表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
749/785

火の国の夏に降る雪は白く積もる(4)

 アグノの呼吸の音が響いていた。アグノの状況をソルトは理解することができない。しかし、アグノも実験体であったことは事実なのだ。実験体であったために、体に後遺症を負ったのはソルトだけでない。それは、アグノも同じなのだ。

 白の石で命をつないだことのある者は、多かれ少なから代償を支払う。アグノは心臓の機能を支払っていたのだ。


「アグノはいつも私を守ってくれていたわ」


ソルトはアグノを見つめた。実際のところ、アグノがいなければ、何もできないのが今の白の色神なのだ。


「白の色神。無粋なことかもしれないが、どうやって雪の国へかえるつもりなんだ?」


黒の色神は、とても穏やかな声色で言葉を口にした。その言葉は温かく、その声は響いていく。



「何とかして帰るわ。私は白の色神なの。白の色神となった以上、ただの人へは戻れない。この命が終わるその時まで、白の色神として生きるの。だってそうでしょ。白から見放されては、私は生きていけないのだから」


ソルトは口にしたが、その方法が分からずにいた。白はソルトに甘い。ソルトの命をすぐに奪ったりはしないだろう。しかし、いつまでもそうとはいかない。ソルトはソルトであり、生きなくてはならないのだ。


 具体的な方法がないのに、雪の国へ帰ると言い張るソルトは、何とも幼く、無知な存在に見えることだろう。一人で雪の国へ帰ることなどできない。


「雪の国まで送ることならば、出来る」


ふと、黒の色神は言った。

「宵の国で、変じは起こっていない。ならば、俺がもう少し回り道をしても問題ないだろう。白の色神が望むのならば、俺が雪の国まで送り届けることができる」


黒の色神は冗談を言っているわけでもにだろう。その言葉に甘えることが許されるのか、ソルトには分からない。今、黒の色神に助けを乞うことは、白の色神として許される行為なのか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