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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の兄妹(4)

 紅を見ていると、野江は兄を思い出す。その強い眼差しを、その美しい横顔を、気品を。野江は紅に兄を重ねていたのだ。


 そして、野江はそこまで話すと、己の思慮の浅さを恥じた。紅は色神となる前は、普通の人間だった。親がいて、兄弟もいたかもしれない。紅の素性を野江は知らない。色神となって、俗世を縁を切った紅は、野江の告白をどのような思いで聞くのだろうか。


「紅、ごめんなさい」


野江は思わず言った。紅が色神となることで失ったものは計り知れない。


「なぜ、謝る必要がある?」


紅は微笑んだ。


「野江、私は色神となり人でなくなった。私が消えたと悲しむ者もいるだろうが、私は後悔をしていない。私は色神となり、野江と出会えた。心底、姉のように慕える野江と出会えた。義藤らは男だからな。私にとって、野江は特別な存在なんだ」


紅は自らのことを話さない。この優れた力を持った赤の色神が、どのような親から生まれて、どのような家で育ったのか知るのは義藤だけだ。紅には本来の名があった。それは、当然なことなのに、野江は紅の真の名を知らないのだ。


「私は野江らと出会うために色神となった」


紅は微笑んだ。何かを隠している紅は、少しの弱さも見せない。野江は紅の強さが怖くなった。紅は強い。しかし、真に強い人など存在するのだろうか。紅の強さがまるで見せ掛けのように思えるのだ。


――危うい。


野江は紅が危うい存在の思えた。


「紅、あなたは何を隠しているのかしら?一体、紅の身に何が起こっているの?あたくしは赤の術士よ。陽緋よ。そして、紅の仲間なのよ。紅を襲う敵から、紅を守って見せるわ」


強い紅は何も話さない。小さく笑って、野江に言った。


「野江、野江は先代の術士だ。そして今は私の仲間になってくれている。――私が死んだ後はどうなる?」


その言葉が、その表現が、野江の胸を締め付けた。

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