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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と紅の石
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赤と友(4)

悠真は秋幸と友達になりたい。悠真の一方的な願いに困惑したのか、秋幸が頭を抱えた。秋幸は何も言わない。俯いて、何かを考えるかのように息を吐いた。


 そして、頭をぐしゃぐしゃにした後、に再び顔を上げた。


 その目はとても強い。秋幸の中の何かが切り替わったようであった。秋幸の強い目はしかと悠真を捉え、秋幸の瞳が鏡のように悠真の顔を映していた。

「考えよう。紅に助けを求めるだけじゃ駄目だ。春市と千夏も戦っている。危険と隣りあわせで、今も奴のために戦っている。俺たちは冬彦が紅の下にたどり着くのを、待つだけじゃ駄目なんだ。この時間を無駄に過ごすことは出来ない。俺たちには何か出来るはずだ。何か……」

そして秋幸は言った。

「紅は義藤を残した。危険だと分かって、義藤が殺される可能性を知りながら。義藤を生かしたいなら、そこに行かせるべきではなかっただろう。なぜ、紅は義藤を危険だと知っている場所に行かせたんだ?悠真の復讐に義藤をつき合わせたのか?俺たちが攻め入るという確証が無かったのか?」

悠真は頷いた。紅たちは、敵の正体を突き止め、敵を追い込むために義藤を囮にしたのだ。尻尾切りにならないように、証拠を掴むために義藤を行かせたのだ。


――危険を恐れていては、何も手にすることは出来ない。


 紅はそう言った。紅たちは渇望しているのだ。敵の正体を知り、敵を追い込む一手を渇望しているのだ。もし、ここに悠真が捕らえられていると知っても、敵が白を切ったらどうなるのだ。否定するのは当然のことだ。闇に乗じて悠真と義藤と悠真を殺して捨ててしまえば、悠真たちがここに捕らえられていた証拠は失われる。


 敵が奴であるという証拠も失う。それに、豪華な屋敷が物語るように、敵は官府の高官。紅に要求を出せる存在。紅は証拠無しに朱軍を動かすことが出来ない。冬彦が運んだ手紙は事実を伝えても証拠にならない。偽りの手紙として、処分されてしまうだろう。紅は探しているのだ。敵を追い込む一手を。ここに義藤が捕らわれ、敵がここにいて、ここの主が隠れ術士に石を与え、駒として利用しているという証拠を探しているのだ。真の敵を追い詰めるための証拠が必要なのだ。悠真は秋幸に言った。

「紅たちは探していたんだ。危険を承知で、敵を追い込む一手を」

悠真の言葉に秋幸は苦笑した。

「なるほど、証拠を探すために義藤を行かせたか……。ここに悠真がいるという証拠。ここに義藤がいるという証拠。紅がここに攻め入るに足る証拠。証拠があれば、紅はここに攻め入り、義藤を救うことが出来る」

何が証拠になるのか、悠真は思考を働かせた。何をすれば、紅たちへの手助けが出来るのか。ここにいる悠真は何をするべきなのか。悠真は考えた。そして秋幸は低く呟いた。

「悠真と義藤がここにいる。それが明らかになれば、紅たちがここへ突入する証拠になる。まずは、義藤たちがここにいる証拠を紅たちに送る。手紙のようなものじゃなくて、もっとしっかりとした証拠を。冬彦は手紙を届けてくれる。その手紙で、紅たちは助けてくれるはずだ。俺たちの大切な人たちを。そうすれば、俺たちは紅に従う」

秋幸は悠真に手を差し出し、悠真は秋幸の手を取った。握り合った手から、秋幸の温もりが伝わってくる。

「問題は、どうやって、悠真がここにいるという証拠を紅に手渡すのか、ということだ」

秋幸が言った。簡単なのは、悠真が脱出して、この位置を伝えることだろうが、下手をすれば義藤が殺される。悠真は考えた。紅の言葉を、野江の言葉を、辿った。


――己が生み出した全ての石を監視することが出来る。


 紅が誕生して最初に生み出す石は、監視する力を手にする。いつ、どこで、どの石が使われたのか監視することが出来る。そもそも、官府は紅に石の監視を止めるように要求し、紅はその要求を跳ね除けたのだ。悠真は考えた。紅は今も石の監視をしているはずだ。そして、石は本人しか使用できない。本人用に加工されているから。つまり、ここで義藤の石を使えば、義藤がここにいる証拠だ。しかし、義藤の石は限界を超えて砕けている。ならば、悠真が持っていた惣次の石はどうだ。惣次の石を使えば、悠真がここにいる証拠となり、紅は朱軍を動かすことが出来るはずだ。


 悠真の中に一筋の希望が差し込んだ。


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