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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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火の国の夏に降る雪は白く積もる(11)

 赤い色が満ちていく。ソルトは火の国にいるのだ。この赤に満ちた国にいるのだ。ソルトは赤の色神にひきつけられていた。赤の色神の力、赤の色神の言葉、赤の色神の姿、何もかもがソルトをひきつける。火の国には、このような言葉はないだろう。それでも例えるなら、赤の色神にはずば抜けたカリスマ性があった。誰もが彼女に魅了される。実際、赤の色神にはそれだけの力があった。


「アグノ、もちろんアグノには火の国で働いてもらう。火の国には優れた薬師がいる。影の国の術士を救ったその医療技術が、火の国には必要なんだ。雪の国にとって、医療技術は最も大切な国家機密。輸出品。国を支えるものだ。それを火の国に漏えいしてくれるか?」


いたずらめいた赤の色神の言葉。鎖国をしている火の国にまねできる雪の国の医療技術は少ない。


「ソルトが許すなら」


アグノがほほ笑んだ。ソルトに選択肢がないことは明らかだ。


「赤の色神、感謝します。私が白の色神であり、あなたが赤の色神であるかぎり、きっと雪の国と火の国は友好を築き上げることができるでしょう」


赤の色神は声をだして笑った。


「優れた力を持つとされる色は、五つある。赤、黒、白、黄、青の五つだ。その中の三つが友好を結ぶ。それが何を意味するのか、それは考えるに容易い。――火の国はこれから大きな変革を迎える。その中で、白と黒とつながりがあることは、間違いなく火の国の支えとなるだろう。黒の色神と白の色神の来訪は、火の国に大きな波乱を巻き起こした。それでも、私は二人に出会えたことを心から感謝している」


急に、赤の色神が儚い存在に思えた。ソルトは、赤の色神を図りかねていた。その強さも、美しさもまるで、すべて偽りのようで、本当の赤の色神がどこにあるのか分からなくなっていたのだ。真に強い人など存在しない。赤の色神の強さはきっと、まがい物だ。赤の色神は、ソルトと同じ一人の女なのだから。

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