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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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火の国の夏に降る雪は白く積もる(19)

 一つ、呟いたのは、義藤であった。義藤は水色の石を使っている。そのためか、舞い落ちる雪の中へと、積もる季節外れの雪の中へと足を下ろしていない。赤い羽織をただし、姿勢よく座ったまま、義藤の目は赤の色神紅へと向けられている。


「白の色神、黒の色神。紅は必ず守ります。紅が何かを隠しているのは事実でしょう。でも、俺たち赤の術士たちは、赤の仲間たちは、その秘密ごと紅を守ります。少なくとも、俺は……彼女のために術士となった俺は、何があっても彼女を守ります」


義藤の強いが優しい色が、いっそう煌めいた。その色を察したのか、紅と柴がわずかに義藤に目を向けた。間違いなく、義藤は紅城の核となる存在だ。


 優れた術士なのに、どこか危うい。


 それでも、ソルトは思った。雪の国を一刻も早く正そうと。それがソルトにできる唯一のことだ。そして、赤の色神が言っていたように、火の国が危機に陥った時は救援することだ。鎖国をしていても、救援の手は必要ははずだ。もちろん、火の国を喰おうなどという邪心はない。純粋なる恩返しだ。きっとそれは、黒の色神も同じはずだ。


 雪は降る。

 舞い落ちる。


 その雪は、少しも残酷でない。庭を赤の色神が走る。紅はまる幼い子供のように、とても無邪気に遊んでいた。雪を投げつけられた柴は、色神相手であろうと雪を投げ返す。離れたところで、野江が雪だるまを作っていた。暑い時期が近付いているのに、吐く息は白く、彼らの手は冷えて赤くなっている。

 萩ら影の国の術士も同じだ。まるで子供のように、何とも楽しそうに。


 雪は残酷なだけでない。

 人を楽しませる力を持つ。


 ソルトは思った。


――火の国へ来てよかった。


 ソルトは思った。


――火の国へ来て、本当に良かった。


 ソルトは心から思った。



 火の国の夏に降る雪 ――完――

時間がかかりましたが、これで、第4章「火の国の夏に降る雪」が完結します。

次話から、第5章に入ります。


以前より、のんびりペースになるかもしれませんが、これからもよろしくお願いいたします。

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