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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
732/785

柴と萩が信じる赤 (1)

 悠真は横たわる萩らを見た。氷の敷かれた部屋では、裸足の足が冷える。そこに横たわる彼らを動かさなくてはならない。そう思いつつ、悠真は動けなかった。

 横たわる杉とベルナを見て、動けなかったのだ。布で隠されている彼女たち。その布を下を思うと、悠真は顔に熱がこもるような気がしたのだ。


「若いな」


言って柴は悠真の頭を撫でた。


 柴は膝をつきながら立ち上がると、布で包んだままベルナを抱き上げた。

「松を連れれて来い。多少、引きずっても大丈夫だろ」

柴に言われて、悠真は松の脇の下に手を入れた。引きずって良いとは言われても、それはなかなかの重さだった。何とか松を隣の部屋へと引きずると、そこには衝立が用意されており、柴が片側にベルナを横たえていた。衝立を運んだのも柴のようだった。

「松はそっちだ」

柴に言われて、悠真は松の体を引きずった。直後、千夏が駆け込んできた。


「千夏」


悠真が千夏に目を向けると、彼女は微笑んだ。


「女手が必要と思ってね」


千夏は着物を持っていた。

「助かる、千夏」

柴がげらげらと笑い、悠真が引きずる松を抱きかかえた。


 萩は柴が抱えて、杉は千夏が抱えた。悠真は部屋の隅に座って、松の様子を見ていた。


 部屋の中は暑い。先程の氷が嘘のようであった。外では虫の鳴き声が聞こえ、悠真はじっと目を閉じた。柴が萩を横たえると、悠真の横に座った。そして、衝立の向こうへと問いかけた。

「どうだった?」

柴が何を問うているのか、悠真には分かった。千夏はあの部屋にいたのだ。氷が敷き詰められた、極寒の部屋の中にいたのだ。


「雪の国の医療は、火の国とは桁が違います。いえ、種類が違うとも言えると思います」


千夏は、何とも端的に答えた。

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