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第一章 晃とゲンブ 出会い

 とある星系国家に属する宇宙軍の武装補給艦ゲンブの任務は、目標地点まで船倉の補給物資を届けることだった。

 同型の武装補給艦がもう1隻、非武装の補給艦が4隻、護衛の戦艦が2隻の小規模な艦隊で、補給線を細かく分けたための、かなり危険な任務になり、通常よりも警戒しつつの行軍になっていた。


 しかし、突然、艦隊すべてが予定外の宙域に引きずられるように移動し、そのアクシデントに対応すべく機関最大出力で元の航路に戻ろうとしたとたん、敵対する軍の艦隊に発見されると言う不運に見舞われた。


 「敵艦隊は右翼方向に回り込むようです。現在、艦載機の展開は確認されていません。艦隊を分けるような様子も見られません。」

 索敵および哨戒関連を統括する士官が、艦長に報告する。


 「さて、艦隊司令はどのように采配するのか。」

 あまり名は聞かない、今回選任された艦隊指令の指揮を想像しながら、つぶやくようにこぼした。


 『22分前のアクシデントの解析ができました。』

 ブリッジに少しだけ機械的な雰囲気を含んだ声が、どこからともなく響く。艦の総括コンピューターの、[エイプリル]である。通常は呼称として[マム]と呼ばれることが多い。


 「マム。その原因は司令の方でも解析できているのか? 情報共有は?」


 『現在、全艦で解析結果の報告がなされています。』


 「そうか、報告を聞こう」


 『はい。23分前の航路逸脱現象は、観測できなかった小型のブラックホールであるとわかりました。現在、艦隊進行方向で右40、上角30、距離30万の位置に確認しています。質量は推定になりますが6京トン前後。ブラックホールとしては超小型になります。』


 「超小型か、わかりやすく言うと?」


 『1Gタイプの惑星の2倍程度です。小型で高速移動していたため、突然の重力干渉という状態になったようです。5時間後には、敵艦隊の左方向、距離1万の位置を通過する見込みです。』


 「星2つ分ならかなりの重さだな、それが距離1万にあるのなら充分利用できそうだ。このブラックホールが人工のモノである可能性は?」


 『現在の観測では、どちらの可能性も否定できません。』


 「今は些事ということだな。このブラックホールを利用してのシュミレーションは?」


 『現在、全艦で分散処理中です。』


 「艦長! ジャミングがきました。受動観測型の全センサーが規定どおりにシャットダウンされました。艦隊のリンクはレーザーによるピンポイント通信のみになります。」

 士官が報告すると同時に、ブリッジ内のモニターの配置が換わっていく。レーダーや電子的な観測結果のモニターが、望遠鏡の拡大画像や温度変化を視覚化したサーモグラフィーの画像に変わり、大まかにした艦隊配置図が正面に配置された。


 「遅いな。なにをやってる・・・」

 艦長と呼ばれた男が誰にともなくつぶやく。


 敵艦隊を発見し、なおかつ電子戦が始まったにも関わらず、司令艦からは戦闘体制の指示も何も無い。本来なら攻撃か撤退かぐらいの方針は決まっていてもおかしくない。司令艦の参謀や司令自身が優柔不断なのだろうと、落胆を込めてため息をついた。


