俺はここに訪ねて来ちゃいけないんだ?」


 「ったく、当然だ! 帰れ! 帰れ! そんなおかしな格好をしたてめぇの来る所じゃねえんだよ!」


 そう言って、チンピラは足下に転がっていた木製の水筒を蹴飛ばしてきた。避けないでそのまま立っていたら、俺のヘッドギアの左上部に当たって中の液体が少しだけ俺にかかった。


 どうやら、水筒の中身は酒だったらしい。あまり良い酒では無いね。


 そこへ、外の騒ぎを聞きつけたらしい男が出てきた。こっちは俺も見た事がある木こり衆の男だった。

 丁度いいや。ちょっとだけ犠牲になってね。


 「何を騒いで居るんだ?」


 「ああ、ちょっと、程度をわきまえない馬鹿野郎が居たんで、追い払っていたところです」


 そして、中から出てきた男が俺を見た。


 「あ、アキラ殿?」


 その木こり衆の男の血の気が、一気に引いていくのを見ていて判った。なかなか見れるモノじゃないよぉ。当然、俺は超不機嫌って顔を作って見せた。


 「ああああ、アキラ殿! 大変申し訳ありません!」


 「いやいや、程度をわきまえない大馬鹿野郎だから構わないよ。

 まぁ、とにかく、木こり衆は俺に喧嘩を売った、って事はしっかり受け止めさせて貰ったよ」


 「ええ? そんな! 違います! アキラ殿に喧嘩を売るなんて、そんな事!」


 そんな言い訳を聞かずに、俺はスカイボードを出して空に飛んだ。


 その、突然の風の音に驚いて、何人かが外に飛び出してくるのを下に見ながら、俺はスカイボードを池の作成地点へと向けた。


 「エイプリル。ジェイたちに連絡して、木こり衆の所から引き上げさせて」


 『今回は、どのような計画でしょうか?』


 「ああいうチンピラが入り込まないようなシステムを、自分たちで確立する事が出来るかどうかを見るって感じかな。

 組織が大きくなると、下の方は目が届きません、っていうんじゃ、せっかくの改革も台無しだからねぇ。

 ああいうチンピラが入り込んでたって事は、選挙に勝った第一勢力だ、って思い上がってるのも中に多く居るって事だしね」


 『現状では、そこまでの自律を求める事は過ぎた要求では無いかと考察します。元来のターナの街は、その土壌が出来ていない状況だと認識していました』


 「うーん。木こり衆の対応を見ると、可能だと感じたんだけど、あれって、ジェイが頑張っただけなのかな?」


 『その可能性は大きいと推察します』


 「じゃあ、ますます、ジェイたちを引き離さいとねぇ。このままじゃ、ジェイにおんぶに抱っこって状態を引きずるんじゃない?」


 『その可能性も大きいと推察します。代表は確かにノウドが着きましたが、その補佐役に皆様を欲しているという打診も多くありました』


 「なら、やっぱ、ジェイたちを引き上げさせて、今度の不始末に対応して貰わないとね」


 『了解しました』


 「それと、池を作る第一地点のナビを頼めるかな?」


 ヘッドギアのアイシールドに矢印が出る。あ、行き過ぎてた。


 スカイボードを反転させて、森の中に降りていく。


 樹は約十メートル間隔で立っている。ここに、直径百メートルぐらいの池を作るのは、どうしたらいいだろうねぇ。


 「樹精? どうしようか?」


 思わず、そう口に出してしまった。精霊樹のために、ここの樹を切り倒してもいいのか? って意味だったけど、俺の中の樹精は俺の好きにしていい、って言ってきた。………たぶん。


 そういう気持ちが伝わったってだけなんだけどね。


 つまり、切り倒しても良いし、樹精がまた、歩かせて他へ移すって事でもいいらしい。


 後で切り倒す事になるにしても、今、切り倒して土地を切り開くって事はしたくない。単なる、俺の日和見の精神にすぎないんだけどね。

 理由と目的が有って樹を必要とするのなら、嬉々として木を切り倒す事も平気なんだけどねぇ。


 あ、翼人の所へ、直径百メートル分、切り取って持って行こう。


 あそこなら有効利用されるだろうしね。


 既に持って行ってある森の横に付けるように配置すれば、ある程度は保つんじゃないかな?


 と、言う事で、精神統一して、ここの森の一部を直径百メートル分、俺の転移の範囲に入れる、というイメージを作り上げる。


 でも、なかなか範囲が定まらない。


 「エイプリル。直径百メートルの円周を、俺が認識出来るようにするってのは可能かな?」


 『不明ですが、測定用のレーザーで円を描いて目視出来るようにしますか?』


 「ああ、ちょっと、やってみて」


 以前は呼応を使ったら、一キロという距離を正確に感じる事ができた。今回は呼応無しでやろうとしているから、距離の認識があやふやになっているようだ。

 エイプリルが赤いレーザーポインタで円を描いてくれるけど、それで判らなければ呼応を使う事にしよう。


 でも、レーザーポインタでも、大丈夫だった。


 直接見ているわけじゃないのに、赤い光の線が判り、全体像まで俺の中に入ったという感覚が感じられた。


 次に、転移の魔法陣を描いて、転移先を選択。今度は、以前の位置からずれる場所という事で、これもちょっとだけ苦労した。

 元々、森を転移させた場所、って設定し、そこから一キロ南、ってずらすのは、自分自身を騙しているような感じも受けた。


 俺の感覚では、これでも行けるはず。


 全く知らない場所じゃなく、前に転移した場所のすぐ隣、って感じなんだよね。


 で、なんとか成功。


 ターナの街の北側にあった森の一部は、見事に砂漠の真ん中の岩の上に転移した。


 今度は、その姿をしっかり目に焼き付けて、元の場所に転移で戻る。


 直径百メートルの何も無い窪地。けっこう広いよ。


 池としては、もっと深い方がいいかな? 長い年月が経てば池も埋まっていき、最後は無くなってしまう。なので、始めは溺れるほどの深さにしよう。


 直径五十メートルほどの中央の島の部分だけ残して、土を消去。最大深度十メートルぐらい。


 池の深さじゃないね。


 そして、崖になった壁の面を変質させて、コンクリートぐらいの堅さのブロックに変えていく。ブロックは隙間を空けて組んでいき、崩れないけど、密閉しているわけではない、という状態にした。


 それを、直径百メートルの円周だから、おおよそ三百メートル分。さらに、内側の島の外周百五十メートル分にも施していく。


 けっこう疲れる。


 途中で飽きるという人類最大の障害と闘いながら、なんとか完成。


 あ、これって、水の補給はどうしよう?


