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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白と影の国の戦い(7)

 藁に縋る思い、というものは、このようなことを指すのかもしれない。ソルトでさえ願ってしまうのだ。医学院で多くの死を目の当たりにしてきて、「死」というものが常に身近にあったソルトであっても、彼らの死は受け入れ難いのだ。


「どうするつもりだ?」


萩が強い口調で、アグノに言った。雪の国は命を弄ぶ。その残酷さは、ソルトも身を持ってい知っている。アグノは今、どちらの立場なのだろうか。医学院で医学博士の立場なのだろうか。それとも、ソルトの知る命を大切にするアグノなのだろうか。


「ソルト、白の石をいくつかいただけますか?」


ソルトは持っているだけの白の石を取り出した。


「死ぬつもりならば、覚悟はできているでしょう。萩、あなた方は心臓の脈圧を紫の石を通じて影の国へ伝えられている。術士ならば可能です。体の中で、紫の石を常に使用している状態となっているのです。それを取り除くだけでは不十分です。人工的に外されるのは、心臓の脈の動きで分かります。人が死ぬときと同じ動きを再現するのは、限りなく不可能です。ですから、一度、死んでいただきます」


ソルトはアグノが何を言っているのか分からなかった。


「一度死ぬ?」


萩が問い返した。


「火の国には、優れた薬師がいます。眠りの中で苦痛を緩和することもできるでしょう。雪の国では、麻酔と呼びます。手術を施すときには、必ず使用します。麻酔下にて肋間部を切開します。おそらく、紫の石は心臓の近く、それでも埋め込みやすい場所にあるはずです。その後、体温を下げていきます。低体温状態になると、人の心臓は停止します。その後、紫の石を取り出し、すぐに白の石で蘇生します。通常ならば、体温を上げる間に脳障害が生じる危険性がありますが、白の石を使用すれば、使用した時点で回復します。冬彦がいます。石の使用は可能でしょう。ここにはソルトがいます。そして、医学院で知識を得た自分がいます。危険を承知で信じていただけませんか?」


まるで、人の命を弄ぶような行為だ。

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