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第三十七章 晃と人の世の敵 使役獣

 結局、海でのお土産は何もなかった。俺としては蟹鍋が食べたくなったけど、それを言い出せずにいて、ストレスが溜まりまくった。前回は、俺の忍耐力を試すスペシャル回なんじゃないのか? という疑問が渦巻いていたのは、ここだけの内緒にしておこう。


 前日に俺が採取した石は、実はダイヤモンドだった。しかも大きさが最大で30センチ、最小で15センチという大きさだ。これは、世界最大のダイヤに匹敵するのかも知れない。一番大きい物だけ取っておいて、その他は研磨用のヤスリやカッターにしてもらおう。


 セコイ?


 俺もちょっとセコイと思うけど、平成日本男子としては当たり前の行動だと思う。と、思う事にした。


 いつもの装備に着替えて、皆と合流するためにルブロンダルに向かう。せめて夕飯だけでも皆と一緒に摂ろうと思う。

 メイもダイヤモンド工具も、今日、明日中には仕上がらないから、明日も自由行動と言う事にしよう。いや、するったら、する! 俺だけ休めないのは嫌だからね。


 そして夕飯は、皆して報告会。ジェイたちは騎士団と一緒に近くの森へ実践訓練に行ったそうだ。そして帰りは城の中庭に作った帰還用の紋様に転移して帰ってきたと言っていた。城の兵士たちだけの秘密の紋様にして、国に害をなす者たちには知られないようにするのがポイントだというのもしっかり伝えてきたそうだ。


 俺の方は映像つきで報告。大亀の実際の声を聞いてもらって、そのすさまじさを実感してもらった。あとは、サハギンやシャコ騎馬、人魚の姿とかも見せたら、目を輝かせて見ていた。

 絵本の中だけの存在だと思っていた、とエルフのファイエーが言うのを、俺は複雑な心境で聞いてたけどね。


 しっかり眠って次の日。どこかのんびりできる場所でお茶して息抜きしたいと思っていたら、エイプリルから緊急報告が入った。

 ワズムル王国、エンデ伯領のバルカの街で火の手が上がっているそうだ。モンスターの襲撃も確認されている。


 急いで小型輸送艇をバルカの街の近くに飛ばした。


 俺、ジェイ、レイミー、ファイエー、そしてガジェットのメンバーでバルカの街に入る。


 至る所で火事が起こり、大サソリやヘルハウンドが暴れていた。


 俺とレイミーで火事の消火。ジェイとファイエーにモンスターの処理を頼む。この辺は適材適所だね。


 どんどん街の中央に向かって進んでいく。


 一瞬の閃光と共に、ヘルハウンドの頭が消し炭になる。ジェイの火の魔法がレベルアップしてる?

 大サソリが震えたかと思ったら、全方位へ破裂した次の瞬間に、1つの肉団子になってから崩壊した。ファイエーの風の刃がレベルアップして、球形の真空状態を作り出しているようだ。その真空が周りの空気によって一瞬で圧縮され、その勢いで肉団子になったようだ。


 レイミーの水魔法も、まるでその場所だけのスコールという感じで火事を消して行ってる。消化というより、水浸しにしているってほどだ。

 俺の水魔法と比べたら雲泥の差って感じ。いつの間にか、だいぶ差をつけられちゃったなぁ。


 どうせ大したこと無いのなら、瓦礫の下から人を救出しているガジェットの手伝いをしよう。


 救出された怪我人に治療魔法を唱えていく。そして、なぜこうなったのか聞いてみるが、本人たちにも良くわからないそうだ。一瞬で柱や壁の下敷きになった、という話しか聞けなかった。


 モンスター退治、消化、救出、治療というワンセットで移動したせいで時間はかかったが、それでも街の半分ほどは制覇した。残りの半分は、ガッスの街の魔法戦士の部隊がバルカの街の兵と協力してやってくれたようだ。合流したら詳しい事を聞こうと思う。


 まずは、消化されてない火事を消し止め、瓦礫の下敷きになっている人たちを救出することにする。

 俺たち以外の場所は、モンスターの排除だけが優先されているから、救助は手つかずになっているからね。


 ガジェットのセンサーが大雑把に生存者の位置を割り出し、俺たちが救出する。もちろん、大きな柱や石などはガジェットが簡単に取り除いて、楽に救出できるようにしてくれている。


