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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の兄妹(5)

 野江は紅を見つめた。この絶対的な強さ。野江たちがいなくても、紅は自らの力で戦い、いかなる強敵さえも打ち砕くだろう。今の紅は、先代とは違う。決して、倒れたりしない。若い紅は、これから何十年と火の国を守り続けるのだ。支え続けるのだ。


「馬鹿なことをおっしゃらないで。あなたは赤の色神よ。あたくしは赤の術士。今、あんたを目の前にして、どうして次を考えることが出来るのかしら。その命を守るのが、あたくしの役目なのですから」


そう言いつつも、野江は倒れた紅の姿を忘れることができなかった。野江の支えた失われる。それだけは、避けたいことだった。


「野江、時代は動いている。今のことだけ考えていてはだめなんだ」


野江はその姿さえも、兄に重なって見えた。


「きっと、野江は私の次の紅も支えてくれる。私は、信じているんだ」


紅が野江に歩み寄り、野江の横に座った。

「野江、野江は私じゃない。色神じゃない。家族を捨てる必要はないんだ。私は仲間たちの過去を知らない。野江が鳳上院家の生まれであったことさえ、知らなかった。もちろん、柴が影の国の術士であることも知らなかったし、都南や佐久が何を抱えているのかも知らない。もしかすると、私は義藤のことさえ知らないかもしれないんだ。だから、野江。少しでもいい。話せるところからでいい。教えてくれないか?野江の兄のことを」


野江よりも九つも若い二十歳の赤の色神。その色神に依存しているのだから、何ともおかしなことだ。


「紅、鳳上院家にはご注意なさい。その家の財力は、火の国の中枢へ迫るものよ。その財があれば、庵原太作へ、紅の暗殺を依頼することさえ出来るのですから」


紅は大きく足を投げ出した。

「鳳上院家は確かに危険な家だろうな。しかし、鳳上院家の事業が、多くの民の生活を支えているのも事実。赤の色神として、一般家である鳳上院家と争うことは正しくない」

紅の目は遠くに向けられている。紅は鳳上院家さえも巻き込むつもりなのかもしれない。経済の中枢にある鳳上院家と色神、官府が歩み寄れば、火の国は盤石な国の運営を行うことができるだろう。


これが赤の色神なのだ。


何とも強い。


野江は紅を見つめて、自然と笑みがこぼれた。

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