 「司令艦より第一級戦闘体制の指令です。配置及び行動指示も来ました。」


 「シュミレーションの結果が出てきてからしかモノを考えられないとはな。質が落ちたとか言うレベルじゃないよなぁ。」


 もう一度落胆のため息をついてから、座りなおし、背筋を伸ばす。


 「よし、全艦に第一級戦闘態勢を通達。マム! 作戦指示のファイルを展開して説明を頼む。」

 号令とともに艦内にブザーが鳴り響き、配置完了や隔壁封鎖などの報告が飛び交う。


 艦長と副長の手元のモニターにだけ、作戦行動の支持が時系列の表と動画で再生され、

 「馬鹿野郎がっ!」

 艦長の怒声がブリッジに響き渡った。その艦長の怒声のせいで、一瞬だけだがブリッジが静寂に包まれた。


 「マム。この作戦での最適行動をシュミレーションしてくれ。」


 『了解しました。しばらくお待ちください。』

 艦長のみならず、副長までもこめかみを抑えてうつむいていた。


 しばらくして、艦長と副長専用のパネルに変化が現れ、2人がそれを覗き込む。

 「・・・マム、それでいいのか?」


 『軍の貴重な資源を守れず、申し訳ありません。』


 「すまない。」

 副長と目を交わし、互いにうなずく。


 「マム、全艦放送。休憩中の乗員も含めて全員につないでくれ。」


 『了解しました。・・・どうぞ。』

 艦長からの全艦放送のチャイムがなった。


 「艦長のレイドだ。現在、われわれが所属するこの艦隊は、前方12万の位置にいる敵艦隊との戦闘態勢に入った。すでに電子戦が開始され、ジャミング及び、電子機器に進入しようとする毒電波やマイクロマシンが飛び交っている状況だ。」


 襟首に指を入れて緩める。

 「この状況で艦隊司令は、ゲンブ、及び同型武装補給艦キューレ2に特攻の指示を出し、この場に留まり、本隊を撤退させるために徹底抗戦せよとの命令を出した。」

 一番言いにくかった言葉を吐き出し、大きく息をついた。


 「よってこの艦は、これより小型ブラックホールを盾にしつつ、敵艦隊に向けて進撃を開始する。」

 艦の乗員すべてに対し、軍の命令で死刑を言い渡されたようなものだった。


 「そこでだ。全乗員は脱出艇で待機。一撃を受けた時点で艦を放棄。全員で脱出する。」


 「現在配置についている者はマムが操作しやすいように操作切り替え。手の開いているものは脱出用の艦載機を準備。できるだけ高速艇を用意しろ。」

 副長が脱出のための補足を伝えると手を振り、マムに艦内放送の終了を伝えた。


 「マム。マム自身による戦闘はどのくらい可能か?」


 『自動戦闘禁止の制約がシステムに存在します。特例による解除をお願いします。』


 「よし、ゲンブ艦長レイドの権限を持って、権限が及ぶ範囲の全制約を解除。」

 認証用のパネルにカードを近づけ、横のパネルに手袋を外した手のひらを当てる。


 『解除しました。これにより、約10時間程度の操艦、1時間程度の全力戦闘が可能になりました。』


 もともと自動戦闘ができないように設計されているのだが、各配置で乗員による、予備弾倉の供給装置がやっつけで取り付けられたり、操艦の伝達系を強引につないだりと、本来なら軍規違反の改造が急ピッチで進めらていた。

 その現場では、相談相手や愚痴を言う相手、暇つぶしのための話し相手として親睦を深めてきたマムに、涙を流し別れの言葉を言いながら作業する乗員の姿が多数あった。


 1時間後、長距離ミサイルによる戦闘が開始され消耗戦が始まった。この時点ではブラックホールは戦闘軸線上にはないため、敵艦隊には発見されていない。

 艦隊から離れた2隻は、徐々にブラックホールを盾にする位置に移動し、しばらくして艦砲射撃による戦闘が開始された。


 『右舷後方に被弾。D-015ブロック、及びD-016ブロックが貫通被害。ブラックホールを完全に認識したようです。』


 「見えない盾の効果もここまでか。総員に通達。予定通り脱出を開始。」


 「キューレ2も脱出を開始したようです。ブリッジクルーも急いで脱出艇へ。」

 副長の指示で、ブリッジから退出する足音が響く。


 「マム。自動戦闘の状況は?」


 『問題なく継続中。艦長ならびに副長には脱出艇への移動を進言します。』


 「いや、俺は残る。艦長としてせめて、船の最期には付き合わないとな。副長にはゲンブの最期を報告する任務を与える。」


 「いやですよ。艦長が残るのなら私も残ります。この船との付き合いも、艦長よりは長いですからね。」


 そこへ、小さなガスボンベを抱えた、通路掃除用の円筒形のロボットが入ってきた。

 プシュー

 なぜここに? という疑問でロボットを見つめた2人に、霧状のガスが吹き付けられた。


 お約束のセリフを吐いた2人は気絶したまま、掃除ロボットに抱えられて脱出艇に放り込まれた。


 砲撃の嵐の中、最後の脱出艇が飛び出した直後、もう一つの武装補給船キューレ2が明滅する大きな光に飲み込まれた。しばらくして光が収まり、黒く、煤まみれになった元キューレ2が穴だらけの無残な姿をさらし、回転しながらゆっくりとブラックホールの元へ流れていく。


