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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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火の国の夏に降る雪は白く積もる(8)

 みじめな白の色神。それがソルトだ。それは白がみじめなのではない。ソルト自身が無能さを突き付けられたような気がしたのだ。同じ色神なのに、ソルトと赤の色神の間には大きな距離があるような気がしたのだ。


 笑い声が響いた。それは黒の色神のものだ。


「白の色神。色神とはいえ、我々はかつて人であった。完璧を求めることなどできない。ほかの色がすぐれて見えることもあるだろう。それでも、俺たちは己の色を信じなくてはならない。紅は赤を。俺は黒を。そして白の色神は白を。――黒は恐ろしい色とされる。そうだろ。黒は死の色だ。でも、俺は黒を損じ続ける。黒が俺の色だから」


赤の色神と黒の色神はソルトから見れば大人だ。その大人である二人と比べると、自分が何ともちっぽけで、なんとも無力な存在に思えるのだ。これからソルトは一人で生きていかなくてはならない。アグノの庇護を求めることは間違っている。アグノは十分にソルトを守った。医学院で、そして雪の国の白い城の中で。

 アグノの力なくして、ソルトは生きることができない。ソルトが生きるためには、一つの道しか残されていない。赤の色神の言葉。そして、ソルトの願い。


 ソルトは一つの思いを抱きつつ、自らの思考を止めた。これ以上、何を求めると言うのだ。十分に助けてもらった。赤の色神に、人の人生を奪う権利がないように、ソルトにも人の人生を奪うことはできないのだ。何ともおこがましい。


 ソルトは理解している。今、ソルトは死ぬことはできない。雪の国の改革のためには、この命を捨てることはできないのだ。


「紅」


低く口を開いたのは、冬彦だった。冬彦を見つめると、白い色が輝きを持つ。


「俺は紅の命を狙った。それはいかなる理由があろうとも許されることではない。そんな俺を、紅は助けてくれた。生まれてすぐに捨てられた俺を、紅は一人の人間にしてくれた。術士にしてくれた。その恩は、一生かけても返しきれるものじゃない」


冬彦の声は凛と響く。そんな冬彦を見つめる紅の目が、とても暖かかった。

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