 土魔法で地中を調べる。これは、治療魔法で身体の中を診察するのに似ている。これにより、地下水の流れを見つけた。

 ちょっと強い感じも受けたけど、池の底から穴を通して、池に水が湧き出るようにした。


 水が出たので、慌ててスカイボードで飛び立つ。


 あふれた水の行き先も考えた方が良さそうだけど、水がどの程度溜まるかもまだ判らない。でも、それは時間をかけなければ判らないので、とりあえず保留。


 次の場所に向かった。


 そして、同じ作業の繰り返し。今日は飽きる心との戦いばかりだ。


 四カ所全てを作り終わった時は、もう暗くなり始めていた。精神力も尽きかけていたので、精霊樹の移動は明日にしようと、小型輸送艇へと転移で戻る事にした。




 「お帰りなさいませ」


 「ただいま」


 メイの挨拶でホッとする。やっぱり疲れていたんだねぇ。実際、以前の俺だったら魔法力が足りなくて、何度も呼応を行う所だった。それが、何故か一度も行わないで済ませる事が出来たけど、それで疲れも無くなると言う事はなかった。


 魔法力じゃない精神力が摩耗しているような感じだ。


 これは、しっかりと休まないと回復しないと思うよ。


 「アキラ!」「アキラ!」


 リビングスペースへ入ると、ジェイとレイミーが、迷子センターで親を待つ子供のような目で迎えてくれた。

 さらに、レゼとキャスも居る。


 「皆、久しぶり」


 そんな軽い挨拶をすると、なぜか皆からはため息が漏れた。


 「どうしたの? なんか、感動薄くない?」


 「あ、アキラこそ、ほんのちょっと、買い物に行っていたってぐらいの気軽さですよ?」


 「いや、実際、そんなモノじゃないかな?」


 「え、えっと………」


 ジェイが返答に困ってしまった。そこにレゼが立ち上がって、俺に謝罪を申し出た。


 「本当にすまなかったねぇ。実際、街の半分はあんな連中なんだよ」


 「ああ、レゼ、座って、座って。そんなに畏まらなくてもいいから」


 そこで、色々な報告会となった。


 まぁ、俺の方の報告からとなったけど、エイプリルが映像を出さなかったら、内容を信じて貰えなかった、ってのはちょっと辛かった。


 な、なんで信じてくれないかなぁ? 土魔法で十キロ近くの穴を一気に掘ったとか、森を丸ごと転移で持って来たとか、土地神が訪ねてきたとかを説明しても、上の空だったよ。


 半泣きになりつつも、今度はジェイたちの報告をじっくり聞く事にした。


 この街の状況は思ったよりも悪くて、木こり衆でさえ権力を握ったから好きに出来ると思っているらしい。

 その中で、ノウドとその近くの者たちは、とてもまともな考え方をしていて、公平さの意味もしっかりわかっている。

 それは、ノウドという個人の影響で、ノウド自身は若い頃に旅をして、違う国にも赴いた事があるという経験のたまものだった。


 でも、やっぱり少数派で、結局は旨い汁を吸うために他人を利用するという考え方が一般的だった。


 「やっぱり、邪霊の影響は大きかったんだねぇ」


 「はい。なんとかなるでしょうか?」


 「まぁ、そういう考え方をすると、回り回って、自分に悪い影響が及ぶ、って事を身にしみて欲しくてチンピラの喧嘩に乗ったんだけどね」


 「あ、なるほど」


 「ジェイたちも、始めは親切に接して、相手が調子に乗ってきたら、足下からひっくり返してやった方がいいよ。

 他の町では自分の心に収めるような礼儀知らずの行動でも、ここでは一旦、表に出して、それが損を生み出すと判って貰わないとね」


 「ああ、そうだよ、そうだよ。昔は、まだ遠慮ってモノがあった。それが、最近になって、変になっちまった感じがしてたんだ」


 レゼが昔を思い出して懐かしんでる。レゼ自身がターナの街を飛び出して、森の片隅に住み始めたのも、そんな変な空気を嫌っての事だった。

 キャスは王都で育って、魔法を学びにレゼに弟子入りしたために、ターナの街には染まっていないようだ。


 「キャス? 王都では、どんな考え方が主流かな?」


 「そうですねぇ。確かに、上の人は権力、利益、欲望に支配されてるって感じですけど、一般の人はそれを見てあざ笑っているって所でしょうか。逆に、偉くなったらそういう考えを身に着けないとやっていけないって危惧している感じですねぇ」


 「そうかぁ。なら、叩くなら、上の方だけで済むんだねぇ」


 「た、叩くんですか?」


 「叩くよぉ。でないと、アカデミーとしては付き合いきれない相手みたいだからね」


 自分の利益を追求するのは構わないけど、汚職で腐った考え方をした者を入れる事はしたくない。

 アカデミー内では猫をかぶってくれるのなら問題にしないけど、猫をかぶる演技力もない馬鹿だと話しにならないからね。


 「そうだ。実は、四本の精霊樹をアカデミーに移したんだよね。で、俺はアカデミーを見てきたんだけど、皆も見てみる? 特にレゼとキャスは、アカデミーと言われても、どんなモノか想像出来ていないでしょ?」


 「ああ、だけど、まだ建物だけで、人は居ないんじゃなかったのかい?」


 「全くね。でも、建物は完成してたから、どんな街になるかは判ると思うよ。明日の朝一で見物に行ってみよう」


 暗い話しはそこまで、って宣言して、メイに夕食を出してもらう事にした。実は、コトコトと煮込んでいるスープの匂いがずっとしてて、それ以上、真面目な話題はしていられなかった、というのは、全員の統一した意見だった。ファイエーも呼んで、久しぶりの全員集合での夕食。


 たいへん美味しゅうございました。


 やっぱり、皆で食べるのが美味しく感じる。メイが作ったから特に美味しいのかな?


 食後の話しは精霊の紋様の事についてだった。コピー本は既に出来ていて、レゼたちにも読める物も用意されていた。

 それを見ながら転移の魔法陣を描いて見せ、転移可能場所の一覧を出すと言う事もやって見せた。


 キャスは光魔法に苦労していたけど、皆が出来るのを憤慨してやる気になり、何度かして光魔法の起動に成功してた。


 ジェイたちはそれぞれ得意魔法の応用を魔法陣に作り替えていて、俺とは比べ物にならないほどの適性を見せてくれた。


 ジェイたちに理想的な紋様での魔法陣を作ってもらえば、俺が考えなくてもいいって感じだよね。


 そこそこの所で切り上げ、久しぶりの皆が居る小型輸送艇での就寝。


 なんか、落ち着く。


 そして、いつの間にか朝になっていた。夢も見なかったよ。どんだけぐっすりだったのか。


 しばらく外でストレッチをした後に、レゼたちを呼んでの朝食。そして、ティータイム。その行程の一つ一つに懐かしさを感じる。別行動だったのは十日とちょっとなんだけどね。


