表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
748/785

火の国の夏に降る雪は白く積もる(3)

 黒の色神が何を思っているのかソルトは分からない。それでも、ソルトは白の色神だから、雪の国の代表として返答してなくてはならない。黒の色神は柔らかな声色で言った。


「雪の国は極寒の土地だと聞く。宵の国にも北の方の地方がある。そこでは、雪が積もる冬を乗り越えなくてはならない。それでも、雪の国の冬に比べれば、さほどのことはないだろう。なにより、同じ大国でも南北に広がる宵の国では、凍える冬だけでない。雪の国はの冬はさぞかし辛いことだろう」


それは同情するようなことでもなく、ただ、共感する言葉だった。その共感が温かい。


 人と人は必ずしも理解しあうことは難しい。

 ソルトは、そのように思っていた。


 生まれた家が違う。育った環境が違う。感じることが違う。それらすべてが人と人を遠ざける。それは、色神も然り。同じ色神であっても、色が違えば、国が違えば、色神となる経緯が違えば、人であったころの思いが違えば、同じではないのだ。


 黒の色神はソルトのことを理解したわけではない。もちろん、ソルトも黒の色神のことを理解などしていない。黒の色神と白の色神。正反対の色は、歩み寄ることなどできない。


 黒の色神が雪の国に抱いた感想。それが事実。遠ざけるでもなく、否定するでもなく、叱咤激励するでもなく、色は違えど、同じ色神として黒の色神は共感してくれた。国を背負う重圧。色を背負う重圧。それらの重圧を黒の色神は共感してくれた。同じ重荷を背負う中として、共感してくれた。


 色神は人でない。

 しかし、色神は孤独ではない。

 色から一色を認められ、色を表現する力を得た。

 色神は孤独などではない。


 ソルトは黒の色神を見つめた。ソルトの目では、黒の色神の姿はぼやけて見える。それでも、ソルトの目には彼の一色がはっきりと見える。その黒は白と相成れないが、理解しあうことはできるのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