 敵基地の中や敵の戦艦の中に潜り込み、中で暴れるという目的で作られたはずの兵器なのに、人命救助にこれほど役に立つとは、なかなか侮れないねぇ。


 ガジェットの大きな体と、独特なヘッドギアや装備が目立ったため俺たちだと判ったのだろう、兵士が俺たちを呼びに来た。しかし、様子がおかしい。


 兵士は俺たちを取り囲み、剣を向けて怒鳴ってきた。


 「おとなしくしてもらおう。これよりバーレン様の所にお前たちを連行する。」


 バーレン? 誰だっけ? 密かにエイプリルに聞いたら、エンデ伯の馬鹿息子だった。


 「断る! それよりも、何故、いきなり街がモンスターに襲われたのか、説明してもらおう。」


 「な、何を言っている。このモンスターの襲撃はお前たちが企てた事だとはっきりしているのだ。」


 「ああ、大方、あの馬鹿息子がそんな事言ったんだろう。なんの証拠も無しに。」


 「!!」


 馬鹿息子に従っている馬鹿兵士が言いよどんだ。しっかり判っているのに、馬鹿息子に着いたわけだ。なら、俺としては遠慮はしないつもりだ。


 ゆっくり前に進み、馬鹿兵士の前に立つ。そして、右手をしっかり握り、左下から右上に勢いよく振り上げる。馬鹿兵士のアゴを砕くぐらいのつもりで。


 いきなり素手による攻撃とは思わなかったんだろう。剣を持つ手を動かす事もなく吹っ飛んでいった。

 周りの兵士の剣を構える動きに緊張が走った。


 そして、立ち上がった兵士が剣を振りかぶって斬りかかってきた。


 後ろには手を広げて、待て、という意思表示をこっそり示し、兵士の剣をそのまま受ける。


 肩口から斬りかかられたが、多少重さがかかったかな? と言う程度の衝撃だった。


 今度は真横から薙ぎ払われるけど、これは肘を曲げて、腕当てで受けた。これも、押された程度の感じだ。

 さすがに、銃弾を受ける事を想定した宇宙戦争時代の装備だねぇ。


 次は突きの構えで腹に向かって突っ込んでくる。これもそのまま受けて、なまくらな剣では、抵抗さえ必要ないという現実を見せつけた。


 背中の腰の位置にある軍用ナイフを引き抜き、抜いた勢いのまま、兵士の剣を切り裂いた。


 剣が折られたのではなく、切られたと言う事に気付いた兵士がその場に腰を抜かして座り込んだ。


 「バーレンという馬鹿息子に言っておけ。俺たちはワズムルと戦争してもいいと思ってる。しかも、俺たちは無傷で、なんの被害も受けずに、ワズムル全土を焦土に変える力を持っている。その全ての責任をとる覚悟をしておけとな。