 皆の準備が整った所で、俺の転移魔法で一緒に移動。レゼとキャスの従魔も一緒で、居ないのはグラウだけだ。


 後で怒りそうだなぁ。


 そして、俺が昨日驚いた場所に到着。案の定、ジェイたちも目を丸くしていた。


 レゼとキャスも初めて見る町並みに興味と言うよりも驚きだけが先行している。アレはなんだ? これはなんだ? という質問の連発だ。


 昨日は真っ直ぐ病院に向かって、その後は精霊樹を移植する公園に行ったけど、今回は近くの建物へと入って、その内側からも見物する事にした。


 一番始めに入ったのは、石造りの三階建ての学生寮だった。


 一般向けの学生寮で、個室は一人用。ベッド、机、本棚、ミニキッチン、トイレ、風呂付きだ。照明は精霊の紋様を早速利用した光魔法の灯りが、ベッドの脇にスタンドのように立っている。


 各階には談話室や多目的ホールがあり、一階には食堂と厨房、管理室、倉庫と簡単な図書室が用意されている。図書室にはまだ本は置いてないが、その内参考書で埋まっていくだろう。


 この建物だけで四十人の学生を賄えるそうだが、生徒数が多くなった時には二人部屋にする事も可能で、八十人の学生が生活出来るそうだ。


 トイレや風呂場が、小型輸送艇のようだとレゼとキャスは驚いていた。スイッチ一つで水やお湯が出てくるんだから、王侯貴族よりも贅沢だろうというセリフは久々に聞いた気がする。


 王侯貴族用には別の建物を用意してあり、マンションのように国ごとに分けて、まとまって生活して貰うようにしたらしい。また、貴族が自分で屋敷を建てたいと申し出た時は、土地の貸し出しも対応するそうだ。まぁ、今の貴族という分類の領主とかだと、そこまでの金持ちは居ない。俺の想像するような選民意識の塊のような横柄な貴族ばかりというのは、もっと後の時代になりそうだからねぇ。


 とにかく、同じような学生寮は飛ばして、次に入った建物は一般教養を教える普通教室が入っている建物だ。


 石造りで四角四面に作られている感じで、日本で良く見られた箱形のマンションをイメージさせる。中もやっぱり、四角に区切られ、いかにも校舎という雰囲気だ。


 でも、俺の認識と違う場所も多い。


 教室は後ろ側が高くなっている階段型の構造と、真っ平らな教室を二つ合わせたような作りで、仕切り代わりにホワイトボードを思わせるキャスター付きの黒板が十枚ほど置かれている。

 階段構造の方に固定の机と椅子が置かれているが、机と机の間隔は俺の知る物の倍以上はある。

 教師用のテーブルはキャスター付きの長机っぽく、似たような机が四つほど置いてあった。


 どうやら、多くの資料を見せながら授業するという形式を取り、教師専用の教室という感じになるようだ。教室の隣は準備室になっていて、そこは教師用の机と本棚、ミニキッチン、応接セットなどが置かれている。


 教室では、俺が教師役で、皆を生徒にして授業ごっこをしてみた。


 授業は図形を使った算数。角度という概念を教え、相似形で距離を測るとか言ってみた。


 俺にとっては算数の基礎で、今更何を言ってるんだ? って内容だったけど、皆には新鮮な驚くべき情報に感じたようだ。


 次に向かったのは魔法専用の教室。


 だけど、授業の内容に合わせて変化させるため、今は何も無い頑丈な箱という感じの教室が並ぶだけだった。

 特質すべきは、頑丈って所だね。


 中には体育館並の部屋や、野外教室という感じの物まであって、それだけでどんな授業が繰り広げられるかわかる気がした。

 魔法用には、別に、周りを分厚い壁で囲ったサッカー場ほどのスペースがあり、実際に魔法を起動させる授業もできるそうだ。


 次に向かったのは製本所。


 印刷と本を綴じる作業の両方を行っているが、便宜上、製本所と呼んでいる。


 ここで選挙のチラシも印刷された、って言ったら、ジェイやレゼたちは驚いていたが、それよりも、そこでチマチマと働く簡易ゴーレムに目を奪われていた。


 大雑把に言えば、人間体型と言うよりも人形体型。身長はメイドタイプよりも大きくて百五十センチほど。小さめの女性ってぐらいだけど、がっしりとした体型をしていた。

 指は三本。親指と人差し指以外は、一つにまとめられた形をしている。手袋のミトンの形で、人差し指が独立している、とも言える形だ。


 これも簡略化なんだね。


 足は大きめで、細かい制御をしなくても倒れにくくしてあるようだ。


 その簡易ゴーレムが台を動かし、活版にインクを塗る。そして台に紙をセット。台を活版の下に移動させ、活版を強く押し下げる。活版を持ち上げ、紙を剥がして乾かす場所に移動させるという作業でワンセット。


 それぞれの動きはしっかりしているが、全体から見るとコミカルな感じも受ける。


 ちょっとほのぼのしてたのは俺だけだったらしく、ジェイ、ファイエー、レゼは、その仕組みと作業に釘付けだった。


 「こんなに簡単に写本が出来るなんて。凄いですねぇ」


 「なるほど。これなら、学ぶ者を何十人もいっぺんに集めるというのも納得出来るねぇ」


 「ふぁぁぁ。おぉぉぉ。おもしぃろいですぅねぇぇ」


 最後に、作業棟という建物に行き、そこで作られている教材を見に行った。


 定規、分度器、コンパス、拡大鏡に顕微鏡、天秤に分銅、簡単構造のペンにインク壺。精霊の紋様のテンプレートまで出来ていた。


 ハサミやカッター、糊やテープ、簡単なリングで紙の束をまとめたノート、鉛筆、消しゴム、九九が印刷された下敷きまであった。


 教科書も、算数から数学の教科書と、ジェイがまとめた単純詠唱の魔法の教科書が出来上がっていた。これから、紋様魔法の本も作ってもらわないとね。


 全部をまとめて専用のカバンに入れると、まるで小学校の入学準備のようだ。


 俺が密かに笑っているのを悟られないようにしながら、入学準備のカバンを皆に配って渡し、勉強用の教材だから、使い潰すつもりで使ってね、と言ったら、ジェイやレイミーだけは渋い顔をしていた。あ、キャスもだ。


 そこで時間切れ。


 実際、アカデミーが稼働したら、様相も一転するだろうから、これ以上見て回っても意味がないかも知れないしね。

 もう、お昼の時間も過ぎているので、メイの居る小型輸送艇まで転移で戻る事にした。


 軽く食べてお茶したら、精霊樹の移動を考えなければならない。


 そこで、ターナの街との対応はやはりジェイたちに頼む事にした。今度はレゼやキャスにも強くでて貰い、ターナの街の住民が、己のやった事を反省するように仕組まなければならない。


