冬が終わるまで
ぼくは何のために生まれてきたんだろう。
最近、そんなことをよく考えるようになってきた。
やっぱり死ぬときが近付いたからだろうか…。
最初は喜ばれて生まれたこの命だったけど、
段々と飽きられて。
それに気づかないふりをして笑顔を見せたけど、
もうぼくなのことは見えていないようだった。
もう人生なんてどうでもよくなって。
静かに死に逝くのを待っていた。
そしたら、赤い顔をしてぼくに近づく女の子がいた。
なぁに?って言うと、
ニコッと笑って抱きついてきた。
訳もわからず固まっていると、
またニコッと笑ってどこかに行ってしまった。
なんなんだ…と思ったけど、
笑顔なんて久しぶりに見たから…
少し…困る…。
すると、また女の子が戻ってきた。
手にはマシュマロがいっぱい握られていた。
それをぼくに差し出す。
戸惑いながらひとつ食べると、
それは甘くて、優しく口の中で溶けていった。
おいしいと言うと、
彼女はまたニコッと笑って抱きついてきた。
今度はぼくも抱き締め返した。
あれから、彼女は毎日来てくれる。
いつも、あの甘いマシュマロを持って。
でも、ぼくはもうすぐ死んでしまう。
ぼくか死んだら、彼女は泣くのだろうか。
・・・やだな。
ぼくはこの場所から動けない。
照り付ける太陽から逃げることは出来ない。
冬が終われば溶けてしまう。
彼女にその事を伝えたいけれど、
それで彼女がここに来なくなってしまうのは嫌だったんだ。
だから、ぼくは今日も静かにマシュマロを食べる。
冬が終わるまで彼女を見守る。
冬が終われば溶けて死んでしまうけど。
また冬が来れば、会える。
だって、ぼくは・・・
こどもから生まれた雪だるまなのだから。