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校内戦争  作者: しじみ
1/1

入学式


この作品には未成年者の飲酒、喫煙描写が含まれておりますが未成年の飲酒、喫煙は法律で固く禁じられています。

また、流血シーンやグロ描写、BL(ボーイズラブ)描写も含まれますので苦手な方の閲覧は注意してください。


 




俺の通う高校、桜ヶ丘高校は市内で最も有名な不良高校だ。

不良高校、そう聞くと聞こえが悪いな……

不良高校と言っても頭の良い奴はちゃんと居る。

じゃあ、なんで不良高校と言われているのか……それは、この学校が少しおかしいからだ。

この学校は偏差値が高く難関校とも言われている

だから周りには頭が良い奴も居るが、それを上回る俺を含めた馬鹿が多い。

自慢じゃないけど、俺は通知表で3以上を貰った事がない

なのにどうして難関校に受かったのか……

それはこの学校のシステムのおかげだ。


この学校は、力が一番という校訓がある。

それはただの力ではない、ケンカによる力だ

受験パターンは一般的な入試と面接の二つがあって、馬鹿な俺は面接によってこの難関校への切符を手に入れた。

面接ではこの学校の先生とちょっとした組手をやらされる。

馬鹿で力しか取り柄がなかった俺は、他に行ける高校も無かったので藁にも縋る思いでこの高校を受験し無事に入学を果たし俺は入学式に来たはずなんだが、会場に居たのは柄の悪い奴らばかり。

入学式だと言うのに血の付いた釘バットだったり鉄パイプだったりを持ってる輩が居る。


アレ、今日は入学式で合ってるよな?

ヤンキーの集会とかじゃないよな?


「…みんな弱そう」


背後から声が聞こえてきて、俺は勢い良く振り返ると、視線の先には小学生みたいな小さい男の子が立っていた。

もしかして、お兄ちゃんかお姉ちゃんの入学式に着いて来たのかな?

どっちにしろこんな危ない奴らの中にこんな小さい子が居たら危ない。


「君、お母さんとはぐれちゃったのかな?」


俺はその子に合わせてしゃがんで、怖がられないように笑みを作る。

すると、目の前の子はジッと俺を見詰めてから俺の顔に目掛けて拳を向けた。


「ガキ扱いすんな、俺は高校生だ」

「えっ!?」


俺が声を上げて驚くと、目の前の子は今度こそ俺の顔に拳を当てた。

痛む頬を抑えながらも俺はその子から視線を逸らさずにいると、男の子は驚いたように目を見開いてから盛大に舌打ちをしてその場から離れてしまった。追掛けようにも殴られた手前気まずさもあるし、俺はその小さな背中を見送った。

なんだか物騒な子だったな……

でも、この学校にはあの子以上に物騒な輩が居るんだろう。


俺も覚悟を決めなければいけない。

卒業どころか進級するのですら難しいこの学校を卒業しなければいけないんだ

この高校を卒業すれば一流企業への就職が約束される。

田舎の爺ちゃん婆ちゃん、お袋と親父、弟と妹の為に俺は頑張らなきゃいけない。


「はーい、新入生のみんなちゃんと並んでね。今から入学式がはじまるよぉ」


よれたスーツに無精ひげを生やした若いようなオジサンのような先生が拡声器を使って指示を出す。

でも、ケンカが強い不良の集まりはそんな声を聞くはずもなく話をやめない。

みんな静かにしろよ、なんて止めに入るはど俺のメンタルは強くないしもしそれで絡まれても上手くやりきる自信がないし、先生には申し訳ないけど俺は黙って自分の言われた順番に並んでよう。


「お前ら煩ぇよ」


決して大きな声ではないのに響いた声。

その声はさっき俺が聞いたあの子の物にそっくりだ

……もしかして、あの子がこの不良達を黙らせようとしてるのか?

絶対無理だ、あんな小さい子じゃ逆に返り討ちにあってしまう。


「何言ってんだ、このチビ」

「ここは小学生の来る所じゃないでちゅよー」


ああ、やっぱり馬鹿にされてる……

ここは助けに入った方が良いよな、ってか助けなきゃダメだよな……


「ぐっ、あぁ…」


俺が人混みをかき分けてあの子の声がする方へ向かっていると、鈍い音が響いて誰かが倒れた

まさかさっきの子が!?

俺は慌てて謝りながら人混みをかき分けると、その先にあったのは眉間に皺を寄せて立ってるあの子と、その足元で伸びてる男が居た。

多分、この子がやったんだろうけどその光景は異様だった。

小学生くらいの子が大きな男を失神させ、僅かながらも笑っているのだから……

その場に少しの間沈黙が走るも直ぐにその沈黙は破られた。


「何だこのチビ、調子こいてんじゃねぇぞ!」


その声を筆頭にみんな雄叫びを挙げてその子に向かって拳やら鉄パイプを振り上げた瞬間


「お前ら、ちょっと静かにしようか」


何かが壊れた音が響いたかと思うと、さっきの先生がにっこりと笑った。

その手にはさっきまで持っていた拡声器は無くて、その代りに先生の足元には粉々になった拡声器の残骸が散らばっている

その光景にさっきまでの勢いを無くしたみんなは一歩後ずさり顔を真っ青にしていた。


「別にケンカするのは良いけど、先生の言う事位は聞きましょうねぇ」


先生はまた間延びした声で拡声器の残骸を集めながら、給料減らされるーなんて愚痴を溢している

ついさっきまでの雰囲気とはガラリと変わったその様子が怖く感じた。


「さあみんな、ちゃっちゃと並んでくださーい」


先生のあの雰囲気を目の当たりにした俺達は一言も発する事なく、先生の様子を窺うように一列に並んだ。









 


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