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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白と影の国の戦い(3)

 雪の国は残酷な国だ。

 影の国は残酷な国だ。


 二つの残酷な国が、萩らを作り出した。人体兵器を作り出した。


 人には踏みにじられてはならない最低限の権利がある。それを踏みにじるような技術を作り出した雪の国。そしてそれを利用した影の国。どちらも醜い国だ。

 もしかすると、雪の国と影の国は懇意にしていたのかもしれない。当然だ。雪の国にとって、影の国は上客で、影の国にとって雪の国は必要な技術を提供してくれる国だ。どちらもどちら。同じようなもの。


「殺してくれないか?」


思考を巡らせていたソルトは、その言葉を聞いて息をのんだ。


「柴、俺たちを殺してくれないか?何とか、仲間は救って欲しかったが、俺だけじゃない。仲間にも手術が施されていたのなら、俺たちに逃げ伸びる道はない。死ぬまで、影の国の兵器だ。俺たちは、白の色神を暗殺しない限り、影の国に帰ることはできない。そして、ここで生きていることが見つかれば、火の国に迷惑をかける。影の国は脱走を許さない。柴お前なら分かるだろ」


萩の柔らかな一色が煌めいた。まるで、一瞬の自由を逃さないようにするように。まるで、一瞬の自由を楽しんでいるかのように。


「冬彦、萩を出してやってくれないか?もう、影の国の道具ではないだろ」


赤の色神が口を開き、土に囚われていた萩は解放された。土がバラバラと崩れ落ちる。

「萩、二十数年ぶりに会って、それはないだろ」

柴は苦笑し、萩も微笑んだ。そこは、ゆったりとした時間の流れる空間。萩と柴の空間。

「変わらないな、萩」

柴が萩の肩をたたいた。

「元気にしていたか?柴」

萩も柴の肩をたたいた。

「それはこちらの台詞さ」

げらげらと柴は大きく笑った。その笑いが悲しく聞こえるのは、萩を救う道が残されていないからかもしれない。

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