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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白と影の国の戦い(6)

 シュドリードが答えた。朦朧としているのだろう。それでも、彼の言葉に偽りはない。


「柴の脱走後、一度廃止された養成所だが、再び火の国の内部に作られた。火の国は優れた術士の宝庫だから。――だが、それも赤の術士の襲撃により破壊され、我々は秘密を保護するために撤退を余儀なくされた」


赤の色神は笑った。

「先代は、影の国と戦い続けていた。柴を救い、密に影の国の情報を探り、先の赤丸に養成所の襲撃を命じた。養成所にいた術士の春市と千夏は、赤丸の手により守られることとなった。先代が戦い続けていたんだ。私も逃げることはできない。私はこれまでも、そしてこれからも先代の背中を追い続ける。先代が残した偉業が大きいからこそ、私は走り続けることができる。強くあることができるんだ」


赤の色神の強い声は響く。しかし、彼女は苦笑した。


「――とはいえ、今の私には萩らを救う力がないのは事実だ。情けないことにな。だが、アグノを見てみろ。ああそうか。分からないな。アグノの一色はまだ、諦めていないぞ。柴、お前なら分かるだろ」


言われてソルトはアグノを見た。アグノの一色は諦めていない。


「アグノ、必要な力があれば、赤の術士たちが援助する。萩らを死なせたりしない。先代が柴と春市と千夏を救った。だから、私は萩らを救う。簡単なこと。私は、負けず嫌いなんだ」


赤の色神の底知れぬ力。その力のありどころがソルトには分からない。ソルトは赤の色神に負けている。赤の色神の鮮烈な赤い色に、白の色神であるソルトまでもが惹きこまれる。魅了される。色に優劣などありはしない。白も赤も黒も、何とも強く優美な色であるのだ。


「方法ならば、あります」


アグノが低い声で言った。

「あなた方が、我々を信じて、命を預けてくれるのならば、影の国から逃れる術があります。あなた方をとらえているのは、雪の国の技術です。ならば、雪の国の技術があれば解放することができるのです」

アグノの声色は、医学博士だったころの声色だ。温かく、そして強い声だ。

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