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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤の行動(5)

野江は秋幸の肩から赤い羽織を脱がせた。


「強くなってから、あなた自身の赤の羽織を着なさい」


そう伝えると、野江は赤い羽織を羽織った。優美に赤がはためいた。


「もう少し、自室でお待ちなさい。秋幸、悠真、あなたたちには役割があるわ。もっと、もっと強くおなりなさい」


野江はゆっくりと身をひるがえした。悠真は、自分と野江の間にある大きな差を改めて感じた。ああ、これが大人なのだな、と感じるのだ。一方で、秋幸が苛立っていることが悠真にも分かった。

「秋幸、行こう」

悠真は秋幸に声をかけた。


大人な野江たちから見れば、悠真だけでなく秋幸も子供なのだ。些細なことで悩み、立ち止まる。

「強くならなきゃいけないな」

秋幸が低い声で言った。秋幸の手は、握りしめられていた。



 

 悠真と秋幸は自室へと戻った。閑散とした部屋の中で、じっと座ることしかできない。客間の物のなさを感じると、悠真は同時に佐久の部屋を思い出した。狭く、甘味が隠された佐久の部屋。獣のような義藤や都南におびえるたびに、悠真は佐久に助けを求めていた。それは、紅城へ足を運んだばかりのころ。あのころのことが、はるか昔のことのように思える。佐久はどこに行ったのか。悠真は知らない。


「行くぞ」


低い声とともに、障子が開かれた。悠真がまぶしさに目を細めていると、大きな足音とともに、背の高い男が入ってきた。


「紅の指示だ。俺についてこい」


荒々しい声。

強い言葉。

まるで、獣のような存在。


「都南……」


悠真は思わず彼の名を呼んだ。黒の色神の襲撃の後、単独行動をとっていた都南が戻ってきたのだ。

「まったく、紅もとんでもないことを言いやがる」

都南は小さく不満を口にした後、悠真と秋幸の着物を掴むと力任せに立ち上がらせた。

「秋幸、俺がお前に紅の石の使い方を教えてやる。あと、悠真。お前が勝手な行動をしないように、しっかりと捕まえておくからな」

異を唱える隙などない。そもそも都南とはそいういう人なのだ。

獣のように強い存在なのだ。


――都南が紅の石の使い方


一つ、悠真の中に疑問が浮かんだ。それはきっと、秋幸も同じだ。都南は、術を使うことができない。白の石で命をつなぐ代償として、術を使うことができなくなった。それが都南だ。






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