 馬鹿息子だけじゃ無い。それに従うお前たち兵士も同罪だ。ワズムルだけじゃない。周辺3カ国でお前たちの居場所はどこにも無くなる事になる。

 逃げ場なんて砂漠にしか無くなる事になるぞ、せいぜい頑張るんだな。」


 そう言い終えてから、広域設定のスタンガンを最低レベルで発射した。範囲に入っていた兵士たちが揃って尻餅を着いたのを確認して、ゆっくり後ろを向いて歩き出した。


 向かう先は領主の館。


 「これから領主の館に向かうよ。攻撃されるかも知れないから準備はしっかりね。できれば、あまり殺さないようにね。」


 「アキラ? どういった考えなんですか?」


 「さんざん、言いたい事言った俺に恨みを持っているのは判るよね。それであの馬鹿息子に、こういうことする甲斐性があると思うかな?」


 「まず、有り得ませんよねぇ。誰かに八つ当たりして憂さ晴らしするぐらいしか無いと思います。」


 「まぁ、兵隊率いて、同じような事しちゃうかも知れないってのはあるけどね。でも、モンスターを率いてってのは有り得ないよねぇ。」


 「1匹とか、2匹とかなら、まだ考えられますけどね。」


 「つまり、悪い事考えてるヤツに、乗せられたんじゃないのかな、って疑念が沸いてくるんだよね。」


 「あ、なるほど。あの連中ですね。」


 「あいつらなら、馬鹿息子は使い捨ての駒の一つだろうね。だから、ワズムルの王都にもなにかしてしまうかも知れない。

 最悪、内戦を起こすつもりかも、良くても、エンデ伯はお取り潰しだろうね。どんな事になっても、この国がバラバラにされる火種を抱える事にはなると思う。」


 「そうか、領主の息子がモンスター側に着いたと言われるだけで、ガタガタになりそうですね。他の領主の街にも広がりそうなんですか?」


 「1つの領地が本当にボロボロになったら、不安を感じる領主が、モンスターを配下に置いて、力をつけないか? って言われたら、落ちちゃうだろうね。」


 「砂漠からの侵攻もありましたしね。その誘いに乗らないのは、ルーノス伯ぐらいかも知れませんね。」


 「だから、ここでの騒ぎが、馬鹿息子一人が、一人の男に喧嘩売って負け、怪我して隠遁生活する事になった。という終わり方にしないとマズイんだ。」


 「あ、あ、なるほど。そういう終わり方かぁ。」


 「今なら、まだ、モンスターは偶然襲ってきたっていういいわけもできる可能性があるしね。

 とにかく、エンデ伯に会って、自分の息子を説得してもらわないとね。」


 領主の館に馬鹿息子が居る可能性もあったけど、その時は叩きのめして、縛り上げてからエンデ伯を説得っという手順になるから、別にかまわないよね。


 ゲートの騒ぎでエンデ伯の屋敷は判ってる。少し登りになるけど、坂を駆け上り、領主の館に到着した。


 扉の前には、門番代わりの兵士が2人。


 「アキラだ! エンデ伯に用がある!」


 一応、声をかける。止められるつもりはないけどね。でも、兵士は当たり前のように扉を開けて、中に入る事を許可してくれた。


 ちょっと肩すかし。


 「1階、東の奥の執務室に居られます。」


 「わかった。」


 どうやら、判ってたみたいだねぇ。


 言われたまま奥に進み、兵士が一人で扉番していた所で止まる。扉番の兵士に、


 「アキラだ。エンデ伯に話がある。」


 そういうと、兵士自身がノックしてから扉を開けてくれ、中に入るように言われた。


 中には執務机に座っているエンデ伯。顔は蒼白、目は少し泳いでいる。今にも泣きそうな感じが印象的だ。


 「まず、俺の方の事情を言います。

 この街から煙が上がり、火の手が見えたので急いで駆けつけると、モンスターが街を荒らしていました。

 モンスターを倒しつつ、火事を消し止め、瓦礫に埋まっている人々を助けていると、バーレンの兵に、モンスターで街を襲った容疑で逮捕されそうになりました。

 その兵は殴って引かせ、俺たちは詳しい事を聞くために、ここに来ました。

 以上が俺たちの事情です。」

 


 「そうか、もう判っているとは思うが、アレがとんでもない事をしでかした。俺は、いったいどうしたらいいか。」


 「しっかりしてください。

 まず、あの馬鹿息子が俺に喧嘩をふっかけるために、兵を差し向けた事にしてください。そして、俺がそれを撃退。ちょうど同じ時にモンスターが襲ってきた。とするんです。

 馬鹿息子は俺との戦いで大怪我を負い、隠遁することになった。と発表するんです。あくまでモンスターはタイミング悪く襲ってきたとしてください。」


 「お、お、それならば。」


 「無謀な戦いを仕掛けて、返り討ちにあった、とすれば、評判は下がりますが、そういった者が国家を揺るがすような事をしでかすかどうか、と疑問を持たれるようにするんです。」


 「な、なるほど。」


 「俺の方も、濡れ衣を着せられては、おとなしくするつもりはありません。その場合は、ワズムルを相手に戦う事も躊躇しません。

 馬鹿息子の方は、俺のせいにする宣伝を行っています。それのために、俺のせいにでもなったら、俺の敵として最悪の結果になると思ってください。」


 「う、うむ。」


 「では、エンデ伯が信用できる兵を逮捕に向かわせてください。一刻も早く、身柄を拘束しないと、国を裏切る行為をさらに加速する事にもなりかねません。」


 「わ、判った。」


 そして、兵を呼んで、バーレンの逮捕命令をようやく出した。兵の方も、俺の話し声が聞こえていたようで、直ぐに判ってくれた。兵自身も判ってたんだろうねぇ。


 俺たちが来なかったらどうしていたんだろう? 兵が進言してくれたかな? ちょっと怖くなったなぁ。


 それから、ルーノスの親方に渡してある通信機の対になる通信機を取り出し、エンデ伯と共に会議を行う事にした。


 「おう、俺の方でもいろいろ情報が入ってるぞ。まぁ、バーレンの作り話が大半だがな。

 一応確認しておきたいんだが、ホントにおめえたちの仕業じゃないんだな?」


 「ひどいですよ、親方。だいたい、俺たちがこの国を落とすのに、わざわざモンスターを使う必要ありませんしね。」


 「わかっちゃいたが、そう、はっきり言われると、返答に困るなぁ。で、おめえたちなら、実際はどう攻めてた?」


 「国とは、人と作物ですからねぇ。国を落としたければ、天辺の頭だけを潰しますよ。

 問題は、国を治めるのが面倒くさいって事ですね。」


 「はっは、そりゃそうだな。うん、安心した。ちぃとばかり怖くはなったが、おめえたちはおめえたちだったな。」


 「で、どうします? 一応エンデ伯の兵に、バーレンの逮捕命令を出してありますが、罪状は個人的な復習に兵を使ったという事だけで大丈夫でしょうか?」


 「ああ、俺もそれぐらいしか思いつかないなぁ。それ以上にすると、反逆罪の目も出てきちまうしな。

 その線で、こっちも口裏合わせるように言っておく。」


 「ルーノスよ。すまんなぁ。」


 「謝るのは、終わってからにしろ。とにかくヤツをおとなしくさせてるのが先決だな。こっちからも兵を出す事にしよう。」


 「俺たちも出ますか?」


 「おめえたちは、そこでおとなしくしててくれ。出られると話がややこしくなる。」


 「あ、やっぱり。」


 とりあえず、今できることはやったので、結果待ちとして休憩をとることにする。ただ時間をつぶすのももったいないので、エンデ伯のお抱え魔法使いの持っている資料を見せてもらうことにした。