 これも、「てめぇ、何様だよ?」なんて言われたら一発で撃沈してしまいそうだから、ジェイたちに任せたいってのが本音だ。人間に進化するのに、あと何万年必要なんだろう。


 ちなみに、猿と人との分岐点は五百万年前とかいう説を聞いた事がある。恐竜が絶滅した時に生き残ったネズミみたいな温血動物が哺乳類の祖先とか言うのも聞いたなぁ。だとすると、六千五百万年は必要なのかもね。

 長生きしなくっちゃ人間に成れないようだ。早く人間に………。


 閑話休題。


 ジェイたちには、これからのターナの街での対応を任せるつもりだけど、実は言っていない事がある。その事にジェイたちが気付くかを知りたいんだよね。

 あの学校のほとんどを任せたいって事で、人の善意や規律を守る雰囲気を学んで貰いたい。


 「あのチンピラが代表するように、あの街の人の意識はかなり低いよね。

 だけど、アカデミーや他の国と付き合っていく事になるのなら、あのままじゃとても困る。正直、この国とは付き合わないという考え方も出てくる。

 これって、この国だけが滅ぶってのと同じ事なんだよね」


 「随分な感じですが、あの木こり衆だけは分けて考えて貰いたいぐらい、違いがありますよ?」


 「うん。要は人の育て方なんだよね。人の物を奪っても、それによる咎めがなければ、やらない方が馬鹿だ、という考え方を子供の頃からしていると、大人になっても使えない馬鹿にしかならない、って事だよね。

 使えないって言うよりは害になるってのが正しいかな」


 「それでも、昔はもっとしっかりしてたんだけどねぇ」


 「それって、地下の邪霊のせいですか?」


 「きっかけはそうだろうね。でも、それを受け入れて、大切なモノを無くした事に気付かず、取り戻す事をしなかった人の所為でもあるね」


 「ああ、何を無くしてしまったんだろうねぇ」


 「ジェイは何を無くしたと思う?」


 「えっと、思いやる心でしょうか?」


 「レイミーは?」


 「ん、優しさかな?」


 「あれ? ファイエーは? 何処行った?」


 テーブルの上のコーヒーカップを持ち上げて、底を確認する。テーブル横のマガジンラックも漁ってみた。やはり居ない。


 「ここに戻って直ぐに工房の方へ行きましたよ?」


 「き、気付かなかった……。まぁいいや。ファイエーには頑張って貰おう。

 で、話しを戻すと、俺は、道徳を無くしたんだと思う」


 「道徳ですか? え? 具体的には道徳ってどんなものなんですか?」


 「簡単に言えば、人が人と付き合う時に必要な正しい事、ってのが道徳なんだ。

 例えば、人に嘘はつかない。騙さない。不快な思いをさせない、迷惑をかけない、ってのが基本だね」


 「あれ? そう言うのは、子供の頃に何となく親から教わる事ですよねぇ。僕も、教わった思い出はあまり無いんですが、教わったって気がしてます」


 「要は躾として、親から子へと仕込まれる、人としてのあり方だよね」


 「ええ。そうですね。あ、でも、親が教えなくても、知っているような感じもありますね」


 「それは、例えば友達同士とか、普通に人と付き合う時に考え、失敗した時には反省して、少しずつ身に着けていく処世術でもあるね。

 例えば、人と会ったら挨拶をする、とか、自分の方の我が儘を通さずに、相手の言い分を聞く、とか、自分が間違った時は素直に謝り、他人の間違いは指摘して許す、という感じだね」


 「ええ。そう言う事を道徳と言うんですかぁ。なんか、良いですねぇ。それが行き渡れば、無駄な喧嘩が無くなりそうですね」


 「じゃあ、ターナの街には、道徳はどのくらい必要かな?」


 そこで、皆が考え込んでしまった。しばらくして、レゼが何とか発言した。


 「正直に言うと、全員にその道徳とかいうのを強制して欲しいもんだね」


 ターナの街を知っているキャス、ジェイ、レイミーも同じ思いだったらしい。


 でも、強制じゃ身に付かないだろうね。しかし、強制でも無い限り、身に付く事もないだろうねぇ。


 「強制して、それを素直に従いますか? 例えば、あのチンピラが」


 ここでも、皆が考え込んでしまった。どんな想像しているのかは判りすぎるね。


 「強制で、表面上は言う事聞いたとしても、本質は変わらないと思います」


 「うん。なら、しっかりと、自業自得を痛感して覚えて貰わないとならないんじゃないかな?」


 「具体的にはどうします? ぜんぜん考えつかないんですけど」


 「まず、あのチンピラには、実名をあげて恥をかいて貰う事にしようと思う。新町長の取り次ぎ役を拝命したのに、他人を見下した態度を取り、街にとって大切な関係を壊した愚か者、よって、丸一日犬としてさらし者にする、って書いた掲示板の下に縛り付けとくとかね」


 「それは、凄いねぇ。なかなかいいよ。あたしは賛成だね」


 「罰としては、一日のさらし者だけど、その影響は大きいよね。しばらくは、犬とか愚か者とか言われて、恥をかく事になるだろうからね。

 それで、二度と無礼な態度を取らないという事になればいいんだけど、それで直らなければ、結局は同じ罰を繰り返し受ける事になるってわけ」


 「なるほど。そして、それを取り締まって刑を実行できる存在が必要なんですね」


 「そうだね。その取り締まる方も、罪もない者を有罪扱いしたら、それ以上の恥をかく刑を受ける事になる、ってすればいいわけだ。で、この部分が、ちょっと難しいって思えるわけだけどね」


 「そうですね。そういう権力を握ったら、自分だけを除外する、ってしそうですよね。

 あっ、あれはどうです? あの、嘘を見破る魔法」


 「そうなんだけどねぇ……」


 「アキラは、あまりあの魔法が好きでは無いみたいですよね?」


 「一番大切にしてるんだよ。もし、人が人を裁かなければならない時に、一番大事になる魔法だからねぇ。

 もし、解析されて、嘘を誤魔化せるようにされたり、とかなったら、一気に裁く根拠が無くなるからね。

 俺としては、ごく一部の人のみが、不正をしないとしっかりと宣誓した上で、厳密な管理の元に使って貰いたい魔法なんだ」


 「なるほどねぇ。便利だと思ったけど、確かに、頼り切ったら危ない魔法だね」


 「え? 頼っちゃまずいんですか?」


 「他の証拠や証人、被害者が犯人だと告げているのに、この嘘発見魔法では犯人じゃない、ってなったらどうする?

