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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白と影の国の戦い(10)

 このまま死ぬのかな。なんてことをソルトは思っていたのに、温かく、大きく、懐かしいものに包まれていたのだ。


 鈍い音が響く。


 襲撃が止まったのがなぜなのか、ソルトには分からない。恐る恐る見上げると、ソルトはアグノに抱きしめられていた。

「優しいソルト。あなたは死んではいけません。あなたのことを待っている人が、雪の国にたくさんいます。あなたはこれから、雪の国の改革を行わなくてはいけないのですから」


アグノはゆっくりとソルトを引き離した。離れたソルトが見たのは、背中に長い刃物が刺さったアグノと、義藤と野江、そして黒の色神の異形の者によって押さえられた二人だった。

 興奮する二人を萩が落ち着かせようとしている。


「アグノ……」


ソルトは白の石を取り出した。アグノを救わなくてはならない。アグノはソルトの理解者なのだ。保護者なのだ。ソルトを救ってくれるのは、いつもアグノなのだ。


「待ってて、アグノ」

ソルトが白の石を使おうとしたとき、アグノがソルトの手を掴んだ。

「ソルト、私に使うのは最後でなくてはなりません。彼らの処置が先です」

黒の色神が口を開いた。

「白の石を使わなければ、火の国の医療技術では助かる保障はないぞ。今は刺さった刃が主要血管をふさいでいるが、抜けば死ぬ。そうやって動いているだけで奇跡だ。そうやって死ぬ戦場の兵士は多い」

しかしアグノは言い返した。

「ですから、彼らが先なんです。時間がないんです。この体が動くうちに……」

黒の色神が小さく舌打ちをした。

「強情な……」

そして、黒の色神は羽織っていた着物を脱ぐと、それを刃物で切り裂いた。

「とりあえず、刀を固定する。応急処置でしかないぞ。お前なら、分かるだろ、白の石が必要だ」

すると、アグノは答えた。

「いいんです。使えない事情があるんです」

アグノの声は苦痛からか、少し震えていた。



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