火の国の夏に降る雪は白く積もる(14)
赤の色神の真意を測りかねるのは、ソルトだけでないはずだ。現に、赤の仲間たちも、なぜ呼ばれたのか分からないようだ。しかし、ただ一人、義藤だけが違うようであった。皆が戸惑ったように、中庭を向いて座っていると、義藤が口を開いたのだ。
「紅は雪が好きなんです」
義藤の声には温もりが満ちている。
「火の国でも北の方は雪に満ちていますが、ここの辺りで雪が積もるのは一時のこと。火の国では、赤で満たされる秋が好まれていますが、紅はすべての季節を愛しています。桜の満ちる春も、太陽が輝く夏も、山々が赤で満たされる秋も、冷たく透き通った冬も、全てを愛しています。紅と一緒にいれば、自然と分かります。夏に雪が降るとすれば、それはなんとも贅沢なことでしょうね」
言って、義藤は水色の石の力を使った。同時に、青の石を使う。赤の一色を持つ義藤にとっては、負担なことだろう。
「ああ、なるほどな」
柴がげらげらと笑った。
「代わろう。青の石は俺が使う。水色の石の方がしんどいからな」
柴が義藤から青の石を受け取った。
「佐久がいれば、楽をできるんだがなぁ」
げらげらを笑って、柴が青の石を使い始めた。
辺りの空気が冷たくなっていく。それは、懐かしい空気だ。雪の国では当たり前の、冷たく澄んだ空気だ。
冷えた空気で息が白くなる。中庭に冷えた空気が満ちていく。強いが優しい赤色を持つ義藤。赤の一色を持ちながら、水色の石をここまで使いこなすことは、義藤の優れた才能を意味する。
「義藤、一緒に宵の国に来るか?」
黒の色神が言った。黒の色神が欲する才能を、義藤は有している。
「御冗談を。俺は、赤の術士です。俺は、紅のために戦います」
義藤の冷静な答えに、黒の色神は小さく笑った。
「冗談じゃなかったんだがな」
火の国には優れた術士が多い。しかし、術士は国にとって宝だ。容易く手放せるものではない。だからこそ、術士を道具のように扱う国もあるのだ。