 本当に犯人じゃないかも知れないし、魔法の方に干渉して嘘を言ったかも知れない、ってなったら?」


 「魔法の干渉……。それはマズイですね」


 「だから、俺としては研究されないようにして欲しいんだよね」


 でも、一部の奴隷商人が使っているのを知ってるから、アレは、後で何とかしないとって思ってるんだけどね。ジェイたちには知られないようにして、こっそりとね。


 「なるほど。では、嘘を見破る魔法は広めずに、信頼出来る者たちにのみ教えるという事で、その人たちに警邏を任せると言う感じですか?」


 「警邏は魔法を知らなくても良いんじゃないのかな? 刑を実行する前に魔法をかければいいんだし」


 「あ、そっか。犯人と警邏の人へも魔法をかけて、刑を確定するわけですね」


 「出来れば、被害者と目撃者の四人の証言が一致したら、ってのが良いけどね。最低は犯人だけの証言でも良いんじゃないのかな? 恥をかかせる程度の刑ならね」


 とにかく、裁判制度だけは正義のモノになって貰わないとね。濡れた着物を着せて、それが早く乾いたら有罪、なんて裁判が広まる事は、断じて許されないと思うよ。あと、魔女裁判ね。裁判が、無罪の者をシナリオ通りに有罪にする為にある、なんてのは以ての外。


 「とにかく、軽い犯罪でも、ちょっと辛いお仕置きと、めい一杯の恥かき、という刑が常に実行されれば、チンピラでも少しは態度を変えてくるんじゃないかな」


 「はい。これは、ノウドに言って、確立して貰うようにしましょう。きっと理解してくれるはずです」


 「で、今のが、あのチンピラに対する対応。他に、街の住民の意識を変える方法も必要だね」


 「あ、話しが終わったと思っちゃいました」


 「確かに、あのチンピラみたいな馬鹿は、さらし者にすることで、同じ馬鹿をする人をも減らす事が出来るけど、やっぱり、見えない所でなら何やってもいい、って意識は変えられないよねぇ」


 「特に捕まえるほど悪い事はしていなくて、バレなけれな何をやってもいいと思っている連中の意識ですよねぇ。特に、捕まえる程じゃない、って所が厄介ですよね」


 「で、ジェイならどうする?」


 「ええ? 僕ならですかぁ?

 でも、先ほどと同じで、いい思いつきは出てきませんよぉ」


 「まぁ、いきなりすぎたかな。なら、さっきのチンピラの取り締まりを実行出来るように作業しながら、どうしたらいいか考えてみて」


 「ぼ、僕がですかぁ?」


 「皆と相談してね。ジェイ、レイミー、レゼ、キャスの四人で。相談役として今まで通りエイプリルやガジェットの意見を聞いてもいいけど、あくまで基本は四人で考えてね。

 エイプリルとガジェットも、その方向で頼んだよ」


 『「了解しました」』


 試行錯誤して考えると言う事が大事だよねぇ。答えが出る前に、色々なパターンを想定したり、無駄な考えを整理したり出来るしね。

 それに、道徳の事も言ってあるから、それを普及させればいい、という所に辿り着けるかがポイントかな。


 ジェイたちが、人を動かす方法を考え、実行すると言う事が、俺の今回の目的だからね。


 そう、ジェイたちには、アカデミーでの規則も作ってもらうつもり。俺やエイプリルが作ると、規則で縛りすぎちゃう形を取る場合がある。

 俺の知っている日本の人間の生活様式や、エイプリルの知っている時代の規則は、きっと、この時代にマッチしないだろう。


 それに、後から追加したり、要らない箇所を削るのも、自分たちで作ったモノならやりやすいはず。俺が作ったモノだから、しっかりとした理由があるんだろう、って事で規律を維持しすぎたら、場合によっては誰もアカデミーに来ない、とかなる可能性が怖いからね。


 「じゃあ、ジェイたちは、警邏の方を頼むね。俺は精霊樹を移動させたら翼人の所へ戻るから。

 向こうは時間がかかるみたいだしね。場合によっては皆に応援を頼むかも知れないし、アカデミーで人集めとかを頼む場合も有るから、色々期待しててね」


 「あ、あたしたちの扱いはどうする気だい?」


 「レゼ? それは、レゼの好きにして貰えればいいよ。例えば、この国と、アカデミーとの繋がりとしての役割だけでもいいし、それに加えて、教師として学生を教える立場になって貰ってもいいよ。ここで教えるというのも、アカデミーで教えるってのでもね。

 あの森の片隅でのんびり暮らす、ってのもいいし、アカデミーで暮らすってのでもいい。

 アカデミーで、って事になると、何らかの役に立って貰うって感じになるけど、学生寮の管理人から、魔法の教師、獣魔術の教師や、野菜を作る畑の管理人、ってのまで、色々選べるからね。

 自分が何をしたいか、どう生きたいか、何が出来るかを考えて、レゼの希望を後で聞かせてもらうよ。キャスもね」


 「何をさせられるかと思ったら、やりたい事をやれ、ってかい。ふふ、ホント、面白いねぇ」


 「あ~、アキラ? 僕は学生寮の管理人を」「ジェイは魔法学校の校長を頼むね」


 「じゃ、よろしく」


 と言って、転移魔法を紋章で起動して精霊樹の広場へと移動した。




 「エイプリル。四つの池の状態はどんな感じ?」


 昨日作った、精霊樹を移動させる先の池の様子を聞く。


 『北の池は水量が多く、水があふれる兆しがあります。東の池は水量が足りず、池の深さの半分ほどで止まっています。南の池は現時点では適量ですが、季節によって水量が変化する可能性があります。西の池は八割の水量で安定していて、こちらは大きな問題は無いと推察します』


 つまり、西以外は問題ありあり、かぁ。


 「もしかして、レイミーに来て貰って、水の精霊に交渉すれば、何とかなった可能性はあるのかなぁ?」


 『現時点では不明です』


 池の精霊、ってのは聞いた事ないよねぇ。いるなら湖の精って感じかな。思わず持っている斧を落としたくなるけどね。


 まず、水の精霊の加護を持った精霊樹を見つけて、その前で呼応に入った。


 魔法力だけの認識の世界。流れる時間がやや遅めで、急いで用事を済ませないと浦島さんになっちゃう。まぁ、呼応の世界で五分ぐらいが、外では四十分経っていたってぐらいだけどね。


 その世界での俺の周りに、たくさんの精霊樹のイメージが居る。落ち着いた大人の女性という雰囲気だ。性別は無いはずだけど、性格的なモノでイメージが変わるらしかった。


 目の前には水の加護を持った精霊樹。


 そして、四つの池の事をイメージだけで相談した。単に池を思い浮かべただけだけどね。


 その結果、四つの池と、この精霊樹の広場の地下水の管理を引き受けてくれた。邪霊が居なくなって、精霊樹の魔法力にも余裕があるそうだ。他の精霊樹も、風で精霊樹が倒れないようにとか、土が流れ出て足場が無くなる事がないように、とか、森の火事が極力無いようにとか協力を申し出てくれた。


