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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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藤色の不安(3)

 紅は微笑んだ。


「義藤はいつも、私の欲しい言葉をくれる」


言って、紅は義藤を指さした。

「それ、貸してくれないか?」


指さされて、義藤は赤い羽織を脱ぎ、紅に手渡した。幼いころから変わらない紅の癖。不安に駆られると、布にくるまれて安心する。それが紅なのだ。

 紅は義藤の赤い羽織を着ると、襟元をきつく合わせた。そして、羽織に包まれるように身体を小さく丸めた。


「赤に包まれると安心する」


紅が小さく言った。柴や都南と比べると、決して大きな羽織ではない義藤の羽織。それでも、紅が羽織ると大きな羽織に思える。幼いころは、大差なかった義藤と紅の身体の大きさも、今ではこれだけ異なるということだ。


「次は何を考えている?」


義藤は紅に尋ねた。紅は身体を丸めたままだ。


「何があっても、どのようなことが生じても、俺は紅の近くにいる。それはきっと、他の仲間たちも同じだ」


紅は何度も言っていた。火の国を守るのは、色神ではなく術士だと。色神には変わりがある。倒れれば、次の色神が立つ。しかし、優れた術士は異なる。優れた術士が倒れても、次に現れるとは限らない。先代の紅が、仲間に恵まれずに苦心したように、時として優れた術士は不足する。だからこそ、火の国を守るのは術士なのだと。

 義藤はそのような紅の言葉が嫌いだった。義藤の不安を助長する。色神は赤の石を生み出す道具だと。まるで、そのように思える言葉。今、ここに彼女は生きているのに。色神という変わりは現れても、彼女という変わりは現れない。それなのに、彼女の存在価値は「石を生み出す」それだけのことのように思えるのだ。


――義藤が守るのは、赤の色神ではない。彼女なのだ。


けれども、その言葉を伝えることはできない。

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