柴と萩の信じる赤(6)
松が目を覚ました。そして、しばらくすると、衝立の向こうで杉とベルナが目を覚ましたようで、衝立はどけられた。
「千夏、ありがとう。後は問題ない。春市の仕事の方へと言ってくれ。俺たちみんなが仕事をさぼっているからな。申し訳ない」
柴が言い、千夏は頭を下げて退室した。柴、萩、杉、松、ベルナ、そして悠真が向かい合って座っていた。
「萩、千夏もあの養成所の出身だ。もう一人、春市もいる。赤の色神は、俺たちを救ってくれた」
柴の言葉に萩が頷いた。
「礼を言い足りない。――それで、柴。シュドリードはどうした?」
シュドリードは彼らに指示を出していた男だ。
「シュドリードは、赤影が管理している。あいつらに任せておけ。下手に逃がしたりしないさ」
そして、口を開いたのは松だった。
「俺は目覚めたとき、白の色神を襲撃しました。あの時、白の色神をかばった人は?」
長身の松は、洗練された雰囲気を持っていた。義藤と戦っていた時のことを思い出すと、悠真は身が縮まった。彼は強い。未熟者の悠真にとって、薬の力を借りたとはいえ義藤と渡り合った松は、怖いくらい強いのだ。
「何とか、問題ない。といったところだな」
柴は苦笑した。
影の国の術士の彼らも、普通の人だ。人であることに変わりない。道具などではない。柴は言った。
「なあ。萩。萩だけじゃない。松、ベルナ、杉。お前たちは、赤を信じてくれるか?赤を信じて、赤の色神紅を信じてくれるか?紅がどんな決断を下すか分からない。お前たちは、異国に行きたいかもしれない。でも、俺は火の国に残ってほしい。火の国で、その力を紅のために使ってほしい。その一色を見ているから。俺は、お前たちの一色を信じたい。――もし、赤を信じてくれるなら、俺は紅に掛け合う」
萩は答えた。
「俺は火の国に残る」
「杉は、萩と残る」
杉が答えた。
「俺も、この火の国に残りたい。でも、ベルナが出ていくというのなら……」
松がベルナを気にかけたが、ベルナは言った。
「**********」
聞き取れないのは、悠真が紫の石を使えないからだ。
「言葉は時間をかければ覚えられる。柴、俺たちは皆で残ることを望もう」
萩が柴に言った。
赤を信じ続けた萩らしい言葉だった。