 ここの魔法使いは、先代からのお抱えで、基本的に薬の研究をしているそうだ。魔力もそこそこ持っているけど、本物の呪文と出会わなかったため、魔力を使った事はなかったそうだ。


 本来なら一番にルーノス親方のところで魔法を取得するはずの立場だったけど、ここの所の混乱でそれ所じゃないという、割を食った人だった。


 その人の部屋に案内してもらった所で、本などの資料をあさる許可を貰い、それと引き換えに小冊子を渡した。ここの魔法使いには、調べている間は小冊子を読んでいてもらおう。


 まぁ、渡した途端に食い入るように読み始めたので、問題はなかったけどね。


 そして、本人がいるので、荒らさないようにと注意しつつ、皆にはまず、読めない文字で書かれた本を探してもらった。

 読めて、本物の呪文が書かれていたら、ここの魔法使いが魔法を使えていたはずだしね。


 そして出てきたのが4冊の見窄らしい紙の束と言う感じの本。


 そのうちの3冊は俺にも読めなかった。まぁ、文字としての体裁もとっていない、それっぽく見せかけた嘘文献だったしね。同じ物をルブロンダルの書庫でも見かけたから、作者は同じなのかもしれない。


 そして、唯一、俺にだけ読めた本には、召喚魔法らしき呪文が2つほど書かれていた。


 1つは力量に合わせて、呼び出せるモノが変わると言う呪文。もう1つは固定の何かを呼び出す呪文らしいが、力が足りずに呼び出せた者はいないと書いてあった。


 この2つは共に、呪文を唱えると召喚陣が形成されるというモノで、力量が少ない者は小さな陣が出来上がり、大きな力を持つものは、家ほどの大きさの陣を作り出すと但し書きがされていた。


 さっそく、と、なったが、もし屋敷を壊してしまうような凶悪な何かを呼び出したらマズイということで、騒動が落ち着いてから、砂漠の奥でゆっくり試そうということになった。


 そのあとは、ここの魔法使いの呪文の指導。水魔法に適性があって、治療魔法も使えた。

 ポーション製作用の装置を出して、薬草の扱い方やポーションの作り方を教えているうちに、だいぶ時間も経った。

 そろそろ、進展があったかな? と、エンデ伯の部屋に向かうと、言い争う声が聞こえてきた。


 「伯爵は、ご子息の言葉を信用できないとおっしゃられるのですか?」


 「そ、そういうわけではないが。」


 「ならば、ご子息の言葉通りに、なさればよろしいでしょう。なのに、なにを躊躇しておいでか!」


 相変わらず、正等に聞こえる押しに弱いねぇ。一言、俺の言葉のほうが重いのだ。とか言っちゃえばいいのに。仕方ないから、助け舟を出そう。


 「エンデ伯、いかがしました?」


 俺たちが入っていくと、あからさまにホッとした顔をしてるよ。エンデ伯ってば、もう少し威厳を保てるだけの力つけようよぉ。


 「なんだ、お前たちは。エンデ伯に失礼であろうが。場をわきまえろ!」


 さあて、色々言ってやろうっとした時に、背中がザワリとした。命がけの戦いの時に、背筋から血の気が引くような、覚えのある感覚。


 もう、身体が自動反応ってぐらいに、剣を抜いて、超振動ブレードのスイッチを入れてた。


 振りかぶるのも面倒とばかりに、まず、剣をその場に置いておくように身体だけを前に進め、その一歩あとに剣を横薙ぎに振り切る。


 ドラゴンの首をも一刀両断にする超振動ブレードは、黒い何かに受け止められていた。


 いや、ほんの少しずつ切れて行ってる。けど、この遅さなら、受け止められたと言っても過言ではないな。


 「なんで、切れないのか、質問してもいいかな?」


 俺が、まだ切るために力を入れたままの状態で聞いた。


 さっきまでエンデ伯に、馬鹿息子の言う事を聞けと迫っていた兵士は、黒い剣のようなモノで俺のブレードを抑えたまま不適に笑った。


 「よもや、いきなり斬りかかられるとは思わなかったよ。」


 「聞いてないのか? こういう勘だけは鋭いって。」


 「誰に聞けと言うのだ?」


 「ああ、名前はたしか、アインだったかな。あの氷の魔女だよ。」


 「ふっ、ふはははは。なるほど、勘だけは鋭いな。」


 そして、俺の剣を一瞬だけ押して、その勢いで後ろに飛び退いた。


 「ここはまず、一歩だけ引かせてもらおう。だが、もう、この国はおしまいだ。まず、この領地が、領主の息子の手によって壊滅したという事実から始まって、この国を2つに分けるのだ。

