赤と医療(1)
悠真は義藤に連れられて、絹姫に乗った。悠真は頭の中が真っ白で、何が起こったのか状況を理解することに苦しんでいた。
「柴、先に帰ってください。俺は、悠真と浮雲を連れて帰ります。二人乗りの俺たちより、舞風の方が速い。先を急いでください」
義藤は浮雲の手綱を掴んだ。一人で馬に乗れない悠真のために、絹姫は二人乗りを余儀なくされ、浮雲は手綱を引かれて走る。そんな、どうでもいいことを考えなければ、悠真の頭は入り乱れた思考でかき回され、おかしくなってしまいそうだったのだ。
柴は何も言い残さず、舞風の腹を蹴り、馬を走らせた。悠真は義藤の腰に手を回し、柴から遅れて出立した。義藤の背中は、柴のそれとも、秋幸のそれとも異なる。義藤の強いが優しい赤色が、そこに溢れていた。
「悠真、何も気にするな」
絹姫を走らせながら、義藤は言った。声の振動までもが伝わるような気がした。
「何も気にするなって……」
義藤は一色を見る目を持っているわけではないのに、全てを見透かされているような気がしたのだ。
「俺は只の術士だ。色の世界のことなど、分かりはしない。それでも、俺は紅を信じているし、秋幸を信じている。だから、俺は狼狽しない。」
義藤は悠真の欲しい言葉をくれる。
紅城に帰ると、義藤は浮雲と絹姫を門番へ渡すと、すぐに駆け出した。
悠真は慌てて義藤の後を追った。義藤の赤い羽織を追いかけながら走ると、やたらと寒い部屋の前で紅らが座っていた。紅、黒の色神、白の色神、そして冬彦。そうそうたる顔ぶれと言ったところだろう。既にことは動き始めているのだ。
「義藤、お前は水色の石は使えるか?」
低い声で紅が言った。
「相性はあまり良くないが……」
すると、紅は笑った。
「秋幸は疲れて動けない。休ませている。佐久はいない。野江の次は柴が行った。次は義藤、お前が行け。それでも不足ならば、冬彦を行かせる」
悠真は意味が分からなかった。