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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤の行動(7)

都南が苛立っているのは明らかで、足早に歩く都南を悠真と秋幸は必死に追った。先日までは、柴の後を追っていた。都南と柴の持つ雰囲気は異なる。都南の一色はぴりぴりと苛立っていた。都南の苛立ちが佐久に関係しているだろうことは想像がつく。白の色神の騒動の際、都南は単独行動をとっていたのだから。佐久を探していただろうことは、承知の事実。


都南は、外廊下を歩き、草履をはくと厩へ向かった。悠真は秋幸と共に都南の後を追っていた。どこへ行くのか。佐久を探しに行くのだろう。悠真と秋幸は都南のお荷物だ。


「待っていたぞ、都南」


げらげらという笑いに悠真は胸をなでおろした。都南の苛立ちはあまりに恐ろしい。野生の獣を目の前にしたような気分だ。大きな赤色を放つ柴が、都南のまとう空気を変えていく。


「つれないな、都南。久しぶりに戻ってきて、俺への挨拶はなしか?」


柴がげらげらと笑う。とても大きく、とても暖かい。


「今のお前は周りが見えていない。少し落ち着け」


柴が都南に話しかける。

「あなたには関係ない。柴。紅との約束は小僧二人の面倒を見ること。そして、術の使い方を教えることだ」


都南の語気は荒い。都南の苛立ちも何もかも包み込むように、柴が笑う。

「ああ、そうだな、都南。お前の言う通りだ。術の使い方を教えるのは、確かにお前が適任かもしれない。だが、都南。忘れるな。お前の術の使い方は容易く教えて良いものではない」

柴の言わんとしていることが悠真には分からなかった。

「それはなら紅に言ってくれ。俺は紅に命じられただけだ」

都南は突き返すように言い放った。


「まあ、落ち着け。都南。佐久を思う気持ちは皆同じだ。だが、俺たちが一番に考えなくてはいけないのは何だ?俺たちは赤の色神紅を守る術士だ。なのに、今のお前は何だ?好き勝手に行動することが、赤を託されたお前のすることか?その反抗的な態度、お前が紅城へ来た時と同じだな。忘れるな。都南。お前は赤を託されている。その意味を忘れるな。影の国の術士との戦いの時、お前はどこにいた?義藤が、赤影が戦っている中、お前はどこにいた?忘れるな、お前は朱将だ。だれよりも先に戦わなくてはいけない。忘れるなよ」


柴の言葉は刃のように鋭い。大きさを持つ柴が威圧的に思えた。その言葉は悠真に向けられたものではないのに、悠真は委縮してしまった。もし、その言葉が自らに向けられたとしたのなら、悠真はどうなってしまうのだろうか。その鋭い言葉を向けられた都南はどのように思っているのだろうか。


「分かっている。俺はもう、一人前だ。柴の教え子ではない」


都南の返答の直後、柴は都南胸ぐらを掴んだ。そのまま、柴は勢いに任せて都南を厩の壁に押し付けた。長身の都南がつま先立ちになっていた。柴の大きな赤色が、都南を飲み込もうとしていた。

「なめるな、都南。俺は決して優しくないぞ」

言って柴はその手を放した。柴の持つ一色がいつもの一色へ戻った。


「秋幸、舞風を貸してやる。義藤の絹姫は残しておいてくれ」


柴は秋幸に言うと、都南の肩に手を乗せた。


「都南。お前の力は必要なんだ。赤から離れるなど考えるな。俺たちは皆、古傷を抱えている。かく言う俺だってそうさ。でも、紅は、そのすべてを受け入れているいるんだ。お前も恐れるな」


げらげらと柴は笑った。


「気を付けていけよ、小僧たち」


悠真は柴の存在がとても大きく感じられた。


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