 楽しそうだろう? もう始まるのだ。もう誰にも止められない。」


 「………。」


 思わず呆けて見つめてしまった。


 「? どうしたのだ?」


 「いや、すばらしい。」


 「なに?」


 「そこまで、自分の計画を教えてくれるなんて、そんなやられ役が、まだ、この世にいたんだなぁ、って感動してしまった。」


 「! やられ役とはなんだ。やられ役とは。そもそも、もう誰にも止められないから、計画を聞かせてやったわけだ。それが判ってるのか?」


 「エイプリル? ちょっと、周辺の映像出して。」


 俺たちから一番遠い位置にエンデ伯領バルカの街と、その周辺の森や畑、岩場などが真上から見た映像で映し出された。


 「襲撃してくるモンスターの位置をポイントで映して。」


 周辺の映像に赤い○が追加されていった。


 「モンスターの内容は?」


 『ヘルハウンド5体、大サソリ4体、レギオンコング2体、大カマキリ3体、ファングキャット2体です。』


 空中に誰のモノとも知れない声が響いて、エンデ伯と男が一瞬怪訝な表情をした。


 「なんだ、たった16匹か。しかも、いつもの雑魚モンスターばっかり。」


 「なに?」


 「この街にはルーノス伯の兵も来ているから、俺たちが行かなくても片づきそうだしなぁ。」


 「どういうことだ? なぜ、これだけのモンスターに勝てるなどと言うんだ?」


 「今、この国の兵士を強くしている真っ最中なんだよね。その手始めにルーノス伯の所の私兵を強化しておいたんだ。捕獲じゃなく、討伐でいいのなら、16匹ぐらい、お茶が冷めないうちに終わっちゃうだろうね。

 そのうち、ワズムル全ての兵の強化もって予定。

 ああ、ワズムルは予定だけど、ルブロンダルとシャシルはすでに始まってるからね。」


 「………。」


 今度は男が黙ったまま、何かを考えているようだ。


 「ちなみに、ルブロンダルで兵と人の強化をしているのは、アインは細かく知ってるはずだぞ。」


 その言葉で、あからさまに嫌な顔をした。きっと仲が悪いんだろうねぇ。


 「どうやら、出直しを考えなければならないようだな。」


 「それは遠慮してもらおう。ここで捕まるか、倒されるか、どちらかの選択しか残さないつもりだよ。」


 「はったりには聞こえないな。それだけの自信があると言うわけか。」


 「自信は無いけど、人の世界の敵は、自由にしておけないってだけだけどね。」


 すでに、入り口はガジェットがおさえている。俺の後ろにはフォロー役としてレイミーが、ジェイとファイエーが部屋の中央で呪文を唱えている。


 身体を前屈みにして、猫足立ちしていた男が、ふと、力を抜いて背筋を伸ばした。


 「いや、ここで戦うのは面白くないな。ひとまずは私の負けという事にしておこう。」


 そう言った後に、腕を後ろに回しただけで、執務室の壁が吹き飛んだ。


 そして、そのまま外へと飛んでいってしまった。


 俺たちはエンデ伯をかばって廊下に連れ出すだけで精一杯だった。


 「簡単に逃げられてしまいましたねぇ。」


 ジェイが晴れやかに言ってきた。俺も気分は同じ。本格的な戦闘にならなくて助かったねぇ。


 「とにかく、街に近づいてきてるモンスターを何とかしちゃおう。街に入る前に倒せば、変な噂も立たないだろうね。」


 そう言って、エンデ伯は兵にまかせ、俺たち5人はバラバラに別れて走った。


 一番早かったのはガジェットだったけどね。途中まではガジェットに乗せてもらえば良かったなぁ。


 ガジェットのおかげで、倒せたモンスターはカマキリ1体。皆も同じような感じで、ほとんどをガジェットが倒してしまった。


 なんか不完全燃焼。その憂さは馬鹿息子に向かって晴らす事にしよう。


 馬鹿息子は、取り巻きの兵とヘルハウンドと共に街の入り口前にいた。すでに俺たちが取り囲んでいる。


 「な、なんでお前たちがいるんだ。モンスターどもはどうした。ええい、兵たちよ、あの者たちを捕らえろ! 何をしている! 早くしろ!」


 うん、小物っぽいセリフ全開で吠えてるね。ここまで来ると逆にすがすがしく感じる。


 「あー、馬鹿息子に言っておく。街に入ろうとしていたモンスター15体はすでに倒した。残りはそこのヘルハウンドだけだ。

 ついでに、お前らをそそのかした、あの男は逃げた。捕まえようと思ってたんだが、あっさりと逃げられてしまってな、あの様子だと、当分はここら辺には近づかないだろう。

 馬鹿息子の逮捕は、エンデ伯の直接の指示だ。

 ここで捕まれば、悪くても一生幽閉されるだけですむが。これ以上、事を荒げるのならば、エンデ伯共々、反逆罪で王都で死刑ということもある。

 そもそも、お前らをそそのかした男は、それを狙っていたようだしな。」


 そこまで言ってから、一旦止めて反応を見る。この言葉さえ通じなかったら、あとは力技しかなくなるんだよねぇ。


 さて、最後の言葉を言おう。


 「どうする?」


 その場にいた兵が、抜いていた剣を落としていった。


 「な、何をしている! あの逆賊どもを切り捨ててしまえ! あ、あのような者ども、我らの敵ではなかろう!」


 ホントに言葉が通じなかった。


 「ガジェット。あのヘルハウンドを生け捕りにしてくれないか?」


 ガジェットが一瞬でヘルハウンドの横に回ると、その胴を抱え込み、そして、そのままゆっくりと締め上げていった。

 足をかいて暴れるが、一歩も移動できず、犬の悲鳴を上げ続ける。それを見て兵士や馬鹿息子が震えていた。


 腹を締め上げるのをやめたガジェットが、今度は頭を片手で鷲掴みにして、ヘルハウンドの身体全体を振り回した。2回転させて、地面に叩き付ける。そしてまた、強引に2回転させて叩き付ける。その後、ヘルハウンドの首を締め上げて、顔を見つめるガジェット。

