表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
777/785

赤の行動(2)

 悠真はそれでも秋幸の近くにいたいと思った。それは悠真の直感だ。悠真は秋幸と離れてはいけない。そう、思うのだ。


 紅が柴と義藤に雪を降らせた中庭は水でぬかるんでいた。植木の根本にわずかに残る白い雪が、一時の遊戯を想起させる。悠真は秋幸と一緒にいた。彼は何も語らない。だから悠真は、秋幸の横にいた。

季節外れの雪は、すぐに溶けて消えていく。切望されて生まれてきても、時期が違えば消える定め。悠真は、溶けて消えそうな雪をみて、秋幸を思った。世で本望を果たすには、生きる時代も必要だ。先代が仲間に恵まれず、その優れた才能を活かせなかったように、物事を成し遂げるには、生きる時代が大切となる。悠真が強く美しい赤の色神紅の世で無色を持ち生まれたのは、偶然ではないのかもしれない。異国であれば、悠真の命はなかったかもしれない。無色が、この時代のこの国の悠真に己の色を与えたから、悠真はここにある。ならば、今、秋幸がここにあるのも必然だ。美しく強い赤の色神の元であれば、多くの術士は幸せに生きることができる。


――ここで生きるには意味がある。


悠真は紅を思った。彼女は必要とされている。この時代を動かすのに、彼女の力が必要なのだ。


「まだ、こんなところにいたのね」


穏やかな声が響き、悠真は思わず振り返った。降り注ぐ光の下で微笑むのは、火の国で最も優れた術士、野江であった。野江の赤い羽織が日を反射する。赤が美しく輝く。


「野江……」


悠真は彼女の名を呼ぶことしかできなかった。先の戦いで野江は傷ついた。そして、その強さを再び示したのだ。まぎれもなく、火の国の陽緋は野江なのだ。

「今まで、あたくしが術の使い方を教えていたけれど、これからは変わるわ。それで、あなたたちは強くなる。特に、秋幸、あなたはね。紅の言葉に間違いはないわ」


悠真が驚き、秋幸に目を向けると、彼の体がこわばるのを感じた。


悠真はこれから何が起こるのか、考えることもできなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