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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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藤色の不安(2)

 紅が行動を始めるときは、義藤に必ず連絡が入る。紅は無茶をする人ではあるが、向こう見ずではない。いつも、無茶をしては義藤をやきもきさせるが、彼女なりの勝算があっての行動だ。


 なのに、義藤は不安だった。

 今の紅を見ていると不安になる。


 最近の火の国は不安定だ。日ごろと違う流れは、義藤を不安にさせる。


 ふと、義藤は赤色を感じた。義藤に一色を見る力はない。けれども、彼女の気配だけは分かる。それは、色神特有の存在感なのかもしれないし、幼いころより一緒に過ごした仲だからこそ故なのかもしれない。


「どうした、紅」


平静を保つために、筆を持ったまま義藤は口にした。すると、障子が開き、外から明るい日差しが差し込む。日の光の中に佇むのは紅であった。質素な着物に袴姿。身分を隠す、普段の紅だ。


「お前は一色を見ているようだな。嫌味なくらいに鋭い」


紅はけらけらと笑いながら、部屋に入ると義藤の前に座った。


「紅がここへ来るときは、なにか厄介な相談をするときだ。一人でも動けぬ、仲間を集めて話すほど考えが固まっていない。どうして良いか分からぬときに、ここへ来る。すでに頭の中でまとまっていることの、背中を押してもらうためにな。どうせ、俺が何を言っても変わらないんだから」


紅の考えは誰にも変えられない。それでも、紅は不安になると、義藤のところへ来る。相談をするでもない。ただ、自らの考えが正しいと、義藤に保証してもらうために。


「大丈夫だ、紅。大丈夫」


義藤は紅に言った。紅が抱える大きな物。それを肩代わりすることができれば、どれほど良いだろうか。紅の抱えるものは、彼女にしか抱えることができない。どれほど願っても、義藤が変わることはできないのだ。


 色神だから。


 色神とは、何とも言えぬ存在だ。

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