 ヘルハウンドを地面に落としたら、ヘルハウンドが震えながら腹を見せた。その腹を潰れないようにガジェットは踏みしめた。


 あとには、尻尾を丸めて伏せの姿勢で待機するヘルハウンドの姿があった。


 ほんの一瞬で調教完了。さすがだ。これがノームの秘宝の力か。


 「ガジェット。ご苦労さん。だけど、弱すぎるから、捕まえておいても用が無さそうだね。可哀相だから逃がしてあげよう。」


 俺がそう言うと、ガジェットはヘルハウンドを追い払った。名残惜しそうに去っていくヘルハウンド。なかなか見られない光景かもね。


 尻餅をついて呆けている馬鹿息子の前に立ち、剣を捨てた兵たちに向かって、


 「人の世の敵たるモンスターにそそのかされたとはいえ、ワズムルに剣を向けた事は事実だ。このことが知れたら、命令に従った兵であっても死刑は免れないだろう。よって、ここは、バーレンが個人の恨みを晴らすために、エンデ伯の私兵を使い、無駄な争いをして破れた事にする。

 そのせいでバーレンは怪我をし、隠遁生活を余儀なくされた。表舞台に出る事もなく、静かに過ごすという事になった。

 誰か異論は?」


 あえて過去形で決めつける。俺の言葉が兵たちに浸透するのを待ってから、異論がないのを確認した。


 「では、大怪我をしたバーレン殿を、エンデ伯のお屋敷に運んでくれ。」


 太陽が西の森の木々にかかる頃になって、ようやくバルカの街の騒動は終わりを告げた。


 あとはしっかり幽閉してもらわないとね。




 一度、エンデ伯の所に顔を出して、ルーノスの親方共々、事の顛末を詳しく説明した。


 人の世の敵という勢力についても説明する事になり、身なりは人間だけど、中身はモンスターという存在には改めて恐怖していた。いつ、どこに潜まれてしまうのか判らないからね。

 エイプリルに頼んで、アインという女と、エンデ伯の所に来た男の似姿を何枚か作ってもらう事にした。これは、ルブロンダルとシャシルにも渡さなければならない資料だから、50枚ぐらい作っておいた方がいいのかもね。


 そして、いくつかの壊れた家屋の修理に、エンデ伯が資金を放出、手伝いとしてルーノス伯の兵もだすという話がまとまって、会議は終了した。


 その晩はエンデ伯の屋敷ではなく、近くの宿屋に泊まる事に。

 当然、宿の食堂でうわさ話を聞かされたけど、俺たちがその当事者で、あの馬鹿息子に因縁をふっかけられたという形で情報操作しておいた。


 あぁ、あの馬鹿息子ならねぇ。という反応で、誰も疑問に思わなかったのは、普段の行いの大切さを思い知らされたけどね。


 そして次の日は、小型輸送艇で砂漠の前線基地の跡地に来ていた。


 崩れて砂の山になっている砂の城を的にするつもりで、召還魔法を試す事にしたためだ。


 まずはレイミーが試す事に。

 砂漠という位置で、威力が弱まるだろうという憶測でそう言う事になった。


 召還魔法の呪文を唱えると、レイミーの腕の周りに光のリングがいくつもできていった。それを空中に投げかけると、5メートルほど離れた場所で止まり、空中に光の魔法陣を作り出していった。


 なかなか綺麗だ。


 光の魔法陣の中に文字や記号がどんどん描かれ、陣の中に描くためのスペースがなくなっちゃうよ、という所で変化が終わり、そこから水でできた龍が出てきた。


 大きさは15メートルぐらいかな。形は、海の精霊と同じ、東洋式の龍の姿だ。


 もしや、あの海の精霊が出てきたかな? と思ったけど、微妙に違う感じがした。

 俺に懐かないで、レイミーにだけからみついて嬉しそうにしているしね。龍の身体自体も、ほとんど水でできているような感じだ。


 「レイミーだから水の龍だったのかな?」


 「それぞれの属性の影響を受けるのかも知れませんね。僕なら火でできた何かでしょうか。」 


 すると、俺は何になるんだろうねぇ。


 レイミーが出した龍は、そのままレイミーにからみつかせたまま、今度はファイエーが試す事に。


 魔法の呪文を唱える時だけは、滑舌も良く、素早く唱えるファイエーもまた、レイミーと同じように空中に魔法陣を描き出した。


 そして、出てきたのは黄色と黒の模様のついた、雷属性の、虎だった。


 良かった。ネズミじゃなくて、本当に良かった。


 体長が尻尾を除いても2メートルはありそうな、立派な体格の虎で、身体の表面がバチバチと火花を散らしている。

 毛が静電気をまき散らしているような感じで、身体が動くたびに、静電気の火花が体表を滑っていく。


 なんか、すさまじい。近くにいて感電しないのかな?


