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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白と影の国の戦い(4)

 もし、ソルトならばどうするだろうか。赤の色神ならば、どうするだろうか。優しく強い、仲間を思う赤の色神ならばどうするだろうか。救う道のない命をどうするのだろうか。


――影の国を敵に回すことはできない。


分かっていても、諦めがつかないのは、それが雪の国の罪であり、萩が何とも言えない一色を持っているからだ。

「柴、悪いな」

萩は言うと、倒れる二人の影の国の術士に歩み寄った。そして、彼らの横に膝をつくと、二人の肩に手を当てた。

「薬を飲んだんだな、松、ベルナ。守れなくて、悪かった。でも、お前たちだけで死なせない。俺もすぐに後を追う」

そして萩は顔を上げた。

「杉、おいで」

萩の柔らかな赤色がこぼれる。それに招かれるように、杉が萩に駆け寄った。

「救えなくてすまない、杉」

萩が杉の頭を撫でた。慈しみの気持ちが溢れた行動だった。


「赤の色神。あなたには迷惑をかけない」

言って萩は手ぬぐいを取り出し、それを結び始めた。まるで、何かを意味するかのような結び。ソルトはその意味を知らないが、物を結ぶという、ただそれだけの行為がとても神々しく、気高い行為のように思えた。


「俺は、影の国に利用された存在だが、火の国の民でありたい。俺たちの班はシュドリードの指示の下、白の色神の襲撃を行った。しかし、白の色神が赤の色神に保護を求め、赤の色神の指示の下、赤の術士が白の色神の保護行い、俺たち影の国の術士と戦った。松とベルナは薬を過剰投与で死亡。杉は赤の術士と戦い死亡。最後に俺が残る。ここで本国へ連絡を入れる。襲撃の前に本国へは連絡を入れている。松、ベルナと時間をおいて死に、そして杉、最後に俺と続く。これで、影の国の本国に知られる心配は生じない。シュドリードの奴は好きにすればいい。影の国の情報を聞き出すぐらいの働きはするだろう。ただし、市街に放つな。奴は二年前の襲撃のとき、たった一人で生き延びた。決して本国へ返すな。柴、分かるだろ。こいつは生かしちゃいけない。影の国の使い捨ての兵士や術士のためにも」


柔らかな赤がそこにある。萩という人柄、そして実力が証明されている。死ぬには惜しい存在。それは確かだ。結ばれた手ぬぐいを地に置き、萩が深く頭を下げる。


「赤の色神、本当に迷惑をかけました。あとの処理は任せてください」


その行為がとても美しく感じられた。


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