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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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柴と萩の信じる赤(4)

 萩が身を起こすと、柴が着物を手渡した。萩は柔らかく微笑むと、その着物をまとい、眠る松の額に手を乗せた。


「紫の石は?」

萩が問い、柴が答えた。

「雪の国のアグノが取り出した。もう、問題ない」

萩が何とも言えない表情を見せた。

「やっと、やっと解放されたのか……。俺も、杉も、松も、ベルナも」

柴が頷いた。


「今まで、元気だったか?」

柴が萩に尋ね、萩は答えた。

「元気だったさ。でも、まるで夢の中にいるような気分だった。自分の体が自分の指示に従わない。どうしても命令に逆らえない。そんな気分だ」

柴が萩に頭を下げた。

「すまない、あの時、俺だけ逃げ出した……」

すると、萩は首を横に振った。


「いや、逃げ出す機会はあったんだ。逃げ出せなかったんだ。見捨てて行けなかったんだ。俺は柴を逃がしたかった。そして見捨てることができなかった。班の仲間を。松と、杉を。これは俺が選んだ道なんだ。俺を慕ってくれる彼らを見捨てれない。影の国のそう思っているうちに、俺は手術を施され、逆らえなくなった。後悔したさ。でも、これも俺が選んだ道」


柴がげらげらと笑った。

「萩らしい。俺を逃がして、自らは残るか……」

「柴の力は、俺の力とは違う。その貴重な目は、加工の技術は、影の国に渡してはならない。俺は、そう判断した。柴の目は、俺よりも格段に危険なんだ。だから、俺は柴を逃がすことに決めた。影の国に連れされれる前に、俺は柴を逃がすことを決めたんだ。俺のこと、嫌いになったか?柴」

柔らかな萩の声。柔らかな赤色。この優しい赤が、萩という人を示している。


「何とも、萩らしいな。お前の判断の是非は俺には分からないさ。萩がいたから、松や杉は救われたのだ折る。だが、萩が影の国の術士として殺した命も多い。命に重さはない。数で測れるものでもない。だから、後は信念が決める。見ず知らずの人を切り捨ててでも、大切な人を守ることを決めた。それが萩の信念なんだろ。だから、萩は守って見せた。仲間を。その決断が、正しいかどうかは、守った仲間に聞け」


柴の包み込む大きさがあった。

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