 まるで猫のようにファイエーに懐く虎。ファイエーも、まるで猫を撫でるように静電気まみれの虎を撫でている。あ、抱きついてモフモフしてる。


 「ファイエー? 痺れないの?」


 「たぶん~、わたしぃにぃだけはぁ、影響ないとぉ、思いますぅ。」


 「ファイエー限定かぁ。」


 虎の肉球は諦めよう。


 次はジェイ。


 同じように呪文を唱えて、魔法陣を作り、そこから出てきたのは、炎をまとった鳥だった。


 何となく想像ついちゃってたけどね。


 孔雀に似た姿で、全身朱色、さらに炎をまとっていて、身も軽く空を飛んでる。そしてジェイの肩に当たり前のように降り立つと、その顔をジェイにこすりつけている。


 「その炎も、ジェイ限定で影響無いんだろうね。」


 「はい。そんな感じです。」


 さて、次はいよいよ俺が、と思ったら、ガジェットが呪文を唱え始めた。


 そういえば、呪文で魔法を使えるんだったよねぇ。


 そして、ひときわデカイ魔法陣を作り出し、そこからは、やっぱり、デカイ亀が出てきた。


 うん、想像通り。


 一昨日の大亀よりも、かなり小さいし、甲羅も丸い感じだ。陸亀なのかも。高さは3メートル、横幅は2メートルぐらいかな。ガジェットよりも大きいけど、大亀ってほどじゃない。


 これもガジェットに懐いて、身体をすり寄せている。その亀のアゴを撫でるガジェットは、かなり人間くさい感じがした。


 「さて、じゃあ、俺の番だね。」


 「どんな属性か想像できないのですが、かなり大きい召還獣が予想されますね。もしもの場合を考えて、離れて構えていましょう。」


 ジェイの提案で、ちょっとだけ寂しい感じになった。なんか、信用されてないのかな?


 とりあえず、やってみる!


 呪文を唱えると、まるで指先に扉が作られていくという感覚が大きくなっていく。そして、その扉の置き場所を探している感じがどんどん強くなる。それを空中に放り投げ、丁度いい所でとどまるように指示する。


 そして、扉の中で何かが作られていく。


 あれ? この感覚は納得できないなぁ。


 そして、作られた何かが飛び出してくる。


 バサ! バサ!


 2回だけ翼を羽ばたかせた後は、音もなく空中を滑ってくる、フクロウだった。


 俺に近づいてくるので、右腕を持ち上げ、腕にとまらせるようにする。そして、器用に翼を広げてブレーキをかけると、本当に自然な感じで腕に落ち着いた。


 よく見ると、足の爪も鋭く、腕当てに突き刺さっている。この装備じゃ無かったら、腕がとんでもない事になってたかも?


 ジェイたちも近づいて来て、俺の腕のフクロウを眺めている。


 「僕たちの召還獣は何となく判りますが、アキラのフクロウはどういった意味を持つんでしょうか。」


 俺にとってももっともな事をジェイが聞いてくる。俺だって判らないよ。


 「召還獣とはなんじゃ! 自分たちの使った術の事も知らぬのか! 全く嘆かわしいわい!」


 「しゃ、しゃべった?!」


 皆が1歩引く。俺は、右腕に留まらせているんだから、引けないよぉ。


 「ただのフクロウじゃないとは思ったけど、なんなんだ? お前は?」


 とりあえず、問題解決の最短手段は、本人から聞く事だよね。


 「まぁ、何も判っていないようだから仕方ないじゃろ。

 いいか、良く聞け、わしはな、知識を司る神の象徴の写しじゃ。」


 知識を司る神、って所まではいいけど、神の象徴ってのと、それの写しってのはどういう事だろう。


 「えっと、知識を司るってことは、いろんな事を知ってるってことかな?」


 「もちろん、その通りじゃ。」


 「じゃあ、その神の象徴っていうのは、どういう意味かな?」


 「神という存在についてどの程度知っておるかという事で、説明が変わるが? どの程度知っておる?」


 「とりあえず、俺については知らないのかな?」


 そう言ったら、フクロウが俺の目を見つめてきた。フクロウの目って眼球じゃないから、キョロキョロ動かないんだったよねぇ。それを頭全体を動かして、いろんな方向を見ているって話だ。それなのに、じっとフクロウに見つめられるのは不思議な感じだった。