 敵艦隊は、ブラックホールの存在に気づいた時点で追撃を諦め、残った武装補給艦のみをターゲットにしていたので、ブラックホールの進路を迂回しつつ攻撃を行い、着弾の被害はあったが、船自体を消耗することなく戦闘状況を終えた。


 砲座や推進システム、動力伝達系に被弾したゲンブも、ブラックホールの中に吸い寄せられるように移動していく。それを見た敵艦隊の乗員の幾人かが、敬礼を持って別れを告げた。


 この日、武装補給艦ゲンブは、その船籍を失った。


 そして、ゲンブにとっては十数分後、船の構造材すべてを歪めてはいたが、一部の機能を保持したまま、ブラックホール周辺域からはじき出されるという奇跡の帰還を果たした。


 人間の生命維持はできないが、中枢の頭脳と、修理用のロボットの操作が可能で、時間はかかるが修理可能という自己判断ができ、マムと呼ばれていたコンピューター[エイプリル]はさっそく船体を元の状態にする仕事を開始した。




 俺、東島晃、20歳、大学生。日本、東京生まれ、東京育ち。

 東京都内ではないが、関東というくくりの中に入る某県内の大学構内で、講義と講義の間の2時間という時間をもてあましていた。


 「どうするかな・・・」

 つぶやいて、腕時計を見る。さっきと同じ時刻だ。わかっているのに何度も腕時計を見る癖がついている。


 上を見上げて、太陽の光に目を細める。

 「あー、昼寝してぇ。」

 昼寝はあきらめ、学食でコーヒーを飲みつつノートを広げるか、図書館で参考資料用の文献をピックアップするか、空き教室でレポートの文字を埋めるかと考えながら歩いていた。


 「何? なんだありゃ。」

 目の前3メートル程度の先が丸く歪んで見える。まるで不定形のレンズが揺らめいているかのように。


 「なんか、ヤバイのかな・・・」

 不穏なものを感じて、一歩後ろに下がろうとしたが、そこで平行感覚が狂った。


 「何? 上下感覚が・・・、下? 前に落っこちる!」

 目の前の歪みが、黒い穴のようになって、そこを下にして落ちていく感覚が襲った。踏ん張る足は何の成果も見せず、宙を掻く。


 そして、東島晃は、悲鳴を上げる余裕も無く、前方の穴の中に落ちていった。


 そのすぐ後に穴は消え、20人以上の目撃者がいたが、何が起こったかを説明できる人間は誰もいなかった。



 何も無い真っ暗な中を、晃は漂っていた。


 落ちていく感覚はわかったが、それもすぐに消えた。空気抵抗を感じなくなったので、落ちている感覚は無かったが、上下の感覚がない無重量状態っぽいので、まだ落ちているかも知れない。

 恐る恐る、目を開けようとした瞬間、口から肺の空気が強引に吸い出された。


 「ぶぶへっ!」

 情けない音を吐き出し、空気を確保しようともがく。

 目が刺す様な冷たさを数倍にしたような痛みを訴える。

 身体全体がむくんだような、パンパンに腫れあがったように膨らんでいる感じがする。

 皮膚も、目のような痛みを訴えるようになってきた。


 く、苦しい・・・

 まさか、真空? 上下感覚無いけど宇宙とか? ありえない なんだこれ 苦しい


 徐々に酸欠になり始める。口を開け、肺を膨らませて空気を取り込もうとするが、何の手ごたえも無く、肺の中までつめたい痛みが襲うだけだった。


 やばい。死ぬ。死ぬ。死んじゃう。助けて。誰か。誰か助けて。何この状況。誰か。


 人間、なかなか死なないんだなぁ。

 などと考え、意識を失えるのなら、楽に死ねるのかな。とも考えたりした。


 それでも徐々に考える意識が薄くなり、そして晃は動かなくなった。



 今まで東島晃を応援いただきありがとうございました。作者の次の作品にご期待ください。


 「冗談じゃないよ!」

 意識を強引にもどして、突っ込みを入れる。


 目を覚ましたら病院のベッド。という場合は、まずは天井を見て、お約束のセリフを言わなければ、と思って見回すと、自分自身が酸素マスクもなしに液体の中にいることに気づいた。


