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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と医療(4)

 おそらく、その疑問は誰しもが同じだ。黒の色神は低い声を出し、白の色神は小さな声でアグノの名を呟いていた。空を白い雲が流れていく。背中に感じる冷たさは、部屋の中で使われている水色の石のためだ。障子越しでも、背中に触れる空気は冬の朝のように冷たい。部屋の中はかなり寒いはずだ。

 柴は外廊下に横たわっていた。荒かった呼吸は落ち着いているが、身体を起こそうとしない。悠真は石を使った後の虚脱感を思い出した。色の石を使うことは、体に負担をかける。術士の体は常に、負担の中にいる。しかし、彼らが強い術の力を引き出すことが可能なのは、一色が色を使うことに長けているからだ。赤に適しているからだ。柴の一色は、水色に適していない。


「冬彦!来い!白の石だ!」


しばらくして、義藤の声が部屋の中から響いた。冬彦が慌てて立ち上がり、障子を開け放った。悠真は興味から部屋の中を覗き込んだ。そこは、真冬のように寒く、水色の氷が床一面に広がっていた。溶けた氷の水が畳を侵食していく。溶けては次の氷を義藤が水色の石を使って生み出し、そして溶けないようにもしているのだろう。気温の低さが物語っていた。


 一面の氷の中、四人の影の国の術士が布をかけられた状態で横たわっていた。奥から萩、杉、ベルナ、そして松と並ぶ。アグノは背中に刃を突き立てたまま萩の横にいた。葉乃は氷の床を気にすることなく這うようにして動き、他の三人の腕につながれた針に何かの薬を入れていた。

「冬彦、萩の心臓が止まった。アグノが紫の石を取り出す。すぐに白の石を使え」

義藤が荒い声で言った。彼に余裕がないことが分かる。水色の石を使用することに負担が、義藤に迫っているのだ。

 冬彦は部屋へと飛び込んでいった。悠真は好奇心から、その中を覗いた。千夏が萩の体を側臥位にする。そして、アグノが萩の胸横に小刀を突き立てた。


――流れる赤い血。


血が氷の上に流れる。


 悠真がそこまで見たところで、紅によって障子が閉じられた。


「冷気が逃げる」


紅の低い声だった。

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