緋色の兄妹(7)
野江は紅を守る。心から、守りたいと思える存在なのだ。もしかしたら、それは兄が野江に対して抱いていた感情と似ているのかもしれない。
「それで、紅。あなたの身に何があったのか、教えるつもりはやはりなくて?」
紅は苦笑した。
「しつこいな」
紅の男勝りな言動も、彼女の愛らしさだ。
「これは、赤の問題だ。私の問題でもない。赤が胸を痛めている」
赤とは紅を色神にした存在。赤が問題ならば、野江には何もできない。
「それは、秋幸と関係あって?紅。あなたは、秋幸と悠真をどうするつもりなのかしら?」
特別な存在。ただの術士ではない。それが、秋幸と悠真だ。一色を見て、色の力を収束させる。そのような奇怪な存在が、赤に問題を与えて、その影響が紅に及ぼされていると考えるのが自然だ。
「安心しろ。考えている。――赤丸が秋幸の一色を評価した。秋幸は他色を使うことに長けているだろ。だが、秋幸の一色は赤だ。平凡で奥深い赤色。秋幸は、紅の石を使うのが苦手なんだ。だから、秋幸に紅の石の裏の使い方を教える。――野江らが自然と使える使い方だ。赤のもう一つの力。秋幸はそれが使えない。優れた術士ならば、自然と使えるというのに」
野江は息を飲んだ。紅の石は特別な石だ。その力は他の色の石と異なる。紅の石の力の最大の特徴は、その力の応用性だ。だが、劣った術士は、紅の石を熱源としてしか利用できない。だが、野江は違う。
――しかし……
それは教えられるものではない。感覚で行っているのだから。下手な教え方をすると、変な感覚が体に残り、永遠に応用的な使い方ができなくなるかもしれないのだ。
「紅、それは教えられるものでなくてよ」
野江は紅を止めた。