 「これは未来的な治療施設? 液体の感覚はあるのに呼吸も苦しくない。まさに未来技術。」

 よく感じてみたら、顔の横から噴き出し、足元の方へ流れている。


 「とりあえず状況確認だな。俺の名前は東島晃、20歳、昼過ぎになぞの穴に落っこちて、宇宙空間と思しき場所に放り出され、酸欠とミイラ化で死にそうになった。うん、記憶はしっかりしてる。おそらく、ここは死にかけた俺を助けてくれた人の医療施設だろうな。」


 声はしっかり出しているつもりでも、くぐもった音になって、この状態では会話は難しそうだな。とかも考えながら、自分の体を調べていく。


 全裸だった。


 まぁ当然かな。と、あきらめて、全身を手で触りながらチェック。一応、パーツは揃ってるようだ。腕が増えていたり、金属製になってたりとかは無いようで、とりあえずの安堵の息を吐く。


 手を伸ばして液体を覆っている壁面を探す。ちょうど手を伸ばしきった位置にカバーになっている壁の触れた。


 「なんか、自分らしくないほど落ち着いてるなぁ。」

 実際は、全身を覆っている液体に、中毒性の無い精神安定剤が含まれているだけなのだが、まるで夢の中のことのようだと、自分の状況を考えていた。


 そして、カバーに触れたせいか、液体が排出され、空気に取って代わっていった。

 口元を液体が下がっていき、液体を吸うという呼吸から、気体を吸うという呼吸に代わるところで、吐いた。むせた。咳をしまくった。肺から液体が出きるまでは、ちょっとした地獄だった。


 「ひどいよ~。これは~。」

 涙目になりながら、それでも、原因は予想できるので、その苦しみはあきらめた。


 全身を浸していた液体がなくなると、今度は透明な温水が頭上から流され、続いて乾燥した温風が吹きかけられた。一応洗い流したようだ。

 透明なカバーがスライドして、今まで入っていたのがカプセル状だと知ることができた。

 外に出て、全裸のまま歩く。身体の状態を再確認していた時に、近くに置いてあるテーブルに、医療用の手術衣のようなものと、サンダルのようなものを見つけたので、遠慮なく羽織ってみる。


 「なんか、甚平とバスローブのあいのこのような・・・」

 全裸よりはマシだけど・・・、と思っているところに、少しだけ合成音を含んだ声がどこからとも無く響いた。


 『気分はいかがでしょうか。問題なければ会話による情報の交換と、一つの依頼をお願いしたいと思いますが。』

 突然の声に驚き、自分がどうしていいかわからなくなった。落ち着いていると思っていたが、軽くパニックを起こしたようだ。


 『気分はいかがでしょうか?』

 何も返事をしなかったことに、声が探るようにもう一度問いかけてきた。


 「は、はい。大丈夫です。その、ちょっと、驚いたもので・・・」


 『驚かせてしまって申し訳ありません。私は武装補給艦ゲンブのサポートを担当するコンピューターで個別の呼び名を[エイプリル]と申します。』


 「コンピューター? はぁ、なんか、すごいですね。えっと、その、俺、・・・えーっと、俺、治療されてたみたいでしたけど、どうなってたんでしょうか?」


 『あなたは、武装補給艦ゲンブの前方300メートルの位置に突然現れました。そして、真空状態での生命維持が困難な状態と判断して、特例により乗艦させ、医療施設で治療いたしました。』


