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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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柴と萩の信じる赤(5)

 赤の仲間は若い人が多い。まだまだ子猿と呼ばれる悠真でも、そう思う。何せ、赤の色神紅が二十歳という若さなのだ。義藤、野江、佐久、都南も二十代だ。新しく加わった、春市、千夏も二十代。赤影もさほど年齢は上ではない。赤丸も赤菊も若い。

 柴という人は、その中で少し上の存在だった。先代からの信頼も厚く、紅城で生きてきた貫禄がある。まだ、三十半ばだろうが、その貫禄は計り知れない。そんな柴と同世代の萩がいる。柴と萩がいると空気が安定して、落ち着く。ゆったりと流れるような気がする。彼らが持つ力だ。


「それで、萩。もう、影の国は抜けてくれるんだろ」


柴が問い、萩は笑った。

「もう、充分だ。影の国はもう十分だ。俺はもう、人から支配されたくない。己の道は己で決めて、信じる者のために戦いたい」

「そう言ってくれて、安心したよ」

柴がげらげらと笑った。


「それで、柴。赤の色神は俺たち影の国の術士をどうするつもりだ?この命は罪にまみれている。先代に直接手を下したのは、我々ではないが、我々も同じような罪にまみれている。そんな俺たちの命を、赤の色神はどのように扱う?」

萩の言うことは最もなことだ。でも悠真は紅が影の国の術士を切り捨てたりしないと信じていた。紅は萩たちを火の国の民と言った。紅は火の国の民の命に責任を追っている。投げ出したりしない。


「それは紅の決めること。大丈夫。俺たちの後輩は、火の国で生きている。杉が気にかけていた千夏は、すぐそこにいる」

萩が畳みに座り、慣れた手つきで矢守結びを結ぶ。


「柴、覚えているか?俺たちは、あの囚われた日々の中で、地獄の日々の中で赤を思った。まだ見ぬ赤の色神を思い、己が火の国の民であることに誇りを持っていた。火の国の民であるから、勝手に赤の色神に忠誠を誓い、こうやって矢守結びを結び続けた」

萩の声が震えていた。水滴が落ちる音がする。水滴が畳に落ちる。萩が泣いているのだ。震える声で萩は言った。

「柴、俺たちは赤を信じ続けた。赤の色神を信じ続けた。俺たちが信じる赤は、俺たちが信じた赤は、光輝いているんだな」

柴が答えた。

「そうだな、萩。俺たちは赤をを信じ続けた。俺なんかより、萩の方が赤を信じ続けた。その赤が、俺たちを救ってくれたんだ」

柴と萩がどれだけ赤を思っているのか、悠真は知った。

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