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冬が終わるまで

作者: もちうさぎ

ぼくは何のために生まれてきたんだろう。


最近、そんなことをよく考えるようになってきた。


やっぱり死ぬときが近付いたからだろうか…。


最初は喜ばれて生まれたこの命だったけど、


段々と飽きられて。


それに気づかないふりをして笑顔を見せたけど、


もうぼくなのことは見えていないようだった。


もう人生なんてどうでもよくなって。


静かに死に逝くのを待っていた。


そしたら、赤い顔をしてぼくに近づく女の子がいた。


なぁに?って言うと、


ニコッと笑って抱きついてきた。


訳もわからず固まっていると、


またニコッと笑ってどこかに行ってしまった。


なんなんだ…と思ったけど、


笑顔なんて久しぶりに見たから…


少し…困る…。


すると、また女の子が戻ってきた。


手にはマシュマロがいっぱい握られていた。


それをぼくに差し出す。


戸惑いながらひとつ食べると、


それは甘くて、優しく口の中で溶けていった。


おいしいと言うと、


彼女はまたニコッと笑って抱きついてきた。


今度はぼくも抱き締め返した。


あれから、彼女は毎日来てくれる。


いつも、あの甘いマシュマロを持って。


でも、ぼくはもうすぐ死んでしまう。


ぼくか死んだら、彼女は泣くのだろうか。


・・・やだな。


ぼくはこの場所から動けない。


照り付ける太陽から逃げることは出来ない。


冬が終われば溶けてしまう。


彼女にその事を伝えたいけれど、


それで彼女がここに来なくなってしまうのは嫌だったんだ。


だから、ぼくは今日も静かにマシュマロを食べる。


冬が終わるまで彼女を見守る。


冬が終われば溶けて死んでしまうけど。


また冬が来れば、会える。


だって、ぼくは・・・


こどもから生まれた雪だるまなのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読させていただきました。 いいですね。切なさと、温かさと、ショートショート的な意表を突く展開! 一度に三度おいしい、お得な気分を味あわせていただきました。 >何のために生まれてきたのか…
2012/02/06 22:35 退会済み
管理
[良い点] 雪だるま! うわぁ素敵ですね(*^o^*) 確かに雪だるまは口作れますよね。 これで心おきなく余韻に浸れます。ありがとうございました! 私のほうも冬の童話祭用の小説【Unknown…
[良い点] お初にお目にかかります。 日野遥といいます。 なんだか胸が優しくなる作品ですね(*^o^*) 心理描写がとても素敵でした。 ただ主人公が何者なのか明かされていればもっと良かったのかなぁ…
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