 みんな良い子だねぇ。


 更に、光と闇、大地と海の精霊樹で囲まれた空間は、命のシンボルと同じ意味を持つと言う事で、一種の神聖魔法が使える状態だそうだ。

 そこで治療魔法を唱えたら、普段よりも治療効果が上がるらしい。


 だから、精霊樹の広場を、診療所みたいな使い方をしてもいい、という許可を貰えた。


 いい子過ぎて涙が出そうだ。住民はあんなんなのにねぇ。


 とにかく、池の問題は無くなった。後は、寿司詰め状態の精霊樹を開放感のある場所に移動させるだけだ。


 呼応から戻り、改めて精霊樹を見る。


 ここにあるのは二十四本。うち、二本は根っこしかない。残り二十二本のうち十六本を四本ずつ四カ所の池に移動して、それが終わったら、ここの精霊樹の並びを変える。


 根っこだけの精霊樹も移動させて、精霊樹のタネを使って復活させる。


 良し、行動方針の確認は終わった。


 「樹精! まずは北の池に行く四本を選んで、根を抜いて!」


 そう言うと、俺の胸の中から樹精が飛び出し、四本の樹を選んで精霊樹自身を動かして根を引き抜かせていく。


 どんな基準で選んでいるんだろうねぇ。既に会議とかして決定してたような感じだ。


 「じゃあ、転移するよ」


 動く樹のように根っこで歩いている精霊樹をしっかりと連れて行く存在として意識して、転移魔法を起動する。


 しっかり北の池に到着した。


 直径百メートルの円形の池には水がなみなみと満たされていた。その真ん中の、直径五十メートルの島の真ん中に俺たちは降り立った。


 五十メートルってけっこう広い。精霊樹が成長して、枝が二十五メートル以上真横に伸びなければ問題無いね。

 樹齢千年でも、そこまで行かないと思うしね。


 樹精の案内で精霊樹がそれぞれの場所に移動する。そこに行って、土を泥のように変えて精霊樹を沈ませていく。そして根が完全に隠れる所まで潜ったら、土を木の生育に適した硬い土に変質するようにとイメージする。

 それを四本分繰り返して移植完了。


 「ここにも、精霊樹の解説を書いた石碑を置いて、大切にするようにしないとねぇ」


 樹精がにこやかに喜んでるイメージを送ってきた。


 で、精霊樹の広場へと戻って、同じ作業を繰り返す。今度は東の池。それが終わったら南、そして西だ。


 既に慣れた作業なんで、手間はかかるけど、難しい作業じゃない。


 まぁ、油断してポカしないようにという注意は必要だったけどね。


 そして池への移植が終わったら、今度は広場の精霊樹の移動。


 二十四本有った精霊樹の十六本が無くなった所為で、広場もけっこう広くなった。


 やっぱり、野次馬はたかってるけど、近づいてくる者はいない。まぁ、樹が根っこで歩いているのを俺が指揮しているみたいで、不気味なんだろうね。


 その気持ちはしっかり判った。つまり、俺が不気味な存在ってわけだ。


 挫けそうになる心を支えつつ、六本の精霊樹の移動が終わり、最後は根っこだけの二本となった。


 まず、この二本は歩かせる事が出来ないので、周りの土ごとほじくり出し、移した先に丸ごと埋めた。樹精もその作業にはOKを出してくれた。


 そして、エイプリルから預かった精霊樹の種を二粒取り出す。


 胡麻粒と同じぐらい小さな種だ。それが精霊樹の種でいいのか? と樹精に聞いて、しっかりと頷いて貰った。


 自信を持って、種の一粒を切り株状態の根っこに食い込ませ、土を盛って水をかけた。


 その一粒の種と、精霊樹の根っこだけを意識しながら呼応に入り、目の前で眠っている小さな妖精みたいな存在を確認した。

 本当に、種みたいな小ささの妖精だった。これが成長すると子供形態を取り大人の女性形態になるんだねぇ。


 そして、その小さな妖精に魔法力が注ぎ込まれるイメージをしながら呼応を抜け出した。


 目の前には、直径五十センチほどの切り株から伸びる高さ一メートルほどの若木。


 「成功?」


 樹精に聞くと、大喜びで肯定された。


 「もう一回、魔法力を注ぎ込んだ方がいいかな?」


 今度はちょっと考えてから肯定された。


 「一気に、ってのは拙いけど、もう少しぐらいなら大丈夫って事かな?」


 今度は大きく肯定された。


 微妙なコントロールは難しそうだけど、やってみる事にした。


 呼応に入り、今度は立って歩き始めたぐらいの赤ん坊というイメージの精霊樹に、「丁度いい感じで」って自分自身に注文を付けるようなイメージを追加して呼応を抜け出た。


 今度は、高さ二メートルぐらい。元の切り株状態の根がちょっとめくれ上がっている感じも受けるけど、融合はしっかり出来たようだ。


 樹精も嬉しそうに精霊樹の周りを飛び回っている。


 「じゃ、残りの一本も同じように復活させよう」


 そう言って移動し、最後の一本の復活も成功した。


 周りの空間が圧力を増したような感じを受ける。


 作業が終わったんだから、いつもなら樹精は直ぐに俺の中に戻るはずなんだけど、何故か飛び回っている。


 ちょっと、手招きしてる?


 何となく樹精の後をついていくと、そこは精霊樹の真ん中の位置。


 そして、俺の中の光の精霊と闇の精霊が外に出てきて、俺の前と後ろに立った。すると、今度はジェイの中に居たはずのサラマンダー、レイミーの中に居たはずのウンディーネ、ファイエーの中に居たはずのシルフが俺の周りに立った。


 さらに、ガジェットの中に居るはずのノームが俺の横に立ち、日本や中国的なドラゴンの龍がノームと反対側の位置に立った。


 そして、闇とノームの間にはゴツイ感じの銀色の精霊が立ち、俺の周りが八体の精霊に囲まれた。その精霊たちの更に周りに、十六体の精霊たちが並び立ち、その外側に四体の精霊が立った。


 これって、精霊樹の並びだよね。


 その形に、精霊樹に加護を与えた精霊が現れ、真ん中の俺と樹精を取り囲んでいる。


 なんとも、不思議な感じだ。見ている野次馬なんか、跪いて祈ったりしてるよ。


 でも、それも判る。周りが、強くて心地良いエネルギーで満ちているという感じがする。今、この瞬間だけだけど、魔法的な意味でここが世界の中心地になったという意味が理解できた。


 これは、俺が、ここにいる精霊たちの協力を取り付けた、という意味があるようだ。


 出来る事が有るのならば、精霊がしっかりと力を貸してくれる、っていう約束がされている。


 なんか凄く嬉しい。俺も、大盤振る舞いしちゃいたいくらいだ。


 「ああ、嬉しい。俺も、君たちが喜ぶ事に協力しよう」


 あれ? なんか、やばい事言っちゃったかな? 確かな、正直な気持ちだったんだけどねぇ。


 周りの眩しくはない光が、どんどん強くなって、全ての精霊が俺の中に飛び込んできた。


 何と言うか、凄い!