 「えーっと、あの、あっ、助けていただいたんですね。ありがとうございました。あっ、俺、東島晃って言います。」


 『東島晃様、よろしくお願いします。』


 「あ、どうも・・・、あの、それで、・・・ここどこ?」


 『ここは武装補給艦ゲンブの中央、竜骨ブロックにある第1メディカルルームです。』


 「・・・どこ?」

 かみ合わなかった。


 エイプリルの案内でメディカルルームを出て、展望ブロックに行って、はじめて宇宙空間に浮かぶ宇宙戦艦の中だとわかった。

 そして、もっとも疑問に思う一言を吐き出した。


 「ここ、どこ?」


 『申し訳ありません。正確な位置は不明です。』

 実はエイプリルにも、わかっていなかった。


 その後、展望室の長椅子に座り、星の海を眺めながらの会話でわかったことは。

 とある星系国家の宇宙軍の武装補給艦ゲンブは、晃の世界よりも未来に位置しているらしいこと。

 艦には、一人の人間もいない状態で、コンピューターだけが艦を管理して維持している状態だということ。

 地球の日本という国はまったく知らないが、その言語は、言語パックに収められており、晃の呟きから選択して、問題なくコミュニケーションできていたということ。

 ブラックホールのかなり近くまで巻き込まれてから弾き飛ばされたため、ゲンブにとっては数十分でも、外部の一般的な時間経過では、数千万年から数億年の時間差ができて、元の人類とのコンタクトも絶望的な状況であること。

 船の修理は終わったが、基本的に軍の士官に命令をされないと行動を実行できないため、基本命令である船体の状態維持以外は何もできないということ。

 ということがわかった。


 「孤独だねぇ。時間の流れにおいてかれた迷子ってところか。」


 『人間のように寂しさを感じる感情はありませんが、ただ、船体を維持しながら緩やかに朽ちていくだけの未来を予想すると、この艦を作った方々と、この艦に乗って、戦い、過ごしてきた方々に申し訳ないと思えます。』


 「なにかをしたい。なにかを残したいって感じだね。」


 『申し訳ございません。具体的な提案はまったくありません。』

 高度なコンピューターだから、寂しさや、何もしないで死ぬということに対する恐怖を無意識に感じているのかなと考えていた。


 「そして、俺も、時と空間の迷子かぁ。」


 『命に関わるほどに危険な状況だったと推論します。申し訳ありませんが、元の状況に戻るための方法などは、提案できる情報が存在しません。』


 「お互い、帰る当てのない時空の迷子だね。」

 そう大切に思ったことなんか無い元の世界の生活が、ものすごく貴重に感じ、それを強引に奪われた喪失感が冷たく全身を駆け下りるのを感じた。

 失くして初めて大切だと感じるってのはよく言われるけど、こんな世界ごと失くすなんてのは反則だよなぁ、っと神様に文句を言ってみる。チート能力でも付かないかな。


 「あ、さっき、なにか、依頼があるとか? 言ってたけど?」


 『はい。所属を失くした貴方に、わが軍に所属してもらい、士官として着任していただくことを、依頼としてお願いしたいと思います。』


 「あー、士官の命令がないと動けないから、本部も無くなったことだし、ここで適当に配属されたことにしちゃおうってつもりだね。」


 『はい。艦長として着任していただければ、この艦は貴方のモノとして御使いいただけます。』


 「何にも無い宇宙空間に放り出されたから、しっかり生きていける、丈夫な戦艦を家にできるってのは、渡りに船、とか、願ったり叶ったりとかだけど、任命権限とかは大丈夫なのかな?」


 『前艦長により制限を解除されていますので、任命、階級授与に関しては大佐までは可能になっています。』


 「大佐かぁ。その階級で艦長にはなれるの? いっそ将軍とかにはなれないのかな?」


 『大佐であれば艦長職は可能です。准将以上の将官には上位の将官の推薦が手続き上必要になります。』

 大将とか中将とかの認識システムには、他の将官の生きたデータも必要になるとか・・・。けっこうガチガチに決められているみたい。大佐までなら事務手続き的な扱いで済まされるとか・・・。固いんだか、ゆるいんだか。


 「わかった。って、まだわかってないことも多いけど、この戦艦は俺が貰おう。地球、日本出身。東島晃・・・大佐。ゲンブの艦長として着任する。」

 『ありがとうございます。・・・・・・登録完了しました。東島晃艦長の着任を歓迎いたします。私は武装補給船ゲンブのエイプリル、どうぞよろしくお願いします。』


 武装補給船ゲンブは、止まっていた起動動力に火を入れ動き始めようとした。


 「で、俺は、何をすればいいのかな?」


 動き出すわけではなかったようだ。


 宇宙空間での物理法則や、軍の規定、口調などは、まったく考えないで書いていますので、突っ込み所は、カレーにスルーしいてください。

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