 「お前は、判らん。なんだ、お前は? わしに判らん事があるとは信じられん。教えろ、お前はなんだ?」


 「あー、そのうち、じっくり時間をかけて………。」


 面倒くさいしねぇ。


 「まぁ神の所はいいや。で、象徴の写しってのは?」


 「ふむ。もともと神として、しっかり形が無い存在で、いろんな喩えが使われている神を象徴と呼んだんじゃ。特に決まった用語ではないがな。」


 「あぁ、ある民族は森の大樹を神として崇めていたり、別の種族はアイドルを崇めていたりとかいう感じかな?」


 「そんなもんじゃ。ちなみに、わしの場合は、フクロウという鳥や、火山にある宝珠、真珠やアイドルなどがあるがな。

 みな、知識の神として崇められてはおるが、特定の意志を持つほどは存在がはっきりしてはおらん。」


 「なるほど、だから、神の象徴なんだねぇ。で、その写しってのは?」


 「それは、お前たちが使った術のせいじゃ。」


 「召還魔法じゃ無かったんだ?」


 「あれは、使役獣を作り出す魔法術式じゃ。」


 「作り出す? そんな事ができるのか?」


 「もともとのサンプルは必要じゃが、それと全く同じように作って、その中に、作り手の言う事を聞くように仕込んだモノが、あの術式じゃな。」


 「それで、写しかぁ。」


 要はコピーってことだね。本物ってわけじゃないのが、ちょっと残念。


 「それじゃあ、召還での戦いが終わって、元に戻すっていうことは、消滅させてるって事になるのか?」


 「その通りじゃな。わしも含めて、そのモノたちも、消滅することに恐怖は感じないがな。」


 「「「………。」」」


 ジェイたちが複雑な表情で、自分たちの作り出した使役獣を見つめている。


 「あれ? そう言えば、この魔法って、どうやったら、その使役獣を元に戻せるんだ?

 呼び出した後に、魔法的なつながりを感じられないんだけど。」


 「普通に口で、もう必要ない、戻れ、消えろ、と言えば消えるじゃろう。」


 「じゃあ、それを言わなければ?」


 「定期的に、存在するための魔力を吸われる事になるな。」


 「使役獣自身はこの世界から魔法力を吸収できないのか?」


 「ある程度はできるがな。それでも、減る量の方が大きいじゃろうなぁ。」


 「たとえば、このプレートをつけていたら、どうだ?」


 ヘッドギアの魔法力吸収プレートを見せる。


 「なんと、とんでもないモノをもっているなぁ。どこで手に入れたんじゃ?」


 「ノームに直接聞いたんだ。で、どうだ?」


 「そうじゃのぉ。わしなら、そのプレート1枚で充分維持できそうだな。他の土、水、風、火は4枚使えば、足りないという事もないじゃろう。」


 皆の表情も軟らかくなった。


 「じゃが、それに意味はあるのかのう? 使役獣なんぞは、所詮は使い捨ての道具じゃろう。」


 「あんたは、それでいいのか?」


 「かまわんよ。また必要になれば、作られるわけだしのぉ。」


 「また作った時に、ここで話した事は覚えているのか?」


 「それは無理じゃな。大元の存在が、ここでの話を聞いているわけでもないしのぉ。」


 皆を見ると、頷きで返してきた。特にファイエーは、虎を抱きしめたまま、真剣な目で大きく頷いている。


 「一時的に作ったモノでも、俺たちにはそこに命を感じるんだ。だから、その命を大切にしたいと思う。もちろん、役に立ってもらった時に、傷つくかも知れないけど、それは運命として受け入れるつもりだ。だから、できるだけ長く一緒にいる事を選ぶよ。」


 「変わった連中じゃな。まぁ、わしらは、作られた時に、作り手に従うようにされとるからな。好きなようにしろ。」


 「ああ、そうさせてもらう。それと、この魔法のもう一つの呪文があるんだが、これについてはなにか知っているか?」


 そう言って、メモ書きの、魔法力が足りなくて起動できなかったという呪文を見せた。


 「なんというモノを持ってきたんじゃ。」


 「なにか、ヤバイものなのか?」


 「ヤバイというか、非道なものじゃな。」


 「具体的には?」


 「これは、自分自身を写して作り出す術式じゃ。そして、作り手に従うようにするモノもしっかり入っている。

 想像してみぃ。いきなり気がついたら、自分の前に自分がおって、自分が、目の前の自分の言う事に逆らえないという状況を。」


 けっこう想像力が必要になりそうだ。でも、その怖さは確実に伝わってくる。


 「わしらのように、元々、個としての意識が無かった者なら、普通に受け入れられるが、お前たちでは、受け入れられんじゃろう。

 目の前で、自分自身が、嘆き悲しみながら狂乱していく姿を見る事になるぞ。」


 「え~、この魔法は、欠陥品として、永久封印する事にします。」


 皆の賛成も快く取り付け、これで今回の魔法実験は終了した。


 小型輸送艇を呼んで、一旦休憩にしよう。


 「なんじゃあれは? どうやって空を飛んでおるんじゃ?」


 フクロウの質問攻めで、しばらく休憩できそうもなかった。

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