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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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火の国の夏に降る雪は白く積もる(1)

 ソルトは部屋にいた。そこには、アグノが横になっている。義藤がアグノを気遣ってくれる。だから、安心なのだ。義藤が赤の色神にどれだけ信頼されているか。それを想像することは容易い。義藤の動作一つ一つから赤の色神に対する思いが伝わり、赤の色神の言動から義藤への信頼の大きさが伝わる。


「ソルト、ソルトはこれから……」


冬彦が言葉を言いかけて飲み込んだ。冬彦が何を言いたいのか分かる。ソルトは白の色神だが、他の色神とは違う。医学院での実験は、ソルトから多くの物を奪ったのだ。アグノの保護が無ければ、ソルトはは雪の国で生きていけない。雪の国ではソルトは神だが、城に渦巻く陰謀から、ソルトは自らの身を守ることができない。そもそも、雪の国に帰れるかどうかも分からないのだ。


「何とかしなくちゃいけないの。私は白の色神だから、いつまでもアグノに甘えてなんていられないの」


ソルトは自分に言い聞かせた。アグノは十分ソルトを守ってくれた。医学院で、雪の国で、火の国で。アグノがいなければ、ソルトはとっくに死んでいただろう。アグノがこのような状態に陥ったのは、医学院の実験の影響もあるが、ソルトを守るために戦い続けたことにも影響を受けている。

 アグノはもう戦えない。ソルトを守ることはできないだろう。そ


「私は雪の国に帰らなきゃいけない」


ソルトは言った。それは、自分に言い聞かせた言葉だ。雪の国は白の国。ソルトが守るべき国だ。ソルトは雪の国に帰るために、影の国の暗殺から逃れようとした。そのためにアグノや冬彦、赤の色神は戦った。火の国に多大な迷惑をかけてでも生き残った、この命。ソルトが雪の国に帰らなくては何の意味もない。

 しかし、一方でソルトは分かっていた。雪の国に帰る。ただ、それだけのことがとてつもなく困難であることを。アグノという絶対的な保護者を失ったソルトは、自らの力だけで雪の国に帰らなくてはならない。日常生活を送るだけで困難なソルトにとって、それは不可能とも思えることだ。


 それでもソルトは帰らなくてはならない。

 雪の国へ。

 帰らなくてはならない。

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