 俺という器が、張り裂けそうになった。でも、それを俺はのんびりと見ているという不思議な感覚になる。世界を支えるという意味が判る。世界に必要な力が判る。


 異世界から来た、世界を作り、支えてきた精霊の存在が明確に判る。俺は、精霊になった。


 世界そのものという力があふれ、何でも出来る事が判った。知ろうとすれば何でも判る。意志を伝えたければ何処へでも、誰にでも伝わる。人や獣やモンスターの心の形もしっかり判る。炎や水も自由自在。その中心に俺が居て、命そのものになっていた。


 全てが満たされた。


 全てになった。


 俺が全てだ。


 全てが俺だ。



 「そこまでにしておけ。東島晃よ」



 !


 その声? で、我に返った。


 実際に聞こえたわけではないけど、しっかり判る。あれは、アレの声だ。


 そして俺は精霊樹の広場で立ちつくしている自分に気がついた。


 「あ」


 俺の中から、「全て」が消えていた。


 もの凄い喪失感だ。自分の中の大事なモノが全て無くなったような感じがする。その一方で、その状態がいつも通りだという感じも受けている。


 「えっと、何が起きたんだ?」


 周りに居たと思った精霊たちは居ない。俺の中を意識してみたら、いつも通りの光と闇、樹精と酒精だけだった。


 「何が起きたんだ?」


 もう一度、独り言のように呟いた。ついさっきまでは、俺は何でも判ると思っていた。それなのに、今はいつも通りに目の前を目で見る事しかできない。皮膚感触や匂い、音も感じるから、いつも通りの五感のみという事だね。


 でも、何も判らなくなったという喪失感が強い。


 元に戻っただけ、なのに、この喪失感はちょっときついな。また、あの満たされた状態に無条件で戻りたいと願ってしまう。


 もしかして中毒症状?


 たばこ、アルコール、麻薬で、気持ちの良い状態を知ってしまうと、その状態になりたいと切望する状態なのかな? 禁断症状?


 だとすると、その切望する気持ちと常に戦わなくちゃならない?


 胸の中が空っぽになった感覚で、思わず胸を押さえた。


 そこにはシンボルが有った。


 シンボルを握り、何とかしてくれ、って願ってみた。それだけ、喪失感が辛かった。


 そして、その願いは叶えられた。「なんとか」って部分だけがね。


 俺は光の中にいた。その俺の前にはアレが居た。


 「ああ、助かった。あの変な喪失感が薄れたようだ。ホントにアレは辛いよ」


 「本来の状態に戻したが、変質した東島晃には喪失感を感じるようになったか」


 「俺って、どうなったの?」


 これだけは是非とも聞いておかないとね。


 「お前は、精霊王になった」


 聞くんじゃなかった。


 精霊王って何? 妖精王ならシェークスピアだったよね。


 「お前に渡したシンボルを覚えているか? 光と闇、大地と海のシンボルだ」


 「ああ、重宝させて貰ってるよ。奇跡のおまけ付きだけどね」


 「本来、あの光と闇、大地と海は、お前が付き合いのある光と闇、大地と海とは別のモノだった」


 「え? あっ! そうか、こっちのは元から有った方の光だったんだ。」


 もともとこの世界に存在した精霊と、魔法と共に異世界から来た精霊がいたんだね。元々の精霊は在り方そのものは似たような感じだけど、世界を支える必要が無く、元から有る光や土や水に宿った精だったため、魔法とは直接的な関係はほとんど無かったわけだ。


 「その通りだ。だが、お前には後から来た方の光が入り、同時に同じモノが二つ有るという有り得ない状態だった」


 「な、なるほど。あ、もしかして、天使としては元の世界の精霊を統べている存在なのかな?」


 「我らが主であるお方は全てであるので、その属性も与えられている。

 当然、東島晃も同じだ。そして、東島晃は、後から来た精霊のもっとも強い代表たちと親愛の情を交わし、出来うる協力をすると約束の義を交わした」


 「親愛の情を交わす、って、表現が凄いんだけど……」


 「それに因って、二つの精霊が一つになった」


 「え? それって、やばくない?」


 「今までの状態の方が不安定だった。それについては東島晃に感謝を述べる」


 「あぁ。まぁ、問題無いのなら良いけどね」


 「問題は東島晃にのみ起こった」


 「そうだった……」


 「我の精霊を統べるという立場がある中で、我と力の共有を行う東島晃が、新たに精霊を統べた。そのため、人間の魂では理解に及ばない程の力があふれた」


 「あー、あれは凄かった」


 「我と東島晃で、二柱分の精霊力となった。

 我は、東島晃の魂を守るため、その力を東島晃から抜き取り、我の中に収めた」


 「それが、あの喪失感かぁ」


 「だが、東島晃の魂は変質し、あの力に耐えきった。そのため、力が無ければ、必要なモノが失われたと感じるようになった」


 「ああ、だから、人間の魂ではなく、精霊王になった、って言う事かぁ。

 でも、俺の分を吸い出して保管している状態になってて、大丈夫なのか?」


 「我よりあふれる力は、人を守護する星へと流し、流用している。この事に関しては大いに感謝を述べる」


 「はは、有効利用しているようで良かった。無駄になるとか、負担になるってのが一番救われないもんねぇ。

 で、喪失感を無くすためには、精霊王の力をまた入れる必要があるんだね」


 「その通りだ。因って、我はまず、東島晃に力を戻し、如何ほどの力に耐え、扱う事が出来るかを確認する必要がある」


 「なるほど。確かに精霊王になっていた時は自分じゃ無かった感じだったしね。

 精霊王になるか、喪失感を耐えながら生きるか、なんて、どっちも遠慮したいしね」


 「何時かは、精霊王となりて、我と肩を並べる事もあるだろう」


 「え?」


 何時かは、って何時? 何時何分何十秒? そ、そうじゃなくて、俺が人間でいられる時間って短いの? 長いの? 俺って、人としての寿命は終える事は出来なくなったってことかな?


 「と、とりあえず力を少しずつ戻すのをやってみて。俺の方も無理そうなら直ぐ言うから」


 アレも言及するつもりは無いようだ。でも、俺自身はいろいろ覚悟しないとならないようだね。


 そして、俺の中に力が戻ってきた。精霊の世界を支える力だ。しかも、今までのボンヤリとした存在感じゃなく、弾力を感じそうなほどの存在感を持って感じられる。


 精霊の存在が確定した、という感じだ。


 精霊が力を行使する事の意味が判ってくる。存在の確かさが、うれしさになって感じられる。


 力のあり方、使い方、消し方が当たり前のように判る。


 世界が小さくなっていくのを感じる。


 「東島晃よ。東島晃という存在を認識できるか?」


 アレが俺に聞いてくる。東島晃? そんな小さな存在なんて、俺には関係ないだろう。


 手足なんて必要ない。行きたい所に行けて、どんな操作でもできる。目も耳も鼻も口も皮膚も必要無い。五感以上の感覚で全てを感じられる。

 今なら、いきなり森を造り出す事も出来る。砂漠の真ん中に枯れない湖を作り出す事も、火山のマグマの中に、氷の城まで造れそうだ。


 そう、万能だ。世界の法則をねじ伏せる事も出来る。


 「世界像を認識するのは無理である事を確認した」


 何を言っているんだ?


 そんな疑問を感じた所で、一気に何かが失われていった。


 そして、人間、東島晃に戻る。


 「あ、やばかった。確かにアレはヤバイ。ホントに人をやめちゃう所だった」


 思いっきり冷や汗をかいている。ここはアレの作ったイメージの世界のはずなんだけど、俺はその中で冷や汗をかいているようだ。それだけ、本気で危なかったって事だね。


 「今の状態は如何に?」


 「え? 力が入ってる?」


 身体は普通だ。ここでは喪失感を感じて辛くなる事がないから判らないけど、しっかり満たされていて力が漲っている。


 手を出して、その先に風を生み出そうとしたら、呪文を考える前に風が発生する。


 これは、たぶん現実でも同じ事になるってのが判った。


 更に意識して力を入れると、そこに風の精霊が生まれた。


 「え? ファイエーの所から持って来ちゃった?」


 「精霊は、生み出そうと思えばいくらでも生み出せる。その存在は多数居ても一つであり、一つであって多数である」


 ああ~。それって、パラケルススだっけ?


 とにかく、ファイエーの中に居る風の精霊とは別だけど、風の精霊という一つの存在でもある、って事なんだね。


 こういうのは、三次元の物理的な話しじゃなく、四次元的な存在の、三次元に映った影が無数にあるっていうヤツなんだろうな。

 あれ? こんな変な話しが具体的に納得出来る。これが、魂が受けた影響ってヤツなんだね。


 「それで、全体の何割ぐらいが入ったのかな?」


 「精霊王としての力のおおよそ二割。一時的に無理をすれば、三割は利用出来るが、それ以上は自己の存在をないがしろにしてしまうだろう」


 「全てが判るっていうのは凄いんだけど、そのせいで自分を忘れてしまうようだと使い勝手悪く感じるよねぇ」


 「我もまた同じような存在。因って、東島晃という存在に協力を求めた」


 「あ、なるほどねぇ。確かに、何かしようとしたら結果だけ現出させてそれでお終い、とかなりそうだね。それは人のためにならないよねぇ」


 だからこその人間という存在の協力者か。それが自分と同じになっちゃったら意味ないよね。


 「とにかく、力はどうでも良いけど、喪失感さえ辛く無ければ何とかなると思う、そんな調整で頼むよ」


 その俺の言葉を最後に、光の空間は消え、俺は精霊樹の広場の真ん中に立っていた。


 嫌な喪失感も無い。


 ふぅ。


 ため息をついて周りを見回すと、二つの景色がダブって見えた。


 いつも通りの風景。精霊樹の樹が立ち並び、気持ちの良い空間が広がっている景色。そして、呼応でしか見た事のない、人間の女性的なシルエットの精霊樹の姿と、精霊の加護を精霊樹が抱えている景色。


 空を見上げれば、風の中に小さな妖精が漂っている。地面にはノームの力の影響を受けた小さな妖精がたくさんいるのが見えた。


 野次馬の方を見れば、うずくまって祈っている婆さんには少し濁ってはいるけど、黄色っぽいゴムボールみたいなのが重なって見え、その隣にいるおばさんには、所々斑点の有る水色のゴムボールが重なっていた。

 後ろの男は無表情なんだけど、病気のような斑点だらけの灰色のゴムボール。その男の隣には、真っ黒で状態が判らない玉が重なっていた。


 これって何? もしかして、人の心? それとも身体状況? 運命とか?


 でも、余り見たくない。一度メイの所に戻ろうと思い、転移魔法を作ろうとした。


 そうしたら、次の瞬間にはメイの真正面に居た。


 「お帰りなさいませ」


 メイは転移魔法を知っているし、メイ自身も使う事も出来る。更にドロイドなんでいきなり現れた俺に驚いて慌てるって事はない。


 「ただいま」


 そう言ってメイを見ると、ドロイドの胸の奥に、日本式のドラゴンである龍がとぐろを巻いているのが見えた。しかも、こっちを睨み付けている。


 目頭を押さえながら、いつもの定位置のソファに座る。


 「これは、慣れるまできついかな」


 あれ? ここまで、エイプリルが話しかけてこない。


 「エイプリル? 俺の状態はどのくらい把握している?」


 でも、返事がない。あれ? 屍って事は無いよね?


 「エイプリル!」


 そんな俺を不審に思ったメイがコーヒーを淹れる手を止めて俺のそばに寄ってきた。


 「エイプリル様と連絡が取れませんか?」


 「メイの方は?」


 「通信を開始します」


 そして、しばらく無言の状態が続く。


 「申し訳ございません。通信状況の不調が考えられます」


 もしくは、エイプリルに致命的な何かが起こったとか?


 メイはそう言う事は言わないように出来ている、ってのが、何故か詳しく判った。まるで、メイの胸の中の龍が教えてくれたような感じだった。


 俺はヘッドギアの通信機を作動させて、エイプリルに呼びかけた。


 そして、何度目かは忘れたけど、エイプリルが呼びかけに応えてくれた。


 『申し訳ありません』


 「エイプリル自身の状況を知らせてくれ」


 『はい。ゲンブの船体及び、エイプリルの情報体、共に正常。問題有りません。返答が遅れたのは、森の精霊の宝を基準にした魔法力を扱う部分が原因と推定されます。

 艦長自身が精霊樹起因の精霊と接触した後、エイプリルとしての個体認識が不調となりました』


 「もしかして、俺と同じかな?」


 そこで、俺が感じた変化を話した。


 『類似点は多く見られます。ですが、アレとの会話は無く、艦長とアレとの会話のログだけが残されています』


 「もしかしたら手抜きされた?」


 『可能性は大きいと推察します』


 「まぁ、戻れたようだから、良しとしなければならないのかもね」


 『非常に不本意と思われますが、妥当な対応だとの結論も推察されています』


 あれ? 二重人格?


 「エイプリル? 思う、っていう思考ルーチンはあったっけ?」


 『乗員との会話用に言語認識は有りましたが、自己表現での使用は存在していませんでした』


 「俺もエイプリルも、いろいろ変わっちゃったのかもねぇ」


 『森の精霊の宝を除外すれば、状態復元が可能かどうかの推察が出来ません』


 「自分自身の事は、余り真剣に考えない方が良いかも知れないよ。考えすぎると、そっちに持って行かれて、自分自身を忘れちゃうかも知れないからね」


 『非常に不本意ですが、有効な助言だと推察します』


 エイプリルは、「不機嫌」という感情を取得したようだ。嬉しいとか、楽しいとかも覚えて貰いたいねぇ。

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